毎年6月の「WWDC」や9月の「秋イベント」で新商品が次々と発表され、世間を賑わせているApple。2017年5月に時価総額が8,000億ドルを突破したことでさらに盛り上がりを見せ、Appleのニュースを見ない日はありません。

そんなAppleですが、果たして2018年はどのような舵取りをするのでしょうか。

今回は、2017年にAppleが買収した9つのサービスを振り返るとともに、2018年の動きについて考えていきます。

皆さんはいくつご存知でしたか。最近ではiPhoneやiPadだけではなく、スマートウォッチのApple WatchやスマートスピーカーのHomePodでも存在感を見せているApple。きっと2017年の動きを振り返ることで、2018年の動向が垣間見えるはずです。

参考:
米アップル:時価総額が8000億ドル超え-米企業で初めて|Bloomberg
  

Appleが2017年に買収したサービスまとめ

1. Workflow

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自動化アプリといえばIFTTTが有名ですが、2017年3月22日にAppleが買収した競合の自動化アプリWorkflowです。Workflowは2014年冬にリリースが始まり、翌年の2015年にはApple Design Awardsにも選ばれたサービスです。

WorkflowはApple製品の様々なサービスを自動化するための機能もたくさん有しており、そのことが買収の決め手になったのではないかと考えられています。Workflowのメンバーは、iOSのプロダクトチームに合流したようです。

買収直後、750円で販売されていた同アプリが無料で提供されました。

参考:
無料で使える!Appleが買収したアプリの動作を自動化できるアプリ「Workflow」とは?|ferret
Apple acquires popular iOS automation app Workflow|Cult of Mac
  

2. Beddit

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Bedditはフィンランドに本拠地を置く睡眠トラッキング用のハードウェアやソフトウェアを開発する企業です。Appleは買収額非公開で5月9日にBedditを買収し、業界を驚かせました。

Bedditが提供する睡眠トラッカー「Beddit 3」は、睡眠センサーを使用して、合計の睡眠時間や呼吸速度、眠りに落ちるまでの時間や熟睡時間などを計測することができます。Appleはこの分野ではFitbitと競い合っており、Apple WatchなどでBedditの技術が活かされるのではと見られています。

参考:
アップル、睡眠トラッキングのBedditを買収—「Apple Watch」の野望に貢献か|CNET Japan
  

3. Lattice Data

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Appleは機械学習や人工知能に関する分野でも他社としのぎを削っており、2017年5月13日に人工知能関連のスタートアップであるLattice Dataを買収しました。

Lattice Dataは約20名のエンジニア会社で、AI推論エンジンを利用することで構造をもたない、いわゆる*「ダークデータ」*をより利用性が高く価値のある情報へと転換する技術を持っています。デジタル世界の70〜80%は構造化されていないダークデータだと言われており、Latticeの機械学習を用いることで、そうしたデータを整理して、利用可能なものにすることができます。

Appleがこのテクノロジーを使ってどのようなことに取り組むかははっきりしていませんが、Latticeを買収することで、ビッグデータと人工知能の両分野でテクノロジーの開発に全身することができるので、Appleは私たちが考えている以上により長期的な視点で買収したといえます。

参考:
Apple acquires AI company Lattice Data, a specialist in unstructured ‘dark data’, for $200M|TechCrunch
  

4. SensoMotoric Instruments

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SensoMotoric Instrumentsアイトラッキング(眼球視標追跡)技術の会社で、1991年にドイツで生まれました。2016年にVRヘッドセット(HTC Vive用)「アイトラッキングVRアプリ開発キット」を発表。2017年6月16日にAppleによって買収されました。

アイトラッキングは、ARやVR、MRといった技術に先見性を与えてくれるものです。

例えば、ユーザーが現在見つめている位置を調べて、その領域を最高の解像度で描画します。その際、周辺を低解像度で表示して処理負荷を軽くする*「中心窩レンダリング」*と呼ばれる技術が使われています。

Appleはこれに先立ち、5月に拡張現実を利用するためのデベロッパー向けのARKitを発表したばかりで、最高機種のiMac Pro向けにはVR開発のサポートも発表しました。

Appleがアイトラッキングの技術で1歩リードすれば、ARやVRがもっと身近になる日も近いかもしれません。

参考:
Apple acquires SMI eye-tracking company|TechCrunch
  

5. Vrvana

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続いてAppleが買収したと報道されたのが、7月に買収がすでに完了していたとされるVRヘッドセットで有名なカナダの企業Vrvanaです。

通常、こうしたニュースは情報筋を通じてリアルタイムに報道されますが、この事実が伝えられたのは11月のことでした。買収額は約3,000万ドルだとされています。

VrvanaのVRデバイスは市場に流通しているヘッドセットと同じくらいの大きさですが、前方に2つのパススルーカメラが備え付けられており、前方をヘッドセット内部のOLEDディスプレイで映し出すことが可能です。そのため、VRとARのシームレスな融合を図ることができ、より現実に溶け込んだ体験を生み出すことが可能になります。

参考:
Apple acquired augmented reality headset startup Vrvana for $30M|TechCrunch
  

6. Regaind

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2017年9月29日、次に買収が報じられたのは、コンピュータビジョンを手がけるフランスの新興企業Regaindです。同社は人工知能テクノロジーによって、顔認識や重複写真の認識、似たような写真の中で最良の写真を選ぶ機能などを提供しています。

すでに、iOSの「写真」アプリではAIを用いて写真に写っている顔が誰であるかを認識したり、撮影された場所をもとに分類を行うような技術が実装されています。今回の買収によってこうした取り組みがさらに強化されることが予測されます。

参考:
Apple quietly acquired computer vision startup Regaind|TechCrunch
  

7. init.ai

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次に報道されたのが、すでにサービス閉鎖がアナウンスされていたカスタマーエクスペリエンスを最大化するための各種ツールを取り扱うInit.aiの買収でした。こちらは、2017年10月未明に買収されたと報じられ、6人のメンバーはAppleに入社後、Siriのチームに配属されるということです。

同社が提供したサービスは、個人のユーザーがSafariや「地図」アプリ、SiriやSpotlightからメッセージを送信して、企業や店舗とコミュニケーションをとることができる機能でした。この機能からは、予約の受付や製品の購入などもできたといいます。

Init.aiを買収したことで、iOS 11とともに発表されたビジネスチャット機能にこうした機能が実装されるのではないかとも言われています。

参考:
Apple acqui-hired the team from messaging assistant Init.ai to work on Siri|TechCrunch
  

8. PowerbyProxi

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10月24日に買収が明らかになったのが、ニュージーランドでワイヤレス充電技術を開発する企業PowerbyProxiです。

Appleはこれに先立ち、新しいプロダクトである「iPhone X」「iPhone 8」「iPhone 8 Plus」でワイヤレス充電規格「Qi」を採用しています。

2007年に設立された同社は、スマートフォンなどの各種デバイスを、電源ケーブルで接続することなく充電するための技術を開発しています。同社はAppleへの合流ではなく、引き続きニュージーランドのオークランドで経営が続けられています。

参考:
アップル、ワイヤレス充電技術のPowerbyProxiを買収|CNET Japan
  

9. Shazam

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2017年の買収企業の最後として最も世間を驚かせたのが、AppleによるShazamの買収でした。

Shazamは音楽認識技術を開発・提供しており、今回の買収でShazamを取り込むことで、Apple Musicの強化を行い、先行するSpotifyを追随しようとしています。

マイクをオンにして数秒で今流れている曲名がわかるShazamは、曲名検索にとどまらず、検索した音楽コンテンツをダウンロード購入することも可能です。AppleはiOS 8ですでにSiriにShazamの機能を統合していますが、今後は標準機能としてiOSにシームレスに取り込まれることも予想されます。

参考:
Apple Buys Shazam to Boost Apple Music|Bloomberg