自社内だけでは賄いきれないマーケティングノウハウやリソースが必要な時、その戦略立案からクリエイティブへの着地、効果検証までのサポートをしてくれる心強い存在である「広告代理店」。自社ならではの特定のサービスを持たない企業が多いため、顧客への提案力によって各社差別化を図っている。それぞれ独自のスローガンを掲げてはいるものの、本質的には全ての広告代理店のスローガンは「クライアント・ファースト」という一言に集約できるといっていい。

問題は、その「クライアント・ファースト」の中身である。顧客の発言=ニーズと考えて、言われたことを100%実現しようとする代理店もあれば、最終的な顧客のビジネス成功にフォーカスを置いて時には依頼内容と全く違う提案をする代理店もある。キャンペーンがTVCFを中心に完結していた時代であれば前者のモーレツ代理店にも需要があったが、「手口ニュートラル」な現代においては一緒にゴールに向き合ってくれる後者のスタンスが求められる時代になってきている。

ここに、独自の「クライアント・ファースト」を実行する広告代理店がある。社名を「株式会社 猿」(現社名:株式会社WonderSpace)という。基本的なスタンスは後者の「一緒にゴールに向き合う」タイプの代理店だが、『顧客の天下統一をサポートする』という仕事の目的が他社と一線を画すところである。今回は、株式会社 猿 代表取締役社長の山本 尚宏氏に異彩を放つ社名の由来や、本当のクライアントファーストとは何か、また同社の今後のビジョンについて話を伺った。

「顧客の天下統一」にこだわる理由

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クライアントを業界No.1にすることが弊社のミッションです」と語る山本氏。実際、一昨年(2018年)に顧客であるベリーベスト法律事務所をBtoCの法律事務所で所属弁護士数においてNo.1に導いた。元々「4大事務所」と呼ばれる大手をはじめBtoBの法律事務所は扱う金額が大きく規模も大きいが、個人の債務整理などを手掛けるBtoCの法律事務所は個人経営が中心だ。ベリーベスト法律事務所に所属する弁護士数は担当前は30名前後であったが、現在は200名を超すという。

急成長の秘訣はWebマーケティングの成功である。インバウンドの法律相談が安定的に獲得できるようになった結果、その案件を担当するための人材を集められるようになった。この時の実績を基に「業界No.1にする」という方針を決めたのかと思えば、実態は逆だという。

最初から担当の方とは"No.1を獲りましょう"という話をしていました。今も、BtoCの次はBtoBも含めてNo.1を獲りましょうという話をしています」と語る山本氏がNo.1にこだわる理由は、会社設立の動機にまで遡る。

きっかけは、丸山事務所に落ちていた一冊の本

会社設立前は当時参議院議員だった丸山和也弁護士の秘書をしていたという山本氏。「丸山事務所に司馬遼太郎さんの『新史 太閤記』があり、たまたま読んで感銘をうけました」主君である信長のために骨身を削って働き、結果として自身も大いに出世した秀吉の姿は、秘書としての自身と重なる部分があったという。

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(写真:丸山 和也弁護士の秘書時代の寒中水泳の一幕)

「新史 太閤記の中で秀吉は、信長はもちろん作者の司馬遼太郎からも『猿、猿』と呼ばれ続けるんですが、読み進めるうちにどんどん『猿』という漢字がカッコよく見えてきた」と語る山本氏の仕事のスタンスはこの時に明確に定まった。同時に、社名も決まった。しばらくは秘書を続けながら個人としてマーケティング支援を行っていたが、徐々に担当サービスが「出世」するにつれて副業では間に合わなくなり、独立するに至る。

前述のベリーベスト法律事務所は会社設立当初から付き合いのあったクライアントだ。最初は別の代理店が担当していたが、行き詰まっていた。「このままでは潰れる……という状況から引き継ぎました」という山本氏は、最初の二カ月で徹底的に分析を行いひとつの勝ち筋を見出した。それまでは獲得しやすいが収益性の低い債務整理などの問い合わせを取りに行っていたが、収益性の高い過払い金請求にシフトしたのだ。

戦略転換はもちろん、獲得が難しいと言われていたジャンルの獲得のためにLP改善や広告運用改善なども徹底的に行った結果、前の代理店から引き継いで数カ月で上昇気流に入り、以降は右肩上がりの成長を続けているという。

猿の「注進」の流儀①:事業計画から考えて進言する

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猿の目的は広告の扱い額の増大ではない。あくまで「顧客のビジネス成功」のためにマーケティング支援を行うからこそ、その提案も「そもそも」の事業計画から考える。

「たとえばベリーベスト法律事務所の当初提案では、改めて弊社として事業計画書を作成し直した上で『ここを伸ばすことで収益性が上がり、一年でリクープします』というところから整理した上で、それを実現するためのリスティングなどの改善案に展開していきました」

一般的な広告代理店の範囲を超えた目線の提案を叶えるのは、猿が広告代理業と並行して日本最大級のドラマ口コミサイト「TVログ」などの自社事業も手掛けていることも大きい。

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猿の「注進」の流儀②:勝つために必要なことを、全てやる

Webマーケティングで勝つためには、戦略の重要性はもちろん、施策段階の細かいチューニングが必須である。ここでも猿は徹底している。必要とあらば、クライアントの社内に常駐社員を数名派遣することもあるという。

「現場に入ることで、PDCAサイクルを一日の中で回すことができるようになります。今日は受電が足りない、と午前に気づけば午後に切り替えられます」と語るとおり、形だけのPDCAではない本気の"試行錯誤"にコミットするために必要なことは全て行う。

データ分析を緻密に行うためには、肌感と言われるような情報も必要」というように、単に約束した問い合わせ件数に責任を持つだけではなく、それが事業計画の達成につながっているのか、まで責任を持つためにできることは全てやるのが猿のやり方だ。

猿の「注進」の流儀③:頼まれていないことも、当然やる

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猿の担当するクライアントの多くは、以前に他の代理店が運営していた後に切り替わったケースが多い。切り替えの理由としてよく聞くのが「レポート対応が遅い」であったり「リスティング運用をお願いしたら、それしかやってくれない」という不満であるという。

猿の仕事のスタンスでは、そうしたことはありえない。目的はマーケティングのパフォーマンスを数%上げること、ではなく、顧客の天下統一をサポートすることだからだ。そのために必要だと思えば、時には事業計画書から作成することもあれば、KW戦略を見直した上でCTRの低い広告文を改善するなど、川上から川下まで全てが「自分たちの戦場」である

切り替え検討のタイミングでは、現状の運用アカウントを分析したセカンドオピニオンを求められることが多い。たとえばリスティング運用の場合、猿が改善を提案するポイントは主なものだけでも13に上る。

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中期ビジョンは「5年以内に、50社を天下統一に導く」こと。

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事業経営者でもある山本氏であるが、広告代理業という受託の仕事に関しても大きな意義を感じているという。「代理店という立場は、自社事業だけでは絶対にかかわれない色々な商品・サービスと関わることができ、自分たちが介在することで本来出会わなかった人と商品・サービスをつなげられる仕事」であり、新史 太閤記の秀吉のように「主君(クライアント)の喜びを、自分の幸せに感じられる」という感性を持つ人にはこれ以上の仕事はない。

「我々のビジョン・目標に共感してくれる人材をどんどん集めていきたい」と語る山本氏が見据えるビジョンは明確だ。「5年後に、50社を天下統一に導くこと」会社のKPIにも創業時の意志が貫徹されているからこそ、山本氏だけでなく全社員に「天下統一」へ導く能力が再現性を持って継承されている。