マーケティング活動において、最初に取り組むべきことは「市場機会の発見」です。
市場機会(他社にはない、自社ならではの強み)を見つけるためには、まず3C分析で内外部の要因を洗い出し、コンセプトを固める作業が必要です。

3C分析とは「自社(Company)」「競合(Competitor)」「顧客(Customer)」の3つを分析し、自社の強みを抽出する作業のことです。

また、3C分析の中でも「自社(Company)」の分析は客観的に、慎重に行いたいところです。自社分析をする際に欠かせない「VRIO分析」という手法をご存知でしょうか。

今回は、自社分析「VRIO分析」を解説します。

目次

  1. VRIO分析を理解するために知っておきたい3C分析
  2. VRIO分析の基本概念
  3. VRIO分析の全体像
  4. VRIO分析のやり方
  5. VRIO分析の具体例
  6. VRIO分析は自社の競争力を図れるフレームワーク

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VRIO分析のテンプレート(パワーポイント形式)

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VRIO分析を理解するために知っておきたい3C分析

VRIO分析を理解する際に、前提条件となる3C分析への理解が必要となります。

3c.jpeg
3C分析とは、市場や競合などの外部要因の分析を通じて自社の戦略策定に活かすためのフレームワークを指します。
自社を取り巻く環境の中から主要成功要因(KSF)を見つけ出すことを目的とし、一般的に「顧客分析→競合分析→自社分析」の順に行うのが望ましいとされています。

3C分析の特徴は、分析する要因を外部と内部に分けている点です。

外部分析の場合には「PEST分析」を用いることが多いです。PESTは、それぞれ、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)を表します。コトラー教授が提唱するこの方法を用いて、自社を取り巻くマクロ環境(外部環境)を分析し、現在または将来にどのような影響を与えるかを予測します。

内部分析の場合には、本記事でのテーマとなっているVRIO分析を用います。

参考:
3C分析とは〜マーケティングの基礎を覚えて競合と市場を分析しよう|ferret [フェレット]

VRIO分析の基本概念

上述した通り、3C分析における自社(Company)を分析する際に用います。

オハイオ州立大学経営学部のジェイ・B・バーニー氏が提唱した理論であり、経営資源に基づく競合優位性を分析することができます。

この理論は、マイケル・E・ポーター氏の提唱する5F分析と補完しあう関係となります。3C分析における環境分析によるポジショニングを重要視したポーター氏に対して、RBVでは企業ごとに異なる経営資源を有しているという前提で説明されています。

そのため、分析対象は「業界」ではなく「個別企業」となっています。競争優位の源泉を個別企業の特殊性・異質性に求めているため、同業他社に存在せず、いかに自社特有の経営資源を保有するかを重視しています。

VRIO分析の全体像

VRIO分析のフレームワークは以下の4要素から成り立っています。

VRIO図.jpg

VRIO分析のフレームワークは、経済価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性(Imitability)、組織(Organization)の4つに区分され、自社の経営資源(人・モノ・資金・情報・組織)について、市場での競争優位性を把握するために用います。VRIO分析の名前は、それぞれのアルファベットの頭文字を組み合わせたものから来ています。

また、最も優位性のある経営資源(コア・コンピタンス)の理解にも役立ちます。自社と競合のコア・コンピタンスを点数化し、戦略を構築する際には大きな手助けとなります。

また、フレームワークの4要素について、一つずつ確認していきましょう。

1. 経済価値(Value)

企業の有する経営資源が「経済的な価値がある」とみなされているかを分析する要素です。ここでの「価値」とは時価総額などの金銭に還元できる価値ではなく、市場の機会に対してどれだけの付加価値を生み出す可能背があるのか、また、反対に想定される外部環境からの驚異に対してどれだけ耐えうる資源があるのか、ということを言います。したがって、外部環境からの脅威や、市場への進出機会を考える際に重要なファクターとなります。

2. 希少性(Rarity)

他社が所持していない経営資源を分析する要素です。希少性が濃ければ、他企業により後発の市場参入を防ぐことができます。
提供するサービスや顧客から選ばれている理由に対して、競合他者がどれだけ同じものを提供しているか、という指標です。例えば、「独自性の高い生産技術」を提供し、かつそれが顧客からの受注理由になっている企業があるとすれば、それは希少性が高いと言うことが出来ます。

3. 模倣困難性(Inimitability)

他社が模倣できない経営資源を分析する要素です。模倣が難しい希少資源を有することができれば、競争優位性を長期間維持することが可能となります。

模倣を困難とする要因は、主に以下の4点から説明されます。

歴史性

経営資源が、企業独自の歴史的要因で成り立ってるかどうかです。このように、過去の出来事や発展経路に依存している事象を「経路依存」と呼びます。

因果の曖昧さ(ブラックボックス化)

外部から見て、経営資源がどのような仕組みで調達されているのかの曖昧さを指します。これらが企業外から把握されにくい場合、競合優位性を発揮します。

社会・政治などによる複雑性

経営資源が、物理的な組み合わせのみならず、社会的な要因にて存在しているかどうかを指します。近年であればテクノロジー革命を含んだインターネットの隆盛であったり、古くからは国内資源の有無であったりと、さまざまな場合があります。

特許等による制約

文字通り、特許による経営資源(知的財産)の保護の有無です。他社が利用しようとする場合には特許使用料が必要となるため、コスト面で大きな模倣困難性が生じます。

4. 組織(Organization)

企業の有する経営資源を有効に活用出来る組織かどうかを分析する要素です。これまでのチェックで「経済価値」と「希少性」が高く、「模倣困難性」のある企業であることが分析できたとしても、それを十分に活用できる組織体制が整っていないと、事業継続はできません。

企業による組織体制の確立度合いや、企業文化の醸成、意思決定の速さや柔軟性などが分析対象となります。

VRIO分析のやり方

基本的には、「経済価値→希少性→模倣困難性→組織」の順に分析を行います。要素ごとの分析結果による状態は、以下の表の通りです。

VRIO戦略.jpg

それぞれをYes、Noで回答することにより、「競争劣位、競争均衡、一時的な競争優位、持続的な競争優位」のどれかの状態に位置付けることができます。自社を分析し、最も競争力が優位な状態に保つためには、4つの要素が全て揃う必要があります。

VRIO分析の具体例

たとえば模倣困難性においては、しばしば自動販売機の事例で説明されます。日本の清涼飲料水ビジネスにおいては、自動販売機の台数が大きな影響を及ぼしています。

日本ではコカ・コーラ社が圧倒的な優位性を保っており、MBAにおけるケース学習においても、しばしば紹介されます。

また、希少性の例としては、ITベンダーのケースがわかりやすいです。システム自体は模倣されることが多いため、ERPパッケージなどの組み合わせによって希少性を高め、競合優位に立つ場合もあります。

VRIO分析は自社の競争力を図れるフレームワーク

VRIO分析を行う際の順番は①分析対象となる経営資源の特定→②経済価値の分析→③希少性の分析→④模倣困難性の分析→⑤組織の分析です。それぞれの段階で「それが自社に備わっているか。備わっていなかったら何を加えればよいか」という視点で分析してみましょう。

VRIO分析は個々の要素に分けることにより、全体像が理解しやすくなります。
それぞれの要素ごとに自問自答し、自社が競合優位にあるかどうかを知ることができます。

また、VRIO分析を理解するためには、その上位概念である3C分析の不可欠です。
VRIO分析は、あくまで3C分析の「自社分析」に過ぎません。その他の分析方法にも目を通しておくようにしましょう。

VRIO分析のテンプレート(パワーポイント形式)

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