ホームページをビジネス上の広告塔として位置付けている場合、ある程度のデザインも大切ですが、コンテンツの内容や使い勝手はさらに重要です。
事実、最近のGoogle検索エンジンの仕様では、コンテンツの内容がユーザーにどれだけ役に立っているかをさまざまな指標で評価し、検索順位を決めています。

また、WixやAmeba Owndなど、簡単にカッコいいホームページを無料から作成できるサービスが登場しているので、コンテンツの中身さえしっかりと作り込めば誰でも発信できる時代になっています。

その中で、Webデザイナーという仕事は絶妙な立ち位置にさらされています。

これまでは、「デザイナー」といえば、見た目を綺麗にしたり、広告のクリエイティブを1pxの誤差なく作成するといういわば*「絵を描く」作業*を行う職業と思われてきたところがあります。

しかし、デザイン思考やサービス設計などの新しいプロセスを通して、企画の段階からデザイナーが関わることも増え、単純なデザインを作成することよりもそのデザインがどのようにビジネスチャンスを産むのかを期待されるケースのほうが増えてきました。

その意味では、従来型のWebデザイナーは新しい考え方にアップデートしないと、この新しい世界では生き残ってはいけません。

今回は、WebデザイナーがUXデザイナーとして活躍するための5つの考え方をご紹介します。
一時期は強烈な買い手市場でもてはやされたWebデザイナーという職種は細分化され、UXデザイナーがデザインチームを牽引するようになっています。
考え方のパラダイムシフトを起こすために、ぜひ参考にしてみてください。

Webデザイナーの市場ニーズ

creative.jpeg

インターネット関係のデザイナー求人を職種別に分けると、大まかにはWebデザイナーグラフィックデザイナー(ビジュアルデザイナー)UIデザイナーUXデザイナーに分けられます。

アメリカの就職者向けサイトGlassdoorによると、アメリカのデザイナー職全体の平均給与は55,000ドルですが、Webデザイナーの平均は47,000ドルの一方、UXデザイナーの平均給与は88,500ドルです。

参考:
変わり始めたデザイナーの仕事内容と役職別の平均給与 | freshtrax

Webデザイナーになりたいと言ってデザインスクールに通ったり書籍を買って勉強した方も多いかもしれません。
かつては非常に人気のあった職業ですが、事実Webデザイナーという職業自体がアメリカのデザイナー職の平均給与を下回っています。
白紙のカンバスに「絵を描く」デザイナーよりも、デザイナーに「絵を描く」以上のことを要求されているのはこのことからも明らかです。

WebデザイナーがUXデザイナーになるための5つの考え方

design.jpeg

最近のデザインスクールではWebデザインだけでなくUXデザイン論に関してもカリキュラムとして学べる学校が増えてきたので、既存のWebデザイナーにとっては大きな脅威となります。
若手デザイナーたちは新卒の時点でUXデザインの総合的なプロセスを学び、それらを活用した実践的なプロジェクト経験が積まれて、市場にマッチした状態で世の中に出るからです。

逆に言えば、いままでWebデザインやグラフィックデザインだけを行ってきた人たちも、考え方を変え、UIUXの知識を身につけることで、再び市場で戦っていくことができます。
これまでどれだけ経験があったとしても、デザイナーという仕事はテクノロジーと世の中の流れに合わせていくことが求められるのです。

ここでは、WebデザイナーがUXデザイナーになるための5つの考え方をご紹介します。

1. デザインをビジネスの手段と考える

UXデザインの最終的なゴールは、ビジネスの目的とユーザー側の目的の両方を達成することであり、デザインすること自体はあくまで手段のひとつでしかありません。
しかし、Webデザインは逆であることが多く、見た目をよくしたりカッコよくすることでメッセージを伝えやすくするという、「いいデザイン」が最終的なゴールになってしまいます。

UXデザインにおいては、デザインはビジネス上の目標を達成するための手段であるので、そこにデザイナーとしての自己主張は必要ありません。
しかも見えないルールでユーザーを無意識にゴールまで導いてあげる設計を作り出すことが求められます。

かわいいアイコンやクールなビジュアルよりも、1%でも送信率の高いWebフォームを設計することがUXデザイナーの仕事です。

デザイナーの直感によって*「これこそがいいデザインです」*とクライアントに自慢するのをやめ、それぞれのパーツがどのようなビジネス上の意図で設計されているのかをクライアントに説明できるようになることが求められています。

2. チームで戦う

Webデザイナーやグラフィックデザイナーにはフリーランスで働いている人が多いことからも分かるように、外見的なデザインの作業は基本的に1人でこもって行うことも多いものです。

しかし、UXデザインの仕事となれば、一人で作業する時間はほとんどありません。

ユーザーと対話したり、プロダクトチームと議論したり、エンジニアと試作品を作ったり、マーケターと顧客獲得のための設計を決めたりと、誰かと一緒に仕事をしている時間が圧倒的に長いのです。

3. 結果で評価される

従来、Webデザインを依頼する場合、*「とりあえずかっこいいホームページを作りたい」*という要望も多かったものでした。
しかし、プロダクトやビジネスでの成功が求められているこの時代においては、かっこよくても検索もされず、離脱率も高く、コンバージョンにつながらない、結果の出ないWebサイトに価値を感じていない人のほうが多いのではないでしょうか。

その意味では、Webデザイナーはデザインを「納品して完了」という具合で仕事をしますが、UXデザイナーはデザインが出来てからがスタート地点になります。
コンバージョン率が悪ければ、またさまざまなステイクホルダーと議論し、改良を加えていく必要があります。
Webデザイナーは作品の見た目で評価されますが、UXデザイナーはプロダクトを通した結果で評価されるのです。

4. ウォーターフォールよりもアジャイル型

1pxに命を注いで完璧な作品を納品するWebデザイナーは、いわばプロジェクト立ち上げ当初に作り上げた要求仕様を忠実に実装する、というウォーターフォール型の仕事の仕方を行います。

一方、UXデザイナーにはスピード感を持って仮説検証を行い、ラフなモックアップやプロトタイプ作成が求められます。
そこで作り出されるのは*「雑でもいいから検証可能なデザイン」であり、完璧とは程遠い不完全なデザインです。
UXデザイナーにとっては、プロジェクトを取り巻く環境は変化するということが前提のため、Plan-Do-Seeのサイクルを繰り返し行い、価値を最大化する
アジャイル型*の働き方が求められます。

参考:
生産性向上を実現!プロジェクトマネジメントで押さえたい代表的な3つの手法

5. 「見えるデザイン」よりも「見えない導線」

1pxをストイックに追求していると、ついそこに没頭してしまい「どう見えるか」にとらわれてしまいます。
しかし、様々なデバイスであらゆる要素がインタラクティブに動く今の時代は、「静止画」の見た目だけで完結する要素は劇的に減ってきています。

UXデザイナーは、見え方以上に*「どう動くか」を重要視し、インタラクティブなデザインを行っていきます。
ユーザーがホームページ上でどのようなアクションを行うかを想像し、コンバージョン率向上に向けての
見えない導線*を考えるのが、UXデザイナーの仕事です。