Web広告用語の中でもよく混乱してしまう、「DSP」「DMP」「SSP」。

違いや特徴、仕組みなどを十分に理解できていないという方も多いのではないでしょうか。

今回は、DSPとDMP、SSPの違いを、それぞれの特徴や仕組み、Web広告配信の流れとともに解説します。

目次

  1. DSP,DMP,SSPの違いとは
  2. DSPとは
    1. DSPの仕組み
    2. DSPサービスの例
  3. DMPとは
    1. DMPの仕組み
    2. DMPサービスの例
  4. SSPとは
    1. SSPの仕組み
    2. SSPサービスの例
  5. DSP,DMP,SSPを利用したマーケティング施策の流れ
    1. ユーザーがWebサイトを訪問
    2. WebサイトからSSPへ、ユーザーに表示する広告のリクエストを送信
    3. 訪問したユーザー情報を取り込んだSSPから各DSPへ、取り引きのリクエストを送信
    4. SSPからの情報をもとにDSPが最適な広告を選び、SSPに送信
    5. DSPから送信された広告の中から、最も価格の高いDSPを選び入札
    6. 入札された広告がWebサイトで表示される
  6. まとめ

DSP,DMP,SSPの違いとは

DSPとDMP、SSPの違いとは、「Web広告配信における役割」だと言えます。

DSPとDMP、SSPの役割を簡単にまとめると、以下の通りです。

  • DSP…広告主側の広告効果を最適化・最大化するため、ユーザーに適した単価の安い配信先を探す
  • DMP…DSPやSSPの精度を高めるために、自社や外部の様々なデータを統合・管理し、提供する
  • SSP…媒体側の広告収益を最大化するために、より高額な広告に入札する

これから、それぞれの特徴や仕組み、提供されているサービスを紹介します。

DSPとは

DSPとは、「広告主側の広告効果を最適化・最大化するためのプラットフォーム」で、正式名称は「Demand-Side Platform(デマンドサイドプラットフォーム)」です。

DSPを利用して広告配信を行うことで、以下のようなメリットを得られます。

  • 自社の商品やサービスに興味関心のあるユーザーにアプローチできる(売上につながりやすい)
  • 類似ユーザーへの広告配信によって、Web広告の費用対効果を最大化できる
  • 広告運用の自動化(一部)によって、運用負担を減らせる

また、DSP独自のアルゴリズムによって自動的に最適化するアルゴリズム型と、広告配信の結果などを見ながら手動で調整する運用型の2種類があります。

基本的な運用を自動化できるアルゴリズム型は、運用の手間を減らすことが可能です。

運用型においてはコストがかかる反面、細かな設定や調整できるため、より柔軟な対応が可能になるでしょう。

DSPの仕組み

DSPは、広告を掲載する媒体側の収益を最大化するためのプラットフォームであるSSPと連動して広告配信を行います。

Webサイトに訪問したユーザー情報をSSPから受け取ったら、DSPの出番です。

DSPはSSPから受け取った情報をもとに、契約している広告の中からターゲットユーザーに最適かつ単価の安い広告を選んでSSPに送信します。

そして、SSPから選ばれたDSPの広告が配信されるという仕組みです。

DSPサービスの例

以下は提供されているDSPサービスの一例です。

  • FreakOut(フリークアウト)/株式会社フリークアウト
  • MicroAd BLADE(マイクロアド ブレード)/株式会社マイクロアド
  • Criteo(クリテオ)/Criteo
  • MarketOne(マーケットワン)/株式会社プラットフォーム・ワン
  • Bypass(バイパス)/ユナイテッド株式会社

DMPとは

DMPとは、「DSPとSSPの精度を高めるためのプラットフォーム」で、正式名称は「Data Management Platform(データマネジメントプラットフォーム)」です。インターネット上にある様々なユーザーのデータを統合・管理できることから、効率的なデータ活用が可能になります。

DMPに蓄積される情報は、以下の通りです。

  • Webサイトの閲覧・行動履歴
  • 検索ワード
  • 購買データ
  • 性別・年齢などの属性データ
  • 興味関心 など

DMPは外部が提供する情報を使用するオープンDMP(パブリックDMP)と、自社が保有しているユーザー情報を使用するプライベートDMPの2種類に分かれており、蓄積している情報が違います。

オープンDMPはユーザーの性別や年齢、興味関心、Webサイトの閲覧・行動履歴など、第三者が提供する情報、プライベートDMPは購買データやWebサイトへのアクセスログ、会員情報など、自社が保有する情報を管理しています。

近年ではプライベートDMPにおいてはより膨大なデータを有効活用できるよう、オープンDMPと組み合わせて使用するケースも多いようです。

DMPの仕組み

DMPの仕組みは、以下の3段階に分かれています。

1. データの収集
2. データの分析・整理
3. データの活用

DMPがまず行うのは、Webサイトのアクセス解析やWeb広告配信、顧客属性、顧客購買など、外部・自社内のあらゆるユーザーのデータを収集することです。

外部のデータを収集する際には、Webサイトをブラウザ経由で閲覧した際にブラウザに対して付与される「Cookie」を使用します。
Cookieに記録されるのは、Webサイト上でのユーザーの属性や行動履歴、位置情報などです。

ユーザーのデータを集めた後は、収集元が異なるデータを紐付けするなどして一元化し、さらに任意のルールに基づいてセグメントを行ってデータを整理します。

そして、整理したデータをDSPとSSPに送信することで、広告配信の最適化につなげるという仕組みです。

DMPサービスの例

以下は提供されているDMPサービスの一例です。

  • Intimate Merger(インティメート マネジャー)/株式会社インティメート・マージャー
  • Arm Treasure Data eCDP(アーム トレジャー データ イーシーディーピー)/トレジャーデータ株式会社
  • AudienceOne(オーディエンスワン)/デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社
  • Rtoaster(アールトースター)/株式会社ブレインパッド
  • Adobe Audience Manager(アドビオーディエンスマネージャー)/アドビ システムズ株式会社

SSPとは

SSPとは、「Supply Side Platform(サプライサイドプラットフォーム」の略称で、「広告を表示させる媒体側の収益を最大化するためのプラットフォーム」のことです。

あらかじめ媒体側が広告枠や価格、広告主の業種などを設定することで、条件をもとに提示された中から最も単価が高い広告を自動で選定し配信することができるため、運用コストの削減にも役立ちます。

また、媒体側の広告収益を最大化させるだけでなく、媒体に訪問したユーザーの情報や広告枠の情報を一元管理し、DSPとのリアルタイム入札を実現させるという役割もあります。

SSPに適している媒体と言われているのは、ユニークユーザーやオーディエンスの種類が豊富な媒体です。

SSPの仕組み

媒体側がSSPに対して、所有しているWebサイト広告枠をいくらでどのような広告主に販売したい、などの情報を設定します。

SSPは媒体側の設定に基づいて、連携した各DSPから送信されてくる広告の中から最も収益性が高い広告を自動で選定して入札することで、媒体に表示されるという仕組みです。

SSPにおいても、DMPが保有している情報を受け取ることによって精度を高められます。

SSPサービスの例

以下は提供されているSSPサービスの一例です。

  • GenieeSSP(ジーニーエスエスピー)/株式会社ジーニー
  • YieldOne(イールドワン)/株式会社プラットフォーム・ワン
  • Ad Generation(アドジェネレーション)/Supership株式会社
  • Fluct(フラクト)/株式会社fluct
  • Adstir(アドステア)/ユナイテッド株式会社

DSP,DMP,SSPを利用したマーケティング施策の流れ

それぞれの特徴や仕組みを理解したところで、DSPとDMP、SSPを利用したマーケティング施策の流れを、Web広告配信を例に説明します。

関係性をしっかり把握することで、より理解が深まるでしょう。

1.ユーザーがWebサイトを訪問

まず、ユーザーが広告枠を持っているWebサイトに訪問したところから始まります。

2.WebサイトからSSPへ、ユーザーに表示する広告のリクエストを送信

ユーザーの訪問を確認すると、WebサイトがSSPに対してユーザーに広告を見せたいというリクエストを、ユーザーの情報と一緒に送ります。

SSPに送られるユーザーの情報とは、以下のような情報です。

  • 性別・年齢
  • 興味関心
  • Webサイトでの閲覧・行動履歴 など

3.訪問したユーザー情報を取り込んだSSPから各DSPへ、取り引きのリクエストを送信

SSPがWebサイトから送られてきたユーザー情報などを取り込み、各DSPへ取り引きのリクエストを送信します。

リクエストと同時に送られる情報の例は、以下の通りです。

  • ユーザーID
  • 掲載先のドメイン
  • 広告枠ID
  • 広告サイズ
  • 広告主の情報(コンテンツのカテゴリなど)
  • 許可する広告フォーマット
  • ブラウザ・OS情報 など

4.SSPからの情報をもとにDSPが最適な広告を選び、SSPに送信

SSPから情報を受け取ったDSPは、登録のある広告から最適なものを選んでSSPに送信します。

その際に送られる情報は、以下の通りです。

  • 入札金額
  • 広告タグ
  • 落札後の通知URL など

DSPには広告主側の広告効果を最適化・最大化させる役割があるため、ターゲットユーザーに近く、単価の安い広告を選びます。

5.DSPから送信された広告の中から、最も価格の高いDSPを選び入札

一方、媒体側の利益を最大化させる役割があるSSPは、各DSPから送信されてきた広告の中から、最も価格の高いDSPを選んで入札します。

6.入札された広告がWebサイトで表示される

そして、SSPから選ばれた広告Webサイトで表示され、ユーザーの目に入るという流れです。

流れを聞いただけだと時間がかかりそうなイメージがありますが、上記の過程は「RTB(Real-Time Bidding)」という仕組みによって瞬時に行われます。

入札に関しては、ユーザーの興味関心に合う広告のみが入札に参加するオーディエンスターゲティングという仕組みが適用されているため、すべての広告主が入札に参加するというわけではありません。

また、これらの過程において、DMPがDSPとSSPに蓄積しているユーザーの情報を提供することで、広告配信の精度を高められます。

RTBとは

RTBとは、「Real-Time Bidding(リアルタイムビルディング)」の略で、「DSPとSSPとの間で行われる取り引きをリアルタイムで行う仕組み」です。

Webサイトに訪問したユーザーに適せつな広告を瞬時に判断し、配信できます。ミリ秒単位の処理速度でタイムラグが発生しないため、効率的な広告配信が可能です。

RTBによって、広告主側はターゲットユーザーへ効率的に広告配信ができ、媒体側は入札価格の高い広告を配信し収益を上げられます。

広告主側と媒体側の利害を一致させる役割であると覚えておきましょう。

オーディエンスターゲティングとは

オーディエンスターゲティングとは、「よりセグメントされたユーザーの情報(オーディエンスデータ)を利用してターゲティングする手法」のことです。

DMPの仕組みでも触れたように、ユーザーがWebサイトに訪問した際にブラウザに付与されるCookieを利用します。

ユーザーがWebサイトに訪問した回数や閲覧・行動履歴などの情報と、性別や年齢など個人が特定されない属性データを組み合わせたものをオーディエンスデータと言います。

RTBと同じく、DSPやDMP、SSPを理解する上で知っておく必要があるWeb広告用語です。

まとめ

DSPとDMP、SSPそれぞれの役割だけでなく、Web広告配信の全体の流れを知ることで、より理解を深められたのではないでしょうか。

解説した通り、どれか一つでも欠けると効果的な広告配信を実現することは難しくなります。

DSPとDMP、SSPをうまく利用することで、ターゲティング精度の向上や広告取り引きの効率化が可能になります。ユーザーに不安や不快感を与えないデータ活用や広告配信を意識することが、何よりも大事なことだと言えるでしょう。