コントラストの原理とは2番目の提案がより魅力的に見えるように、あえて最初に興味を引かない提案をすることを指します。もともと「コントラスト(contrast)」とは同じ視野の中にある色または輝度の「差」のことを指し、主に芸術分野で用いられています。

心理的なコントラスト

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人はある判断をするとき、必ず何かと比較しています。そして人間の脳は、多くの場合絶対的な価値ではなく相対的な価値に反応してしまいます。

たとえば、はじめに軽いものを持ちあげて次に重いものを持ち上げたとします。このとき、持ち上げる順番を逆にしたときよりも、2番目に持ち上げたものを重く感じてしまうのです。
これは、脳が絶対的な重さではなく、「はじめのものとだけ」比較して重さを感じてしまうためです。
重さに限らず、はじめのものと2番目のものとを比べる場合、その2つに顕著な違いがあるほど、脳はそのちがいを実際の差異以上に認識してしまうのです。

マーケティングとコントラストの原理

上記の例はマーケティングにも応用されています。
例えば、1,000円の腕時計と5,000円の腕時計があったとします。ほかの条件を無視して値段だけを見た場合、普通は1,000円の方を購入すると思います。

しかし、5,000円の腕時計に「定価10,000円からの50パーセントオフ。今日限り」という説明を加えるとどうでしょうか。定価10,000円と割引後5,000円の差異を、脳はより一層顕著なものとして認識します。こうして、こちらを買う人を増やすことができるのです。

同じ商品の値段の差異もそうですが、2つの商品を比較させるパターンもあります。はじめに高いものを購入した人は、次に提示されるものがはじめのものより安ければ、必要以上に安く感じ、併せて購入してくれるのです。

スーツを例にしてみましょう。
スーツには一揃いになっているものと、ジャケットとパンツに分かれているものがあります。また、ワイシャツやネクタイ、ベルトのほか、冬ならばセーターやコートなど、関連商品が数多くありますね。

仮に、ある人が2万円のジャケットを購入したとします。その人に、5千円のワイシャツを勧めると、2万円のジャケットと5千円のワイシャツが購入者の脳の中で比較されて、ワイシャツの値段が実際よりも安く感じられるのです。そのため、購入者は本来買う予定ではなかったワイシャツも購入してしまうことが多くなるのです。

会話例

「高価な商品を買い求めてくるお客様には、併せてそれより低い値段のものを提示すれば、購入されやすい。それは、コントラストの原理が作用しているからである。」