Twitterやインスタグラム、Facebookなど、SNSで話題になった商品やサービスがヒットすることは珍しいことではなくなってきました。そのため企業には、「消費者の共感を得られて、人にも勧めたくなる商品作り」が求められていると言えるでしょう。

しかし、企業が商品やサービスをリリースするときは、「消費者に対してどのように商品をアピールすれば共感を得られるのか」ばかりを考えている場合が多いのではないでしょうか。

ポテトチップスでおなじみのカルビー株式会社では、商品企画の段階から広報部が参加し、マーケティング部門とともに商品開発やPR活動を行なっています。

そこで広報を務める野原和歌氏は、*「共感され反響を生み出す商品作りには、まず社内の共感を得ることから始めるべき」*だと話します。

今回は、2月に行われた「PR TIMESカレッジ」において、カルビー株式会社 コーポレートコミュニケーション本部 広報部広報課課長 野原和歌氏が語った「消費者の共感を生み出す企画力」についてレポートします。

登壇者紹介

野原和歌(カルビー株式会社 コーポレートコミュニケーション本部 広報部広報課課長)

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ロンドン大学大学院卒業後、デベロッパーで美術館開業準備を経て、ブライダルのベンチャー企業「ノバレーゼ」入社。宣伝及び広報を約10年務め、マザーズや東証一部上場にも携わる。2015年、カルビーに入社。トップ広報、マーケティング部門と連携した商品・人事制度や社内取り組みのPR、海外関連のPR、社内広報など戦略的な広報活動を主導する。2017年9月に始動した“地元の味”をポテトチップスとして商品化して現地で販売する「ラブジャパン プロジェクト」にて、各都道府県の県庁・市役所や地元を代表する機関・企業等と連動しながらPRを実施。カルビー史上最多のメディア掲載となり、消費者から大きな話題と共感を集めた。
引用元:PR・コミュニケーションのトレンドを学ぶ「PR TIMESカレッジ」

共感される商品の作り方

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参考:ラブジャパン プロジェクト

47都道府県の「地元の味」をポテトチップス化する「ラブジャパン プロジェクト」の始まりは、2016年度に発売した福島市の「いかにんじん味」からでした。いかにんじん味は福島市のみで販売を開始したにも関わらず、発売からわずか3日で売り切れる大ヒット商品となりました。

いかにんじん味は、普段ポテトチップスを買わない層からの購入も多く、お客様相談室にも約100件の問い合わせが来たというほど大反響だったそうです。

野原氏は、共感を生み、消費者が購入したくなる商品要件について以下のように話します。

「自分たちがだけが知っている味、密かに愛しているけど全員には言えなかった味、エピソードがある味。そういったものが共感を生む商品になっていくのだと思っています。」(野原氏)

多くの人が好きそうな商品を作るというよりは、「これ、実は好きだったんだよね」と周囲に話したくなるような商品を作ることが、消費者の共感を生むのです。

カルビーでやる意味を見出すことが重要

地元のために、地元の味をポテトチップスにする。しかし、単にカルビーが地元商品を作っても「変わり種の面白い商品」で終わってしまいます。

そうならないために、野原氏は

・ターゲットのためになること
・カルビーがやる必要があること

の2点を意識したそうです。

「地域の課題として、地元の魅了ある商品が知られていないということがありました。しかし地域には、郷土料理や地元素材を生産する技術力という強みもあります。そしてカルビーには、知名度や販促力、企画力、商品化する技術力があります。これが組み合わさった時に地域を活性化できる。それが本来カルビーができることと、地元の素材を使うメリットなのではと考えました。」(野原氏)

野原氏は、カルビーと地域の強みを組み合わせることで、地域の「魅力ある商品が知られていない」という課題が解決できると考えたと話します。

「地元を愛する人と一緒に作ることでヒット商品を生み出して地域貢献に繋げる。そこに至るにはカルビーの技術力、そして地元産品、郷土愛が必要。この3つがあるものを私たちがプロジェクトとでやる。これをやっていくことで、売り上げを伸ばすことよりも、‘商品を通じてコミュニケーションがとれる’ということを、経営層やマーケティング層に対しても訴求していきました。」(野原氏)