ブランドのファンとのコミュニケーションは、オンラインコミュニティなどのデジタルな接点と、リアルな場での接点と大きく2つに分けられます。

なかでも、最近とくに重視されているのが後者のリアルな接点です。

そこで今回は、「ブランドのファンとのリアルな接点における熱量の高め方」について紹介したいと思います。

ファンイベントで参加者の熱量を高めていく

多くの人に参加してもらうことが目的のPRイベントでは、なるべく参加者から不満が生まれないようなコミュニケーションの取り方が鉄則です。一方で、ブランドのファンを招待するファンイベントでは、当たり前ですがそのブランドのことが好きな人が集まります。そのなかで必要になるのが、ただ単に満足してもらうのではなく、イベントを通じて一層ブランドのことを好きになってもらうことです。

よくあるPRイベントの参加者が数千人〜数万人におよぶのに対し、ファンイベントは数人~数十人の規模のものが一般的です。この規模感を活かして、ブランド担当者は参加者と直接会話をしながら参加者の熱量を高めていくポイントを押さえましょう。

ファンの記憶に残る特別な体験を提供する

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ファンイベント開催の目的は「ファンへの感謝」「ストーリーの伝導」「ファンの理解」「ファンとの協働」など様々です。いずれの目的であっても開催するうえで忘れてはいけないのが、ファン個人の記憶に残る特別な体験を提供できているかということです。そこには、「誰もが体験できるコンテンツ」ではなく、「ブランド担当者と直接関わることによって生み出される特別な体験」がなければいけません。

ファンイベントの好例としてよく語られるのが、ヤッホーブルーイング(以下、ヤッホー)です。「よなよなエール」「水曜日のネコ」「インドの青鬼」といったクラフトビールを製造・販売する長野県のヤッホーは、自らを「ビール製造サービス業」と名乗り、スタッフが率先してファンと直接会い、様々な人たちと交流することで、熱狂的なファンに支えられるブランドに成長しています。

年に数回、都内のビアレストラン「YONA YONA BEER WORKS」で開催する「宴(うたげ)」というイベントには、数十人のファンが店舗に集まり、ビールの美味しい飲み方やヤッホーの歴史を学んでいます。告知から数分でチケットが売り切れると言われているほどの人気イベントです。

また、年に一度、数千人のファンが一堂に会して、ヤッホーのビールを屋外で楽しむ「よなよなエールの超宴」という大規模なファンイベントも開催しています。

このようなファンイベントでは、ファンが盛り上がっていることはもちろん、ファンの盛り上がりがブランドへの熱量の高まりと一致していることが大事なポイントです。参加者が積極的におしゃべりをして盛り上がれば良いというわけではなく、その盛り上がりの中においてブランドへの共感を再認識していく体験が伴わなければいけません。

例えばヤッホーの「よなよなエールの超宴」では、井手社長(ニックネーム「てんちょ」)の掛け声とともに、参加者同士がグラスを交わしカンパイをします。お互いの名前も知らない参加者たちの中にヤッホーのスタッフも加わって、全員がヤッホーのビールを一緒に楽しみ、ビールを通じて仲間になります。

このカンパイの瞬間こそ、「あー、ヤッホーってこういうブランドだよね!」「こういうところがいいところだよね!」と、ファンであることを再認識させてくれるシーンであり、ヤッホーの世界観をその場にいる全員でつくりあげているという状況は“ブランド担当者と直接関わることによって生み出される特別な体験”に他なりません。