両者ともメディアとの関係性が重要だが関わるところが違う

ferret:日本では広告代理店の業務とPR会社の仕事内容が混同されているイメージなのですが違いを教えてください。

本田氏:PR会社と広告代理店の共通していることで言えば、両方とも必ず有名なメーカーやブランドだったりのクライアントがいます。ほとんどの場合がクライアントのために、クライアントの商品や企業、サービスとか、もし自治体がクライアントだったら観光資源とかになりますけど、何かのモノとかコトをうまく売り込んであげたり伝えてあげたりよく見せてあげたりすることは共通です。

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では、違いは何でしょうと言ったときに、そこが広告とPRの違いになります。*広告は、基本的に媒体、メディア、テレビや新聞、雑誌、ネットニュースなどの売り出されている枠を購入して、そこにコンテンツとかクリエイティブを掲載していく。*だから代理業なんですよね。

今、広告代理店の仕事はすごく多様化していますから一概には言えませんが、基本を一言で言うと今の話です。なので、構造的には不動産業に似ていて、クライアントのために、広告を展開したり言いたいことを言う場所をまず買ってあげるということをやります。これをいわゆる媒体購入(media buying)と言いますけど、買う前提でそこにすばらしいクリエイティブ、コンテンツなどを多くの人がつくりあげていくんですね。

一方、PR会社もメディアとの関係性はすごく大事なんですけども、*実は向き合っているメディアの人たちや部門が違います。*広告代理店は、枠を購入するので商取引ですよね。
広告代理店が買っているのでメディア側は営業になるわけです。テレビ局にも雑誌社にもネットメディアにも事業部と営業部があって、自分たちのメディアとしての枠を売っていてこれは商取引になります。

*PR会社はメディアを売る人ではなく、雑誌や記事、番組をつくっている人たちが向き合う人になります。*なぜならPRは媒体を買うことが前提ではないので、「売りますよ買いますよ」という話では一切ないわけです。その代りに行われるのは、「この情報いいと思いません?」「新しいですよ」などニュースや話題についての取り引きをPR会社はしています。

媒体側の人は、毎日「新しいネタはないかな」「こういうことを取材したいんだけど、どっかにいい情報はないかな」「こんな特集を組むんでこういう人を取材したいな」と何か情報を求めています。そういう人たちと情報のやりとりをするのがPR会社の仕事です。

PR会社も広告代理店も向き合う相手はメディアの会社だったりしますけど、相手となる部門が異なることが大きな違いです。

自由度が高く幅広く仕事が行えるのがPR会社

ferret:お話を伺っているとPR会社は自由度が高く、幅広い仕事を行えるイメージを抱きました。

本田氏:PRのおもしろいところなのですが、PRの仕事は、マスコミや出版社とばかりやりとりしているのかというと必ずしもそうではないんです。

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例えば何かコトを起こしたいときに、学会やNPOとかと連携することも多いんです。もっとダイナミックな場合だと、学会そのものをつくったり、NPO自体を立ち上げてしまうこともあります。

取り上げてもらう前に、情報を発信するところを自ら立ち上げてしまうんです。だから新しい団体をつくるっていうのがすごくあるんですよね。

ちょっと話が逸れちゃうかもしれないけど、アメリカには国や地方議会に働きかけを行うことを表す「ロビイング(ロビー活動)」という言葉があります。ロビイングを行う時も、やっぱり一企業が働きかけるより業界団体やNPOとかが働きかけた方が当然聞き入れてもらいやすい。
なぜなら、中立的になるからです。一企業の私利私欲のためではないとなるから、ロビイングを行うんだったら中立組織をつくっちゃった方が早い場合があるわけですね。だからアメリカではPR会社がそういうものをつくったりするっていう事例があります。

賛否両論あるんですけどね。でもそのくらいの自由度は高いと思います。