Webデザインの勉強をしていると、よく*「UXデザイン」という言葉が登場します。
UXとは「ユーザー体験」のことですが、聞きなれていないと
「体験をデザインするってどういうこと?」*と混乱してしまうこともあるのではないでしょうか。

世界で活躍するUXデザイナーやエンジニアたちは、UXデザインのことをどのように考えているのでしょうか。

今回は、UXデザインのことがよく分かるTED動画をご紹介します。
スピーカーの中には、誰もが一度は聞いたことがあるスタートアップ企業のデザイナーもいるので、きっと参考になるはずです。

TEDとは

*TED(Technology Entertainment Design)*は、大規模な講演会を主催している非営利団体です。

TEDの講演会はTEDカンファレンスと呼ばれ、テクノロジー分野(学術分野)・エンターテインメント分野・デザイン分野を中心に、その世界で活躍する人々が *「TEDトーク」*と呼ばれるプレゼンテーションを行います。

さらに、TEDでは*「Ideas worth spreading(広げる価値のあるアイデア)」*をスローガンとして標榜しており、インターネットでも無料で簡単に " TEDトーク " を閲覧することができます。

UXデザインのことがよく分かるTED動画5選

1. シーナ・アイエンガー|選択をしやすくするには

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https://www.ted.com/talks/sheena_iyengar_choosing_what_to_choose?language=ja

シーナ・アイエンガーはコロンビア大学経営大学院マネジメント学部の教授で、*「選択すること」(Choosing)*の研究の第一人者です。

カスタマイズされた体験や製品は誰もが望むものですが、あまりにもたくさんの数の選択肢を目にすると、消費者はどのようにすればいいのかが分からなくなります。
シーナ・アイエンガーは実際に選択肢が多くなるほど人々は選択を先延ばしにしてしまうことを指摘し、過剰な選択肢をできるだけ少なくするように提案しています。

実際に348種類ものジャムが揃った食料品店を例に挙げたりしていますが、ホームページ上でも同じことが言えます。
たくさんのブランドや商品をそろえて、ユーザーが離脱してしまうような設定になっていませんか。
選択肢の多さが悪いUXを生み出してしまうということを事例を通して理解できる、すばらしいTEDトークです。

2. デビッド・マキャンドレス|データビジュアライゼーションの美しさ

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https://www.ted.com/talks/david_mccandless_the_beauty_of_data_visualization?language=ja

デビッド・マッキャンドレスはロンドン在住のデザイナーで、インフォグラフィックに関する2冊の本の著者です。

このTEDトークでデビッドは、デザインすることが単なる見た目の操作ではなく、あらゆる問題へのシンプルな解決策だと説明しています。
実際に、各国の軍事費を円の大きさで表現してみたり、Facebookの交際ステータスを1万件以上集めてグラフ化してみたりすると、単なる数字の羅列だけでは分からなかったことも一瞬で分かるようになります。

インフォグラフィックはよくデザインとセットで語られることが多いですが、ユーザーが素早く正確に理解するため、UXにおいても非常に重要な要素です。
過剰な情報の海を渡るときにユーザーが使いやすい体験をする解決策になるのは、「データをデザインすること」だというのがよく分かるTEDトークです。

3. ロッチェル・キング|UXにおけるデータとデザインの複雑な関係

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https://www.ted.com/watch/ted-institute/ted-bcg/rochelle-king-the-complex-relationship-between-data-and-design-in-ux

最近デスクトップ版もリリースされたSpotifyですが、なぜSpotifyはダークなUIが採用されているかご存知ですか。

ロッチェル・キングはSpotifyのUX・デザインのグローバルVP(副責任者)で、ユーザーがSpotifyアプリで検索したり使い心地をよくしたりするチームの指揮を執っています。

Spotifyに来る前、ロッチェルはNetflixでUXとプロダクトサービスのVP(副責任者)を担当していた経験があり、デザインやコンテンツマーケティングなどを担当して、UIレイアウトなどを改良するミッションを負っていました。
こうしてNetflixはあらゆるプラットフォームで世界中で使われるようになりました。

ホームページを製作するのは、ユーザーが快適に回遊することと、組織の明確な目標の両方を達成することが不可欠です。
ロッチェルは、Spotifyを使いづらい数々のUIからシングルレイアウトに統合するために、さまざまなチャレンジを行なってきました。
よく知られているホームページのリニューアルを通して、デザインとデータ、そしてそれをつかうユーザーとの関係についてどのようにすればいいのかが、このTEDトークで明らかになります。

4. マーガレット・グールド・スチュワート|あなたの(そして何十億人の)ための巨大なウェブデザインの方法

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https://www.ted.com/talks/margaret_gould_stewart_how_giant_websites_design_for_you_and_a_billion_others_too?language=ja

マーガレット・グールド・スチュワートはYouTubeのディレクターを務めたのち、現在ではFacebookのプロダクトデザインのディレクターを務めます。
Facebookの「いいね!」や「シェア」ボタンは1日220億回使われますが、これは今まで作られたデザインの中で最もよく閲覧されています。

これほど大規模なシステムのデザインですが、このTEDトークでそうした大規模なデザインのための3つの法則を説明しています。

FacebookアプリやMessengerアプリは、AppStoreでの評判はあまりよくありませんが、わずかな変更が世界規模の反感を買ってしまう反面、規模が大きいからこそわずかな改良でポジティブな反応を得ることもできます。
日本では日本語にしか対応していないアプリケーションもたくさんありますが、このTEDトークは世界規模でデザインする意義は何かを考えるいいきっかけになります。

5. 伊藤穰一|革新的なことをしたいなら「ナウイスト」になろう

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https://www.ted.com/talks/joi_ito_want_to_innovate_become_a_now_ist?language=ja

インターネット以前の時代を覚えていますか?人々がまだ未来を予測していた時代を」

MITメディアラボの所長である伊藤穰一は、2014年3月にTEDトークを行いました。
彼がこのTEDトークで提案するのは、未来を予測しようとする代わりにその場で創造する新しいアプローチです。
この方法では、プロダクトを短期間で作り、絶えず改良し、誰の許可を求めることもなく、アイデアが正しいかをあらかじめ検証しないアプローチ手法です。

イノベーションは、今この瞬間に身の回りで起きていることに心を開き、注意を向けることから始まります。
「フューチャリスト」であってはいけない、「ナウイスト」になるべきだ、と伊藤氏は主張しています。

UXデザインは、自分たちの中で正解を求める行為ではなく、常にトライアルをしながら期待値の高い解を見つけていくアプローチです。
このTEDトークはUXデザインの考え方とも通じるところがあるので、非常に参考になるのではないでしょうか。