2010年以降、Google平均して1ヵ月に1社以上の企業買収を行っているというのは、実はあまり知られていません。

事実、2016年12月の時点でGoogleの親会社であるAlphabetが買収した企業は、大・小合わせて200社を超え、世界最大のインターネット企業としての拡大は勢いを増すばかりです。

そこで今回は、ITの巨人Googleが2017年に買収したサービス8つをまとめてご紹介します。

ますます便利になるGoogleのサービスですが、その背景にこうした買収があることを想像しながら読んでみると面白いでしょう。
  

2017年にGoogleが買収したサービス

1. Limes Audio

2016年にLimes Audioが公開したイントロダクションムービー

2017年に最初に買収したのは、1月5日に買収を発表したLimes Audioです。独自の音声圧縮技術を持つLimes Audioはスウェーデンのウメオに本社があり、ストックホルムとパロアルトにもオフィスがあります。

Googleがスウェーデンのスタートアップを買収するには4回目のことで、過去には2007年の通信インフラ企業Marrratechを1,500万ドルで買収し、Google TalksやGoogle Hangoutsの機能強化を図りました。

Limes Audio社のメインプロダクトであるTrueVoiceは、音に対するエコー相殺やノイズ縮減などを組み合わせて音質を改良する技術です。Limes AudioのメンバーはGoogle DuoとGoogle Hangoutsのチームに合流し、通話技術の向上に努めます。

参考:
Googleがビデオ会議の音質向上のためにスウェーデンのLimes Audioを買収|TechCrunch Japan
  

2. Fabric

2016年のFabricのスイス支部での基調講演

Fabricは、もともとTwitterのモバイルアプリ開発プラットフォームとして公開されたものですが、2017年1月19日にTwitterGoogleに売却をしました。

Fabricは単にモバイルアプリ開発のプラットフォームを開発しているだけではなく、クラッシュレポートシステムのCrashlyticsやモバイルアプリ分析ができるAnswersなど、関連サービスも開発しています。TwitterはFabricを2014年にモジュラーSDKとしてリリースし、50万人以上の開発者に利用されていましたが、Twitterの財政悪化を受けて、メインドメインではない部門を切り離すことを決断しました。

FabricのメンバーはGoogle Developer Productグループのモバイルインフラ部門Firebaseに参加することになりました。FirebaseではAuthenticationやAdMobといった従来のモバイル開発向けサービスに加えて、CrashlyticsやCloud FirebaseなどFabricから受け継いだサービスをベータ版で公開しています。

参考:
Twitterが開発者プラットフォームFabricをGoogleに売却、事業のスリム化を図る|TechCrunch Japan
  

3. Kaggle

3月8日にGoogleが買収したのは、データサイエンスや機械学習をオンラインでホスティングするサービスを展開しているKaggleです。当時開催中だったサンフランシスコのGoogle Cloud Next Conferenceで発表されました。

Googleはこれより1年前に、Alpha Goを使ってイ・セドル棋士を破っていますが、今回の買収によって機械学習をもっと身近にする狙いがあります。KaggleのメンバーはGoogle Cloud Platformチームに合流し、クラウドサービス上での機械学習技術の貢献に努めています。

参考:
Google、データサイエンス、機械学習のKaggle買収を確認|TechCrunch Japan
  

4. AppBridge

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Kaggleの買収翌日、Googleアプリ担当バイスプレジデントであるラグハーヴァン氏はAppBridgeを買収したことも明らかにしました。

AppBridgeは、コンテンツ移管ツールを開発しているバンクーバーの企業で、Google Driveに新機能として統合されます。

AppBridgeのメンバーはGoogle Docsチームに合流してGoogleは法人向けの販路を拡大したいと考えており、同期やダウンロード不要で社員がクラウドストレージのコンテンツを入手できる機能「Drive File Stream」や企業のデータ管理規定に沿ってデータ管理を可能にする「Google Vault for Drive」などを発表しています。

参考:
「Google Drive」がビジネス向けに強化—「Team Drives」など多数の新機能|CNET Japan
  

5. Owlchemy Labs

Owlchemy Labsの新作「Vacation Simulator」のコマーシャル動画

続いて5月10日に買収したのが、VRゲームスタジオとして有名なオースティンの企業Owlchemy Labsです。

HTC ViveやPlayStation VR、Oculus Riftなど、様々なコンテンツプラットフォーム向けにゲームを開発しており、Google傘下に加わった後もコンテンツ開発を行っています。

同社がPlayStation VR向けに販売したゲームJob Simulatorはセカンドライフを思わせるような没入感の深いゲームで、300万ドルもの売り上げを達成しています。彼らはGoogle VRチームに加わり、引き続きVRの未来に貢献していきます。

参考:
GoogleがVRゲームスタジオのOwlchemy Labsを買収|TechCrunch Japan
  

6. Halli Labs

インドでのHalli Labs買収のニュース動画

Googleの2017年における一連の買収劇の中で、最も際立っているのが、7月12日に買収したインドの企業Halli Labsです。

同社は2017年5月22日にインドのベンガル地区に設立された人工知能の企業で、起業たった1ヵ月あまりでGoogleに買収されたことになります。

買収の理由は明らかになっていませんが、同社のファウンダーであるパンカイ・グプタ氏はTwitter社でレコメンデーションやパーソナリゼーション技術開発に携わり、現在ではインドのAirbnbのライバルであるStayzillaのCTOも務めた人物です。

Halli Labsのチームの合流先は明らかになっていませんが、イギリスのDeepMind社を買収した時のように、ある程度独立を許可して開発を進めている可能性もあります。

参考
Google acquires India’s Halli Labs, which was building AI tools to fix ‘old problems’|TechCrunch
  

7. AIMATTER

8月16日にGoogleが買収したのは、人工知能を用いた自撮り加工用アプリ「FABBY」を配信しているベラルーシの企業AIMATTERです。上の動画をご覧いただければわかるように、FABBYでは色調の調整などはもちろん、髪の色を簡単に変えたり肌調を驚くほど簡単に調整することができます。

AIMATTER

GoogleによればAIMATTERのチームはGoole Photosのチームに移籍したそうです。FABBYやFABBY LOOKなどのアプリは今後も利用することができますが、メンバーはニューラルネットワークベースのプラットフォームの開発に寄与することになります。

参考:
グーグル、AI画像処理のスタートアップAIMATTERを買収|CNET Japan
  

8. Bitium

Bitiumのイントロダクション動画

9月26日には、クラウド上のアプリへのシングルサインオンツールなどを提供するサンタモニカのBitiumを買収しました。

Bitiumは企業向けアプリケーションの管理や利用のプロセスを単純化するためのプラットフォームを構築するのが得意で、Google Cloud Platformチームに参加することになります。