情報発信に取り組む企業が増える中で、自社で編集者やライターを雇い、情報発信力を内製化するケースも増えてきています。

事業会社内で編集者やライターとして情報発信に携わる役職は「インハウスエディター」と呼ばれ、新しい職能として注目が集まっています。

今回、複数人のインハウスエディターが所属している、お菓子のスタートアップ株式会社BAKE(以下、BAKE)の事例をご紹介します。

本記事のメイン画像は、BAKEのオウンドメディアに関わる塩谷舞さん、大嶋絵理奈さん、平野太一さん、名和実咲さん:左から
  

お菓子のスタートアップ「BAKE」

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BAKEは、焼きたてチーズタルトの「BAKE CHEESE TART」、シュークリーム専門店の「クロッカンシューザクザク」、バターサンド専門店「PRESS BUTTER SAND」など、様々なお菓子ブランドを展開している会社です。新しいブランドの立ち上げや新規出店の情報など、頻繁に新しいニュースを生み出しています。

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BAKE会長の長沼 真太郎さんは自社のことを「お菓子のスタートアップ」と呼び、業界では類を見ないブランディングやマーケティングのアプローチをとってきました。オウンドメディアへもいち早く挑戦を開始。今では、"THE BAKE MAGAZINE" "CAKE.TOKYO" "OPENLAB Review"の3つのオウンドメディアを運営しています。

3つのオウンドメディアは、それぞれ3人のインハウスエディターが担当。BAKEの各オウンドメディアの役割や各エディターの業務内容、組織におけるエディターの位置付け等について、インハウスエディターの皆さんと、フリーランスのライター兼インフルエンサーで、THE BAKE MAGAZINEの編集長も務めている塩谷 舞さんに話をうかがいました。
  

BAKEに「インハウスエディター」が生まれるまで

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モリ:
今日は宜しくお願いします。まず、それぞれ自己紹介をお願いします。

名和:
THE BAKE MAGAZINEの担当の名和です。私は前職で雑誌にかかわっていて、BAKEに転職しました。エディターとして、BAKEの新しいブランドや新店のリリース情報を出したり、BAKEで働くメンバーの紹介をしています。

平野:
僕はスタートアップから転職して、CAKE.TOKYOの編集を主に担当しています。CAKE.TOKYOは、他社のお菓子屋さんを取材して、お菓子屋さんのこだわりを写真と文章で伝えています。自分でも取材しますし、外部のライターさんに取材をお願いすることもあります。

大嶋:
私は大学院で生物系の研究をしていました。BAKEの前にいた会社では、味覚センサーを扱う会社でオウンドメディアの編集長をしていました。BAKEでは「OPENLAB REVIEW」というメディアを運営しています。お菓子を作るまでのプロセスや、美味しさを人はどう感じているのかなどについて、科学的にわかっていることを記事にしています。

名和:
順番としては、"THE BAKE MAGAZINE" "CAKE.TOKYO" "OPENLAB REVIEW" の順に立ち上がっていきました。THE BAKE MAGAZINEが会社のことや採用に関することを、CAKE.TOKYOがお菓子屋さんのことを、OPENLAB REVIEWがお菓子の科学について発信しています。

モリ:
インハウスエディターの役割が生まれたのは途中からですよね?どういった流れで生まれたんですか?

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塩谷:
最初は、私が外部の専門家として呼んでいただき、インハウスのデザイナーやマーケターの皆さんと一緒にTHE BAKE MAGAZINEを立ち上げました。立ち上げ時期に軸となる記事を編集して、スモールスタートで始まったのが2015年の5月のことですね。

モリ:
立ち上がりの時期に専門家がいたのは強いですね。

塩谷:
オウンドメディアを始める企業は、Webサイトというハコは用意できても、運用ができなかったりして上手くいかなくなってしまったり、社内確認に時間がかかり過ぎてしまったり、編集プロダクションやライターへの支払いに思いのほかお金がかかり過ぎてしまったり……と、色々な理由で続かなくなってしまいます。BAKEは社内にインハウスデザイナーやエンジニアがいるので、ベータ版のまま世に出しても改善しやすいし、スタートアップなので社内確認も爆速。オウンドメディアを始めやすい土壌が整っていたので、とてもやりやすかったです。

ただ、流入元のメインが私個人のSNSからの拡散になってしまっていて、その状況は課題でしたね。

モリ:
塩谷=BAKEじゃないですもんね。

塩谷:
そうなんです。でも、代表(現会長)の真太郎さん自身にFacebookで拡散してもらったり、
少しずつ、インハウスでメディアを担当する人が入社したりして、SNS上でも情報発信ができるような人が増えていきました。

最初は私がシェアしないと数字が伸びない……という状況だったのですが、段々と社内メンバーの発信力も伸びて、読者はBAKEの公式アカウントのフォロワーにもなってくれて、ダイレクトにメディアを訪れてくれるようになっていきました。

モリ:
少しずつ企業にフォロワーが付いていったと。立ち上がりから、次第に内製化の道を進んでいったんですね。

塩谷:
最近では「お菓子のスタートアップのBAKE」と、ポジションを説明するような枕詞を付けなくても、「BAKE」というだけで「あぁ、あの新しいことをやってるお菓子屋さんね」と、わかってもらえることも増えてた印象です。それがここ2年での大きな変化です。