消費者心理を日々扱うマーケティング業務は「仮説⇔検証」の繰り返しです。ひと昔前までは期初に多額の予算をかけて市場調査を行い、それをベースに年間計画を立てていましたが、Web調査やSNSのソーシャルリスニングの登場で調査はより簡便でスピーディなものになりました。

そして最近ではさらにもう一歩、消費者のホンネ(=インサイト)に近づける方法があるといいます。それは消費者のデモグラ属性やアンケートによるマインドに加え、Web上のリアルな行動データも紐づけられるマーケツールを活用すること。

これを活用すれば「特定のカテゴリや商品・ブランドなどに興味関心を抱いている人が、実際どのようなWebサイトを閲覧し、アプリを使い、どれくらいの可処分所得があって、何歳くらいで性別はどちらが多いのか」といったデータがデスクトップ上で即座に確認できます。Web調査だとアンケート実施後に新たな仮説が出てきても追加調査は現実的に難しいですが、ツールであれば追加仮説の検証も無限に実施できるので、使い込んでいくうちに自然と『ペルソナの達人』になれるのです

実際の画面を観ながらツールを追体験してみよう

実際どこまで業務に活用できそうなのか?を掴むためには利用シーンを追体験してみるのが一番。そこで「ナチュラル系ダイエット食品の拡販を考えているマーケター」になったという仮定で、消費者仮説の検証を一緒にしてみましょう。

検証したい仮説は以下です。さて、実際の消費者像はどうなのでしょうか?
●若年の女性が中心で、ダイエットはもちろん化粧品など外見のケアには抜かりがない
●積極的にカラダを鍛えるのではなく、置き換えダイエットで手軽に痩せたがっている
●ラクして痩せたい人=そんなに前向きな向上心は少なそう

ツールでは実際のモニタリングデータを基にして、主に「検索キーワード」「閲覧サイトやURL」「起動アプリ」などを自在に設定してターゲットインサイトに迫っていきます。今回は「ダイエット」というワードでの検索ユーザーにフォーカスしてみます。

STEP①:クラスターを絞り込む

ダイエット関心層と一言で言ってもジムで筋肉をつけて痩せたい人もいればサプリでラクして痩せたい人もいます。「ナチュラル系ダイエット食品」に適合しそうな人はどんな人たちなのでしょうか。

そこで「ダイエット」検索者を分類してみました。前後で検索しているキーワードの傾向でクラスタ分けされています。

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左上のウォーキング派から始まり、カロリー制限派、サプリ派、筋トレ派、食生活改善派、置き換えダイエット派の6クラスタに分類されました。ナチュラル系ダイエット食品を買いそうな人は右下のプロテインやオートミールに関心が高い「置き換えダイエット派」が近そうですね。

他にもベースフードやスムージー、おからパウダーなど最近話題にのぼることの多いキーワードにも興味が高そうです。

STEP②:デモグラ情報を確認する

早速「置き換えダイエット派」のデモグラ情報(性年代別属性)を確認してみましょう。

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やはり20-30代女性が多いようです。未婚者の方が多いのもハッキリとした特徴のようです。男性も30代は少しボリュームが多くなっており、メタボが気になる年頃での検索といったところでしょうか。

STEP③:メディア接触状況を確認する

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ターゲットとなる人たちは普段どのようなメディアに触れているのかを見ていきます。比較的若年層が多いのでテレビ・新聞の接触時間は少なめになるのは当たり前ですが、特徴的なのは「電子書籍」の接触時間の多さです。

初期仮説は「前向きな向上心は少なそう」でしたが、実際は新しいスタイルを積極的に取り入れ、さらに読書によって自らを内面的に磨いていこうという前向きな姿勢を持っていることが見えてきました。

STEP④:スマホの情報収集態度を深堀りする

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さらにスマホでの情報収集態度を見ていきます。スマホの利用は全体的に多いようですが、中でもX(旧Twitter)の利用時間が多い傾向が分かります。電子書籍の利用の多さという傾向と併せて考えると、世の中の情勢・トレンドに対しても高い関心を持っていることが推察できます。

STEP⑤:閲読サイトを確認する

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「ダイエット」の検索前後でどのようなWebサイトを閲覧しているのかを確認します。記憶に頼ったアンケートではなく、実際のアクセスログ情報をベースにしているので正確に把握できます。少し範囲を広げて検索行動の前後180分の傾向を見たり、利用しているアプリに絞って把握することも可能です。

見てみるとパーソナルジムやフィットネスなどが多く閲覧されており、「置き換えでラクに痩せたい」という初期仮説とは違ったターゲット像が見えてきました。食事はもちろん、カラダも鍛えてしっかりと理想の自分になりたいという人が多いようです。そうなると当初のクラスタ分け時点で「プロテイン」というワードの検索が多かった理由も納得です。

STEP⑥:興味関心を確認する

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次に興味関心を見ていきます。ここからは、ターゲットの傾向をハッキリと掴むためにさらに「女性」に絞ります。ダイエットはもちろん、コスメ・化粧品やヘアサロン、ネイルケアなど外見を磨くことに強い興味を持っていることが確認できました。また、ダイエットと同じくらい「読書」にも興味があることから「外見も内面もどちらも磨きたい」という心理が見えてきます。

興味関心の他にも「どのような身体の悩みを抱えているのか」や「興味のあるスポーツ」などのデータも把握できます。

STEP⑦:支出の傾向を確認する

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最後に、1カ月あたり何にどれくらいお金をかけているのか?について見ていきます。やはり興味・関心を反映して「化粧品」や「ファッション」に対してお金をかけていることが確認できました。

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さらに対象者が普段利用しているアプリの特徴や、ダイエットの検索前後3時間の間に検索しているキーワードなどの深堀りも可能。さらに詳細にターゲットの人となりが分析できます。

ペルソナの達人になろう。

普段のマーケティング業務ではだいたい初期仮説をベースに施策を進めることが多いと思いますが、実データを元に検証してみると「初期仮説が正しいことの確認」はもちろん「想定していなかった意外な一面」も同じくらい発見することができます。

デスクトップ上で時間・コストをかけずに高速で消費者の仮説⇔検証を日々積み重ねていくことで、他のマーケターからアタマひとつ抜けた『ペルソナの達人』になることができます。

ターゲット分析ツール「story bank」

今回使ったツールは以前、優秀過ぎてマーケターはもちろん事業企画など他部署でも導入が進んでいる「一課に一台」のマーケツールDockpitの記事でもご紹介した株式会社ヴァリューズが提供するstory bankというサービス。

許諾を得たモニターのリアルなWeb行動と、同一人物のアンケート調査データをマージした独自のデータが使えるためこれまで以上に詳細で複眼的なターゲット分析が可能になります。この膨大なユーザー分析データを基に、特定のページを閲覧する前後3時間のWeb行動把握など案件や仮説に合わせてあらゆる角度に切り出せるので、都度調査の手間とコストが発生するネット調査とは比べ物にならないほど業務効率がアップします。

たとえば自社サイトをstory bankで分析すれば「消費者が何を求めて訪問したか」はもちろん、自社サイト訪問前後にどのようなサイトを閲覧したのかもわかります。競合他社やベンチマークすべきサイトの把握、作成すべきコンテンツ内容など多くの示唆が得られます。

また画面を観て分かる通り高度な機能に関わらず直感的で分かりやすいUIなので、知りたい情報を最初からすぐに知ることが可能。市場にどんなターゲット候補が存在し、それぞれの候補の特徴やボリュームはどれくらいで、どのような訴求軸が適切なのかが、具体的なデータを根拠にして把握できるようになります。