コミュニティ設計によりアップセルへ

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現状と理想のギャップに気付いてもらう

株式会社ABEJAの丸田氏は、アップセルのために大事なことは顧客の課題を創り出すことと、サービスの良さを顧客に伝えてもらうことであると言います。

「アップセルのために大事なのは、“お客様に課題を解決すること”と“サービスの良さを伝えること”ってよく言われますよね。けれども実際そうではなくて、“お客様の課題を創り出すこと”と、“サービスの良さを顧客に伝えてもらうこと”なんですよね。ここで言うお客様の課題というのは、現状と理想のギャップです。なので我々はお客様に理想のイメージを持っていただくことで、現状との間に「埋めたくなる」ギャップ=課題を創り出すんです。ラーメンに例えると、現状は何も具が乗っていないラーメン。そこにトッピングがたくさん乗っているラーメンを現れると、それが理想になるんです。つまり課題はトッピング。そしてそのトッピングの乗ったラーメンを隣の席の人が美味しそうに食べてたら、トッピングが欲しくなりますよね。これがサービスの良さが他のお客様から伝わるということなんです」(丸田氏)

ユーザーのコミュニティを設計

また丸田氏は、顧客のコミュニティを設計することで顧客の課題の創出とサービスの良さを伝えてもらうことを実現しました。

「実際にお客様のコミュニティを設計して成功体験をお客様自身に伝えてもらうことで、自分達からサービスの良さを伝えるよりも効果的にサービスの良さを知ってもらうことができました。また、サクセスしたお客様が他のお客様にとっての理想の姿となるので、課題の創出にも繋がります。また我々はコミュニティの設計に注力すれば、自分達だけでサクセスを行っていくよりもスケールできますし、ここで出てきた成功事例を記事化して共有することでテックタッチのアプローチもできます。また、新規のお客様がこのコミュニティに入ってくれば、受注の前の段階でサービスの活用方法や成功事例をインプットすることができるため、「プレオンボーディング」ができ、温まった状態でサービスを開始してもらえます」(丸田氏)

アップセルにはポジティブとネガティブがある

続けて丸田氏はアップセルが起きる理由についても述べています。

「お客様がアップセルをする理由はポジティブなものとネガティブなものに分かれます。ポジティブなものは感動、共感、期待です。逆にネガティブなものは同情、懇願、強制です。これらの理由がある中で、サブスクリプションのビジネスモデルにおいては、ネガティブな理由でアップセルしたお客様はチャーンしてしまう確率が高くなってしまいます。なので、リテンションが重要であるSaaSのサービスのアップセルの理由はポジティブなものでなければなりません」(丸田氏)

顧客をサクセスに導くマップが必要

丸田氏は顧客をサクセスに導くには顧客のゴールに向かうためのマップが必要でありつつも、単一のマップのみでサクセスさせるには障壁が多いと言います。

「お客様をサクセスに導くためには、お客様がゴールにたどり着くためのマップをつくることが重要になります。料理で言えばレシピの部分です。しかし食べたい料理はお客様によってバラバラです。なので単一のマップだけではダメなんですね。とは言っても、一つひとつをフルスクラッチで作っていくのも労力がかかり過ぎてしまいます。さらにどれだけマップを作っても、お客様の中には、他社からの助言を受け入れることを拒む傾向があったり、分析に時間を使いすぎてしまいアクションに至らなかったり、多様なアイデアが出てきても社内のステークホルダー間での合意が取れなかったりなど、お客様がサクセスに向かうには様々な壁が存在します」(丸田氏)

ワークショップを用いてマップを作成方

ではどのようにすれば、お客様がサクセスに向かえるようなマップが作れるのでしょうか。

丸田氏は経営層から現場まで全員参加のワークショップを開催することで、これを可能にしたと言います。

「ワークショップという形式を取ると、お客様から多様な意見を引き出すことができます。我々からの提案を一方的に伝えるわけではなく、お客様からの声を集約してサクセスに導いていくプロセスを経るため、お客様の満足度の高いマップが設計できます。このマップを具体的なネクストアクションに落とし込んでいきます。『まず最初の一歩として何ができますか?』の質問を投げかけることで、あくまでこちらから何かを一方的に示すのではなく、お客様からの意見に基づいてアクション設計をしていきます。これでお客様が行動に起こしやすいマップを作っていけます。全員参加のワークショップですので、実行段階になって、社内で合意が取れないような可能性も高くありません。さらにこのマップが当てはまる他のお客様もいるはずなので、マップのパターンが増えてくれば、それをある程度カスタマイズして展開することで少ないリソースでも多くのお客様をサクセスに導くマップを提供することができます。そして、お客様の課題の解決にアップセルを紐づけることで、アップセルすればするほどお客様が理想に近づけるようなマップに落とし込んでいきます。」(丸田氏)