ECショップごとに違いはある?

ace_-_3.jpg

川部さん:
複数のECショップをそれぞれ展開している中で、売れ線の商品はどこでも同じなのでしょうか?

北山氏:
変わりますね。各ECショップにあわせ、あえて商品を出したり出さなかったりという仕訳もしていますから。詳細は言えないのですが、楽天さんは単価が安い商品がよく回転しています。1万円しないようなカジュアルバッグが中心で、さらに楽天ポイントをたくさん持っている方は、ポイント使ってさらに安く買うことも多いです。単価が高いのは自社ECです。公式サイトというところでご安心いただいているのでしょうか。メーカー直営の強いところです。

川部さん:
Amazonの場合はどうでしょうか?

北山氏:
Amazonの場合、ショッピングカートボックス(※1)がとれないと、大きな売り上げが見込めないので、売上規模としてはそんなに大きくないですね。

※1 amazonの商品ページでは複数の出店者がいる場合、最も条件が良いと考えられる1社だけが、一番上にひときわ目立つように囲いだされ、購入ボタンも大きく表示されています。ここに表示されることを「ショッピングカートボックスを獲得した」と通称されています。獲得できなかった2番手以下の出品者は、ショッピングカートボックス下に「こちらからもご購入いただけます」として省略表示がされるのみで、この送客力の差は歴然としています。そのため一番上に表示される「ショッピングカートボックスを獲得する」ことは、とても重要です。

川部さん:
カートボックスは必ず獲得したいが、たくさん出品者がいると獲得できない。でも取らない限り、売上もなかなか取れない。

北山氏:
ショッピングカートボックスを獲得する条件は明らかにはされていませんが、「購入者のためになること」が大事と考えられています。それはプライスであったり、ポイント還元率であったり。単に値段が一番安いから、といってとれるわけではありません。発送日数でも順位が変わることもありますし、色々な条件が組み合わさってショッピングカートボックスの獲得に繋がるので難しいところです。

オムニチャネル化する際の課題・解決方法

ace_-_4.jpg

川部さん:
ここ数年で取り組んだというオムニチャネル化について詳しく教えてください。

北山氏:
僕がエースのEC責任者になったのは2017年からです。社内で違う事業部が統合したタイミングで責任者になりました。

そこからサイトのトップページのリニューアル、実店舗とのポイントの共通化としてのオムニチャネル化、各店舗のショップブログ発信などを進めていきました。

ただ実店舗がショッピングモール内にある場合は、単体での発信が難しいこともあり、自社公式サイトのトピックスでしか情報発信の場がないという場合も多くあります。そこで独自にフェアをする際の発信の場をもうけたいと考え、各店舗のショップブログを始めました。そうしてそこで紹介した商品と、ECで掲載している商品を紐づけていきました。内部リンクの拡充、テキストのボリューム化、SEO対策といった目的も兼ねて導入しています。

川部さん:
実店舗とECを連携は、今どこのメーカーもオムニチャネル、OMO(online merges offline)として、取り組んでいる真っ只中ですよね。オムニチャネルをやるにあたり課題となったところは、どんな点でしょう?

北山氏:
それまで既存店舗で集めてきた紙ベースのカルテによる顧客情報をどう統合するか」というのがまず一番大きな問題になりました。

解決方法は二者択一です。1つ目は、ゼロベースで再度、顧客情報を取得する方法。2つ目は、紙ベースのカルテをデータ化して活かす方法です。エースでは後者を選びました。

せっかく取得したデータは活かそうということで、既存の顧客情報データを3カ月かけて各店舗ごとに紙からExcelに入力していく作業が3万2,000件ほど発生しました。直営店84店舗あるので、各店舗あたり300~1,500件くらいの顧客情報を入力していきましたね。

もう一つ大変だったのが、顧客管理システムとポイント管理システム、ふたつのデータをつなぐ作業です。エースでは、ECと実店舗の顧客情報管理の総合管理は、「ecbeing(イーシービーング/株式会社ecbeing)」を、ポイントの付与に関しては「CROSS POINT(クロスポイント/株式会社アイル)」を使っています。この「ecbeing」と「CROSS POINT」をつなぐ作業にかなり手間がかかりました。「CROSS POINT」からのデータの掃き出しは一切できず、EC側で再構築しないといけないという課題が発生していたんです。

また、オムニチャネル化をスタートした時に、既存会員が従来活用していたスタンプカードの扱いをどう集約するか、という問題もありました。ポイントカードを付与した際の仮番号と、管理システムでの実番号との照合・すりあわせに半年近くかかり、大変でしたね。

統合後の今は、新たに顧客カードを発行する際は、仮カードをお渡しし、最後の登録はご自宅でスマホやパソコンからお願いするというかたちにしているので、比較的顧客情報の登録のハードルは下がったと思います。

川部さん:
今までは、店舗ですべての情報を書いてもらわないといけなかったので、その分ラクになったということですね。