TwitterやInstagramなどのソーシャルメディアは日常生活に必要不可欠となっており、個人間の近況共有だけでなく企業のマーケティング活動に利用するケースも少なくありません。

その一方、ソーシャルメディアの投稿によって、炎上やユーザー間のトラブルに発展するケースも見られます。こうした事態を防ぐためにも、多くの組織・企業はソーシャルメディアポリシー・ガイドラインを定めています。

今回は、ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーを作成する目的や作成ポイント、押さえておきたい10項目を解説します。また、作成時に役立つ5つの事例をご紹介します。

目次

  1. ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーとは
  2. ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーを作成する3つの目的
  3. ソーシャルメディアガイドライン・ポリシー作成で押さえたい10項目
  4. ソーシャルメディアガイドライン・ポリシー作成時のポイント
  5. ソーシャルメディアガイドライン・ポリシー5事例
  6. ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーを作成してマーケティングの幅を拡げよう

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ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーとは

ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーには、社内外向けに以下の3つに分けられます。

  • ソーシャルメディアガイドライン
  • ソーシャルメディアポリシー
  • コミュニティガイドライン

ひとつずつ解説します。

ソーシャルメディアガイドライン

ソーシャルメディアガイドラインとは、企業や従業員がソーシャルメディアを利用する際の指針ルールを解説した、社内の人向けの文書です。

ソーシャルメディアポリシー

ソーシャルメディアポリシーとは、企業がソーシャルメディアを利用する際のスタンス心構えを、社外の人向けに解説した文書です。

コミュニティガイドライン

コミュニティガイドラインとは、企業がソーシャルメディアを運用する上での免責事項・禁止事項などを、社外の人向けに解説した文書です。

ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーを作成する3つの目的

ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーを作成する目的は、次の3つが挙げられます。

  • 【対社内】投稿の品質を担保
  • 【対社内】ソーシャルメディア運用における属人化の防止
  • 【対ユーザー】炎上やトラブルの防止

【対社内】投稿の品質担保

ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーを作成する目的として、対社内向けに挙げられるのが、ソーシャルメディアへの投稿の品質を担保することです。

ソーシャルメディアTwitterやInstagramのように、気軽な投稿ができるものが多いため、担当者が自己判断で投稿した結果、企業のイメージに悪影響を及ぼしてしまうリスクがあります。

実際、一迅社より発行されている漫画作品『ゆるゆり』では、担当者が不用意な発言を繰り返したことで、ユーザーから批判が相次ぎ発生。責任者である編集長や原作者が謝罪する事態にまで発展するといったトラブルがありました。

ソーシャルメディアガイドラインを定め、社内の方針やルールを社員に行き渡らせておけば、投稿の品質を担保しやすくなり、上記のような事態を防ぐことができるでしょう。

参考:
「ゆるゆり」コミック版公式Twitterアカウントが開設も、問題発言で早速担当者が交代 |
ねとらぼ

【対社内】ソーシャルメディア運用における属人化の防止

対社内向けには、ソーシャルメディア運用における属人化を防ぐことも、ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーを作成する目的に挙げられます。

少人数で1つのSNSアカウントを運用すると、属人化しやすくなります。特定の従業員だけが進捗管理をしていると、急な休みでソーシャルメディアの運用がストップしてしまうこともあるでしょう。

また、トラブルが発生しても対応できなかったり、個人で判断しさらなる悪化を招くリスクも考えられます。

事前にソーシャルメディアガイドライン・ポリシーを作成し、指針やルールを明確にしておくことで、属人化の防止につながるでしょう。

【対ユーザー】炎上やトラブルの防止

ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーは、対ユーザー向けには、ソーシャルメディア上での炎上やトラブルの防止に役立ちます。

例えば、2016年4月にNHK(日本放送協会)の公式アカウントは、それまで行っていたフォローされたユーザーをフォローする「フォロー返し」を今後行わないと発表しました。

理由は「NHK公式アカウントがユーザーをフォローすることは、個々の意見に対する支持・賛同ではないか」という批判があったためです。

このように自社としては何気ない行動であっても、ユーザーから疑念を持たれてしまうリスクもあります。

そのため事前に自社のアカウントが投稿する内容やフォローの方針を明確にしておけば、炎上やユーザーとのトラブル防止につながります。

参考:
NHKがTwitterの「フォロー返し」を取りやめに なぜ? 広報に聞いた |buzzfeed

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ソーシャルメディアガイドライン・ポリシー作成で押さえたい10項目

ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーを作成する際、押さえておきたい10項目について解説します。

基本方針を定める

企業として、どのようなスタンスでソーシャルメディアと向き合っているか、基本的な考え方や方針について定めます。

機密情報の保護にふれる

自社の経営に関する情報や従業員、顧客の個人情報、知的所有権といった機密情報を、ソーシャルメディア上で発信しないことを定めます。

第三者における権利保護にふれる

他人の著作権や肖像権、商法権などの第三者の権利を尊重すること、コンテンツの二次利用は関係法令を遵守することについて定めます。

透明性を保障する

金銭を支払って意図的にソーシャルメディア上の口コミをコントロールするといった、やらせ行為をしないことを保障します。また、金品やサービスを提供した場合は、投稿で事実表明することを定めます。

誹謗中傷を禁止する

特定の個人や集団、民族、思想などへの誹謗中傷を行わないと定めます。

真偽が不明な情報発信を禁止する

真偽が不明な情報をソーシャルメディア上で発信しないと定めます。

自社に関する情報発信を規制する

自社に関する情報発信をする際は、発信の方法やタイミングを管轄の部署・人の指示に従うと定めます。

個人の責任を明確にする

従業員が個人的に発信するソーシャルメディアの投稿は全て本人の責任とし、所属している企業は一切関係ないことを明確にします。

ソーシャルメディアの特性にふれる

ソーシャルメディアでの発信は瞬時に世界中に拡散され、取り消すことができないことから、真摯な姿勢でソーシャルメディアを利用すると明記します。

ソーシャルメディアガイドライン・ポリシー作成時のポイント

ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーを作成する時のポイントを3つお伝えします。

社内で体制を整える

ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーを作成する際、どの部署がどのように管理・運用するのかを明確にします。

必要な部門やーザーと交流が多い担当者など、対象範囲を設定すると良いでしょう。合わせて役職者の誰を巻き込むのかも検討すると、よりスムーズな運用につながります。

社内体制の整備は、ガイドライン・ポリシーに権威性を持たせるためにも、作成前に行うのが鉄則です。

スタッフにヒアリングを行う

ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーの対象範囲が決まったら、対象者を中心に、以下の内容をスタッフにヒアリングを行います。

  • 現状の活用方法
  • 関係部署との連携度合い

スタッフにヒアリングを行うことで実情を踏まえられるほか、どのように社内に浸透させるかまで含めたガイドラインやポリシーが作成しやすくなります。場合によっては理解・運用促進のために、研修やe-ラーニングが必要なこともあるでしょう。

ガイドラインやポリシーを形骸化させないためにも、社内でいかに浸透させるかという視点も踏まえて作成することが大切です。

トラブル対応ルールを事前に定める

万が一のトラブル時に迅速な対応を行うため、ルールを事前に定めておきましょう。

運用担当部署以外の部署(法務や広報など)とどのように連携を図るのか、トラブル発生時のフローを明確にしておくのが有効です。経営層が対処するパターンでも同様です。

いざという時の迅速な対応につながり、トラブルを小さく抑えられる可能性が高くなります。

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ソーシャルメディアガイドライン・ポリシー5事例

では実際にソーシャルメディアを活用し、ソーシャルメディアポリシーを公開している企業・省庁の事例を紹介します。運営や考え方に合わせ、記載されている内容の違いを意識しながら見てみましょう。

デジタル庁

Twitter、noteのアカウントを開設しているデジタル庁では、公式ソーシャルメディア運用ポリシーをまとめています。

「デジタル改革に関係する会議の開催情報」「デジタル庁が実施または関連する各種施策等の取組」など、発信情報について細かく言及しているのが特徴的です。

また、利用者による書き込みの削除について記載してあり、誹謗中傷などのトラブルや炎上を避けるためのガイドラインとして参考になります。

5.利用者による書き込みの削除等
以下の各項のいずれかに該当する場合、予告なく投稿の削除またはアカウントのブロック等を行う場合がありますので、あらかじめ御了承ください。

・法令等に違反する内容、又は違反や助長をするおそれがあるもの
・特定の個人・団体等を誹謗中傷するもの
・ 政治、宗教活動を目的とするもの
・著作権、商標権、肖像権等、デジタル庁又は第三者の知的財産権を侵害するもの
広告、宣伝、勧誘、営業活動、その他営利を目的とするもの
・人種・思想・信条等の差別又は差別を助長させるもの
・公の秩序又は善良の風俗に反するもの
・虚偽や事実と異なる内容及び単なる風評や風評を助長させるもの
(中略)

引用:デジタル庁 ソーシャルメディア

NHK

NHK(日本放送協会)では、インターネットサービスにおける利用規約のデジタルプラットフォームの中でガイドラインをまとめています。

【NHKインターネットサービス利用規約(一部)】
第12条(NHKソーシャルアカウント
1.NHKソーシャルアカウントは、そのNHKソーシャルアカウントが利用しているソーシャルメディアの利用を推奨するものではありません。
2.NHKソーシャルアカウントは、それぞれの運営目的をNHKソーシャルアカウント内に明示しています。
3.NHKソーシャルアカウントは、NHKの都合により予告なく終了することがあります。また、利用しているソーシャルメディアの都合等に伴い終了することがあります。
4.NHKは、ソーシャルメディアに関する瑕疵・バグ、トラブル、誤認、サービス停止等、およびNHKソーシャルアカウントにおける利用者同士の紛争について、一切責任を負いません。

引用:第1章 - NHKインターネットサービス利用規約 - NHK

報道機関のようなセンシティブな情報を取り扱うアカウントの場合、ユーザー同士のトラブルを誘発してしまいかねません。そのため、利用者同士のトラブルや、権利の侵害が起こった際の対応方法にも言及しているのが特徴的でしょう。

シャープ株式会社

SHARP.png

2022年12月時点で83万人以上のフォロワーを抱えるTwitterアカウントSHARP_JP(シャープ株式会社)の運用ルールをまとめたガイドラインです。

【シャープ 公式Twitterアカウント コミュニティ・ガイドライン(一部)】
1.運営について
(中略)
(5) 当社がコンテンツを発信する時間帯:平日10:00〜17:00(年末年始、土日、祝日および当社の定める休業日を除きます)。なお、それ以外の日時においても発信する場合があります。
(6) 運営期間:本アカウントは、予告なく運営を終了し、または削除される場合があります。
2.返信およびお問い合わせへの対応について
(1) 当社は、本アカウントに対するコメントの全てに返信するものではありません。
(2) 当社は、DM(ダイレクトメッセージ)によるお問い合わせに関しては、お答え致しません。
(中略)
3.フォローについて
当社は、本アカウントをフォローしていただいた全てのユーザーをフォローするものではありません。また、ユーザーが 本アカウントをフォローしていない場合であっても、当社がフォローさせていただく場合もございます。

引用:シャープ 公式Twitterアカウント コミュニティ・ガイドライン

シャープ株式会社では、上記のように運営している時間や返信に関する免責事項を記載しています。同アカウントでは、他のユーザーへのリプライに対する返答やリツイートを行うことがあり、交流にも積極的に取り組んでいます。

一方、アカウントとして対応できる範囲には限度があり、どのようなユーザーや時間帯でも返信するわけではないことを詳細に伝えています。

株式会社資生堂

株式会社資生堂は、ソーシャルメディア参加の目的や心構え、社員に求めること、とシンプルな構成でソーシャルメディアポリシーを公開しています。

1. ソーシャルメディア参加の目的
資生堂グループは、ソーシャルメディアを通じて資生堂グループの情報を発信し、お客さまとの対話を心がけることで、お客さまに末永く愛される企業になることを目指します。 具体的には、以下の4つの目的で、ソーシャルメディアに参加します。

1.資生堂グループに対するお客さまのご意見・ご感想をうかがい、
お客さまが本当に望まれる商品・サービスが何かを深く理解すること。
2.資生堂グループの商品・サービスを、より多くのお客さまに知っていただくこと。
3.資生堂グループの商品・サービスにかける資生堂グループ社員の想いを、より多くのお客さまに知っていただくこと。
4.お客さまとの誠実な対話を通じて、お客さまの満足度、そして資生堂グループへの信頼とブランド価値を高めること。

引用:株式会社資生堂 ソーシャルメディアポリシー

大きな特徴は、「お客さま」という言葉を多用している点です。美を追求する資生堂株式会社ならではの価値観やブランドイメージが表現されています。BtoC企業は参考にすると良いでしょう。

株式会社サンリオ

SANRIO.png

参考:サンリオのソーシャルメディア公式アカウント一覧

サンリオでは、基本的なポリシーや行動指針から、運用ルールまでをシンプルにまとめたソーシャルメディアポリシーを公開しています。

ソーシャルメディアポリシー(一部)】
<2>行動原則
■法令・社内ルールを遵守します。
インターネットの特性を理解します。
■第三者の著作権・名誉権等の権利侵害行為を禁止します。
■社外秘情報、お客様およびお取引様の非公開情報の公開を禁止します。
■個人情報、プライバシーへの配慮をします。
<3>免責事項
■株式会社サンリオは、ユーザーにより投稿されたコンテンツについて一切の責任を負いません。
■ユーザーからいただいた投稿に対して、個別にご返信することはいたしかねますので、あらかじめご了承ください。
■株式会社サンリオは、ユーザー間、もしくはユーザーと第三者間のトラブルによって生じた損害に対する一切の責任を負いません。
(中略)
<4>削除事由
株式会社サンリオは下記に該当するユーザーコンテンツを投稿しないことをユーザーに期待し、必要に応じて該当するユーザーコンテンツを削除・修正をいたします。
■各公式アカウントに関係しない情報、または投稿

引用:株式会社サンリオ ソーシャルメディアポリシー

上記のように、行動原則として個人情報の保護や権利の侵害行為といったコンプライアンスに反する行為は行わないことを明示した上で、細かい免責事項を記載しています。

箇条書きでコンパクトにまとめられており、読みやすい内容となっています。
また、ソーシャルメディアの種類ごとに公式アカウントを一覧表示しています。運用アカウント数の多い企業は参考にすると良いでしょう。

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ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーを作成してマーケティングの幅を拡げよう

ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーは社内の運営方針を定めるだけでなく、ユーザーとのトラブルの受け皿にもなる存在です。

SNSを運用する目的や基本的な姿勢、トラブル対応時のフローなどを定めておけば、ソーシャルメディアマーケティングの幅を大きく拡げてくれる可能性があります。

今回ご紹介した内容や事例を参考に、ソーシャルメディアガイドライン・ポリシーを作成し、ソーシャルメディア運用に取り組んでみてください。

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