世の中にはたくさんの商品やサービスがありますが、話題を呼んだり人気が再熱したりしたもののなかには、まったく新しいアイデアではなく「既にある何か×既にある何か」の意外な組み合わせによって生み出されたものも多くあります。

マーケティングにおいても、既存の商品を売るために新しい付加価値を付けることで新たな価値や新たなニーズを生み出すことが求められる場合があります。皆さんが抱えているサービスや商品の中にも、目線を変えて見ることで思いも寄らない何かとの組み合わせで新しい価値を生み出せるかもしれません。

意外な組み合わせのヒット事例

野菜寿司(野菜×寿司)

2017年にフランスを中心に話題を集めた日本食があります。それが「VEGESUSHI」、野菜を使った寿司です。

日本では魚介を使うのが当たり前ですが、海外には宗教上の理由で肉魚が食べられないベジタリアンの方も多くいます。彼らに寿司の魅力を知ってもらおうと、海外で活躍するフードデザイナー、ベジタリアンシェフ、野菜ソムリエの日本人男性3名による「hoxai kichen」が考案。ケーキのような色鮮やかなフォトジェニックな見た目がフランス人のハートをつかみ、レシピ本も発売されました。

参照:
注目集める「野菜すし」 人気の秘密は? - MIRAIMAGINE(ミライマジン) NHK

フランスで話題!?美しい野菜のお寿司VEGESUSHI | PARIS mag パリマグ

日本での野菜寿司の人気は、なんと海なし県の埼玉県から。埼玉県下の寿司人気低迷を危惧したさいたま市の寿司店「山水」店主が、埼玉県の野菜を使った寿司を考案したところ話題に。正統派の見た目だけど野菜がたくさんとれてヘルシーという意外性は、ベジタリアンの訪日外国人はもちろん、体型が気になる女性にも人気に。

どちらもこれまでの寿司の常識を覆しつつ、新たなニーズをつかみ、さらにSNS映えする見た目の鮮やかさが話題となりました。

参照:なぜ埼玉で大ブームに? 「野菜寿司」は本当にうまいのか 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

機能性チョコレート(乳酸菌・GABA×チョコレート)

ここ数年で、コンビニの製菓売場の枠を奪い合っているチョコレート。中でも大人女子の心をつかむのが、乳酸菌配合のロッテ『スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ』や森永製菓『ビフィズス菌チョコレート』、脂肪や糖の吸収を抑える効果があるとされるグリコ『LIBERA』、そして糖分控えめの高カカオチョコレートなどの機能性チョコレートです。

これまでもチョコレートは小腹の空いた女性が一口食べるのにちょうどいいサイズで人気でしたが、カロリーや糖質を考えると頻繁には手を出しにくい。そこで乳酸菌や食物繊維配合、ストレス改善に寄与するGABAなどで「機能性表示食品」として販売することで女性の罪悪感を払拭しました。

参照:
機能性チョコ、健康志向の大人を魅了 高カカオで差別化:朝日新聞デジタル

【話題追跡】機能性チョコ市場、500億円規模に | 健康産業新聞

道の駅 丹後王国 「食のみやこ」/川場田園プラザ(道の駅×テーマパーク)

日本全国に1170箇所以上あるという「道の駅」。これまでの「お土産や休憩の“ついで”」という目的だけでなく、最近ではそのバラエティの豊かさからわざわざ「道の駅に行く」という方も多いようです。

中でも西日本最大級の大きさを誇る道の駅『丹後王国 「食のみやこ」』は、2015年にパソナグループと地元企業のノウハウを取り入れた結果、リニューアル後の利用者数が5倍にまで増えた成功モデル。マルシェやレストラン、ギフトショップなどに加えて、ふれあい牧場や収穫体験、子どもも大喜びのアトラクション、宿泊施設までそろい、「食のみやこ」だけで一日中遊べる「滞在型」の道の駅です。

参照:
丹後王国「食のみやこ」について | 西日本最大級 滞在型 道の駅 丹後王国「食のみやこ」丹後をまるごと楽しめる 楽しみ方ガイド

なぜ関西の「道の駅」はこんなに進化するのか? 知られざるヒットの法則と人気のワケ|ウォーカープラス

群馬県の小さな農村地帯にある『川場田園プラザ』も、ファーマーズマーケットやレストラン、日帰り温泉施設などで一日中遊べる人気の道の駅です。しかし、1997年にオープン以降2007年には赤字転落と道の駅にありがちな状況に。そこで現川場田園プラザ代表取締役 永井彰一氏が就任し立て直しを行った結果、2014年には国交省選定の「全国モデル『道の駅』【6駅】』に認定され成功事例として注目されるようになります。
東京ディズニーランド視察を経て、よりハイクオリティでホスピタリティ高い施設へと変貌をとげ、さらにろくろ体験教室や日帰り温泉などを拡充することで、一日中遊んで大満足できる施設となりました。

参照:
群馬県川場村の道の駅 「何もない」地域に180万人が訪れる理由 | 月刊「事業構想」2019年3月号

1日まるごと楽しめる!遊べる食べれる道の駅 - 川場田園プラザ

ハルランドリー(コインランドリー×美容室)

かつては一人暮らしや独身男性の使う場所というイメージが強かったコインランドリーですが、ここ数年で若い女性やファミリー層が利用する明るいサービスへと変わり、店舗数も年々右肩上がりの成長市場です。

兵庫県高砂市にある「ハルランドリー」は、そんなコインランドリーの常識を変えた事例としてコインランドリー店アワードで最優秀賞を受賞するほど。元々あった美容室「ヘアサロンハル」にコインランドリーを併設することで、時間のかかる美容室の合間にコインランドリーで洗濯できるようにし、忙しい主婦の時間の有効活用を提案しました。

また、置きっぱなしの雑誌や古びた業務用洗濯機といった従来のイメージを覆し、明るい店内はオシャレな美容室の延長のよう。カフェも併設することで、女性が美容室に行ったり、カフェでのんびりしたり、何かをする“ついで”に利用できるコインランドリーが誕生しました。

参照:
高砂【ハルランドリー】は日本一のコインランドリー⁉ヘアカットしながら家事ができる!

高砂のヘアサロン&ランドリー店が国際コインランドリーEXPOで部門最優秀賞 - 高砂経済新聞

幼老複合施設(保育園×老人ホーム)

少子高齢化社会の中で、保育園とデイサービスセンター、児童館と特別養護老人ホームなど、子ども用施設と高齢者用施設が併設された「幼老複合施設」が徐々に増えつつあります。幼老複合施設そのものは2000年以前からありましたが、例えば全国の認可保育園のうち老人福祉施設と併設する保育所は、1997年時点の310ヵ所から2000年には552ヵ所へと増加するなど、需要が高まっています。

2つの施設を併設することで場所や設備を併用できるメリットがあるのはもちろん、核家族化が進む中で高齢者と子どもの接点を増やすことにも繋がり、高齢者の生きがいや子どもの教育的観点でも有効と言われています。