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イノベーションを起こすためには「失敗しても死ぬことはないという感覚を持つこと」-さくらインターネット田中代表が語る経営哲学-
ホスティングサーバーを軸に事業を展開する「さくらインターネット」は、1996年の設立後、2005年に上場。
レンタルサーバー市場では大幅にシェアを獲得し、ここ数年はクラウドサーバー事業の伸びが著しく、順調に成長している様子が窺えます。
経歴だけ見ると安定した印象を受けるさくらインターネットですが、実際は激動の歴史を辿ってきたようです。
今回は、TechCrunchTokyo2016内で行われたさくらインターネット田中邦裕氏のトークセッションの様子をお届けします。
"実は倒産の危機に晒された時代があったものの、そこから見事に持ち直し、現在の状態にまで成長を遂げた"さくらインターネットの歴史を、創業者の田中邦裕氏が当時を振り返りながら語っています。
様々な困難を経て形成された田中氏の思考には、変化の激しい現代で生き延びていくためのヒントが詰まっています。
起業せざるを得ない状況だったから起業した
(写真左:西村賢氏 TechCrunch 編集長)(写真右:田中邦裕氏 さくらインターネット創業者 代表取締役社長)
田中氏:
起業って2種類あると思うんですよ。
起業したいって起業する人と、手段として起業せざるをえない人と。私は後者でした。
事業を維持するためには起業して回していくしかなかった。
最初は技術をベースにサーバーを提供したいだけでしたが、上場目指すとなると社風が変わりますよね。
技術やお客様を大事にしようというよりも、上場が目的になっちゃって。
途中までは乗り気だったんですが、ふとこれで良いのかなと思い始めて、社内で喧嘩が始まりました。
それで、こんな会社の社長やってられないって一回社長辞めたんですよ。
1998年に会社を設立した後、順調に成長して上場を目指すことになったものの、意見の対立によって2002年に一度社長職を辞任した田中氏は、技術担当としてさくらインターネットと関わることになります。
根拠のない仮説に基づいて施策を行った結果、1万ユーザーから40万ユーザーへ
2004年にレンタルサーバーサービスのリニューアルを行い、1,000〜2,000円ほどだった費用を125円まで落とし、結果1万人だったユーザー数を40万人まで伸ばしました。
価格破壊の背景にあったのは田中氏の「根拠のない仮説」と「強引さ」だったようです。
田中氏:
サービスの値段を下げて市場が広がる自信はなかったですね。当時、1万ユーザーを5万ユーザーにあげることもイメージが湧かなかったんですが、まあレンタルサーバーなら100万、200万人ぐらい使うんじゃないかという仮説しかなかった。
仮説の根拠はなかったけど、10万ユーザーついたら大儲けやぞってぐらいだったんですが、今は40万ユーザーいきましたね。
当時、「レンタルサーバーユーザー100万ユーザーぐらいいるやろ」って言ってましたけど、実際は200万ユーザーいて、そのうちの2割を取れました。
根拠のない値下げに社内からの反発はあったものの、「コミュ力のなさで強引に進めた(笑)」という田中氏。
根拠のない仮説でも、自身の直感を信じて突き進んだ結果、1社で市場シェアの2割を獲得しました。
上場後3年で債務超過に。「借りたものは返すのは当たり前」だと痛感
西村氏:
上場直後、お金の使い道についていろいろ寄り道したとか……
田中氏:
2005年に上場してものすごく会社買って、10社ぐらい子会社できたんですよね。
とにかく買える会社は全部買ってましたね。リターン考えてない村上ファンドみたいな状態です(笑)
そしたら2007年3に債務超過になって、前の社長辞めちゃいまして。
その時に社長に戻りました。来月潰れるかもしれない会社の社長になったということです(笑)
債務超過の状態で社長に復帰した田中氏は、その経験をとおして借りたお金を返せないことがどういうことかを肌で感じたようです。
田中氏:
金がないならすぐ返せとか言われてましたね。いや、金がないから返せないんだよと。
結構エグいなあと思いましたね。
でも、返せない方が悪いなと思いましたね。
その時は「借りたものは返す」という当たり前のことを学びました。
クラウドを始めたのは「時代にフィットさせただけ」
西村氏:
IRを見ると、クラウドやVPSをやっていないと、売り上げは微減傾向だったわけですか。
田中氏:
2004年にサーバーテコ入れしたんですが、その時一番売れてたのは専用サーバーだったんですよね。
今の決算みると、専用サーバーがまずい状況にあるとわかるんで内心ヒヤヒヤしますよね(笑)
ちょうどクラウドが出てきて専用サーバーが使われなくなったのが2011年頃。
その頃にクラウドを始めたらすごく伸びたんですよね。
僕らはクラウドがくるとかAIがくるとか目論んでなかった。
ただ時代にフィットさせただけなんですよね。
2009年にAWS(Amazonが提供するクラウドサーバーサービス)が上陸し、田中氏自身もその利便性に驚き、JWSのユーザー会である「JAWSUG」にも参加されています。
(参考:[はてな上場パーティでの挨拶とはてなへの想い - さくらインターネット創業日記](http://tanaka.sakura.ad.jp/2016/03/hatena-ipo.html))
AWSの体験をとおしてクラウドサービスの可能性を感じた田中氏は、自社でも2011年にクラウドサービスを立ち上げ、現在では最も成長率の高いサービスに成長しています。
とにかく成長業界へ投資すること
西村氏:
イノベーションは、どうすれば起こせるんでしょうか?
田中氏:
失敗しても死ぬことはないという感覚を作ることですね。僕も時間かかりましたけど。
成長している業界であれば、予想どおり行くかはわかりませんが辻褄は合うと思うので、成長業界にすごい勢いでお金を突っ込むのは正しいと思いますね。
液晶テレビが今の100倍売れるとかはあんまり思わないじゃないですか。
クラウドくるとか、AIくるとかわかりませんが、コンピュータは今の100倍1,000倍延びるっていうのは、ほとんどの人が同意すると思うんですよね。
100倍1,000倍成長すると思える場所にお金を突っ込むことです。
低価格で価値あるものを作っておけば、新規参入しにくい
市場の先駆者であれば、後続してくる競合と戦わなくてはいけない時期は必ず訪れます。
田中氏は、新規参入しにくくするためのポイントとして非常に合理的な考えを述べています。
西村氏:
以前、「ビジネスには利益を載せちゃいかん」とおっしゃってましたよね。
田中氏:
安くしておけばライバルが来ないですからね。
儲かるビジネスは絶対に真似されます。
なので、儲からないようにしとくのがいいですね。
大手が低価格で価値あるものを作っていくというのは重要ですね。
ゼロの状態で起業するのはもったいない
30分早く帰れる制度や、有給を二日連続で取得すると報酬が入る制度など、さくらインターネットはユニークな社内制度が多いことでも知られています。
長時間労働を良しとせず、多様な働き方を推奨する田中氏は、サラリーマンと起業家の境目がないような働き方を提唱しています。
田中氏:
ゼロイチの起業って良くないと思うんですよね。
一念発起して会社辞めてスタートアップして失敗したとか悲しいじゃないですか。
失敗を恐れると、縮こまった計画になりやすいですからね。
どこかの企業に所属しながら半身で事業やってみるというのは一つの手段かなと思いますね。
8時間や6時間で仕事を切り上げて、4時間5時間でチャレンジングなことをやってみるというのがいいかなと。
起業したい人が会社を辞めるのはもったいないと思いますね。
そういう人って絶対会社で活躍しますから。
起業しつつ、社内でも活躍してるとお互い得しますよね。
- インターネット
- インターネットとは、通信プロトコル(規約、手順)TCP/IPを用いて、全世界のネットワークを相互につなぎ、世界中の無数のコンピュータが接続した巨大なコンピュータネットワークです。インターネットの起源は、米国防総省が始めた分散型コンピュータネットワークの研究プロジェクトARPAnetです。現在、インターネット上で様々なサービスが利用できます。
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- シェアとは、インターネット上で自分が見つけて気に入ったホームページやブログ、あるいは、Facebookなど自分自身が会員登録しているSNSで自分以外の友達が投稿した写真、動画、リンクなどのコンテンツを自分の友達にも共有して広めたいという目的をもって、SNSで自分自身の投稿としてコンテンツを引用し、拡散していくことをいいます。
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- セッション
- Googleアナリティクスは、ホームページに適切に組み込めばアクセス状況を把握できる便利なサービスです。Googleが無料で提供しており、日本でも大手企業や金融機関、政府など、その利用のシェアを広げています。そこで、もっとも基本的な単位がセッションです。
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