限られたデータを基にターゲットや売れ行きを見定めるマーケティングは、ノウハウや技術が進化した今でも不確実性を伴うもの。「食器乾燥機が実はプラモデル好きに売れた」例など、不確実な世の中、マーケットに出してみて初めて分かることもあります。

実は今、マーケター向けのとあるツールが使いやすい上に多機能であるがゆえに商品開発はじめ事業開発や営業にも活用できると話題になっているといいます。サービスローンチから3年弱で現れた予想外の反響に、ブランドメッセージの変更を行ったという話を聞きつけ、詳しく話を聞いてみることに。

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プロフィール

榊 規宇氏 (写真右)
株式会社ヴァリューズ データマーケティングコンサルティングG マネジャー マーケティングコンサルタント
業界を問わず様々な企業に対してマーケティング支援活動に従事。複数の高難易プロジェクトを推進した実績を評価され、ヴァリューズの年間MVPを三年連続で受賞。

プロフィール

簗瀬 太氏 (写真左)
株式会社ヴァリューズ 事業企画局 広報G マネジャー
PR会社での事業企画、芸能事務所広報を経て現職。企業広報活動全般をメインとしながら、講演ディレクションやリード獲得施策などブランディング〜BtoBマーケティングまで幅広く携わる。

商品開発など他部署にウケるツールの秘密に迫る

ferret:
Q.想定外の部署にウケているマーケティングツールがあると聞いたのですが、どのような特徴を持つツールでしょうか?

ヴァリューズ 榊:
生活者のリアルなWeb行動ログデータをもとに、高精度なデータを抽出できる「Dockpit」というマーケティングツールです。許諾を得た250万人のモニターデータをもとに、自社はもちろん競合・ベンチマーク企業のサイトのリアルなアクセス解析ができたり、検索データを基にマクロな業界・市場トレンドの把握ができるのが特徴です。

モニターデータを利用するため、ブラウザの閲覧はもちろん様々なアプリのインストールや起動など具体的な行動データを基に分析が可能で、マーケティング3C分析はじめ、様々な戦略策定において判断の根拠となるデータが得られます。

ヴァリューズ 簗瀬:
リリースは2020年10月で、当初はもちろんマーケター向けに訴求していました。1年半ほど経ったあたりから、ダッシュボードの見やすさがいいと評判になって商品開発など他部署でもどんどん活用されはじめるようになってきました。世の中的なDX化の流れの中で営業や商品開発においてもデータ活用の意識が高まっていたことも背景にあります。

市場ニーズの正確な把握はあらゆるビジネスシーンに活きる

ferret:
Q.なるほど。たしかに市場環境やユーザーニーズを把握する必要があるのはマーケターに限りませんよね。具体的に商品開発等の現場ではどのように活用されているのでしょうか?

ヴァリューズ 榊:
商品開発で最も使われるのは、ユーザーニーズを詳細に把握するための検索キーワード分析機能ですね。Web上の検索行動を性年代/エリア別などあらゆる切り口で分析できるので、ターゲット層のニーズを正確に把握し、それを狙いすました商品開発が可能になります。

検索時のデータはもちろんその前後の閲覧ページの把握も可能なので、一歩進んだ検索意図の精緻な把握が可能です。通常はアンケート調査などを行う必要がありますが、Dockpitがあればそれを省いてデスクトップ上で高精度なシミュレーションを実施できるため、リサーチの時間もコストもカットできます。

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ニーズはもちろん、ターゲットの「琴線」も見つける

ferret:
Q.キーワード分析で商品開発につながった事例としては、どのようなものがありますか?

ヴァリューズ 榊:
検索キーワードの動向変化からペットフードの市場において「無添加」のニーズが高まっていることを発見し、無添加ペットフードの商品開発を拡充し、マーケットを拡大するきっかけにつながったというようなケースがあります。

検索ボリュームの変化を見ることで「一定の市場規模がありそうだ」ということは分かりますが、それだけでなく「誰に・どのように」訴求すべきかというコミュニケーション戦略の策定にも役立ちます。

ペットフードの例ですと「無添加 ペットフード」で検索している人が性年代別に分析できるので、どの年代のどのような人たちに向けて売っていけばよいかが絞れます。さらに絞り込んだターゲットの人たちが「無添加」と一緒にどのようなワードで検索しているのかを踏み込んで分析することで、メッセージの訴求軸まで定めることが可能です。

モニターデータだからこそ発見できるインサイト

様々な切り口で自由に分析できるモニターデータだからこそ、Who(誰に売るか)はもちろんWhat(何を訴求するか)まで踏み込めます。たとえば「コーヒー」の市場においては、男性はキャンプシーンで飲みたいと考える人が多く、女性は日常のリラックスシーンで飲みたいといった男女別のニーズの違いがキーワード分析で見えてくるので、それぞれに合わせたメッセージの組み立てができます。

過去3年に遡ってキーワードのトレンド変化を分析できるので、たとえばコロナ禍をきっかけに外食が減って巣ごもりにシフトしたタイミングでは、その前後での食に対するニーズの変化を調べるといった使われ方が多く見られました。

あらゆるビジネスシーンに広がるデータ活用

ferret:
Q.商品開発以外の担当者にはどのように活用されているのでしょうか?

ヴァリューズ 榊:
メーカーの営業ですと、売り場の棚を確保するためのプレゼン資料に説得力を持たせるために使われるケースが多いですね。「うちの商品の関心はこんなに伸びてきています」や「こういうターゲットにはこのような訴求が刺さります」など、検索キーワードのデータを基にすれば他社との相対比較をする際にも明確な根拠を示すことができます。

たとえばコロナ禍で巣ごもりモードに入った頃は、検索の傾向から「個食」が増えている傾向が見られたので「ひとり鍋」などの切り口で店頭のゾーンを作るような提案にDockpitのデータが使われました。

データを糸口に、マクロな市場環境を掴む

ferret:
Q.キーワード分析によるユーザーニーズ発見以外にはどんな使われ方をしていますか?

ヴァリューズ 榊:
サイトのURLを指定するだけで競合各社のサイト状況が横並びで把握できるので、マクロな市場環境の把握ができます。各社のデータをポジショニングマップに落とすことで自社がどのポジショニングを狙うべきかを絞り込むことができますし、運よくブルーオーシャンを発見できることもあるかもしれません。

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モニターデータを使って詳細に分析すると、意外と初期仮説との違いは多く見つかるものです。シニア支持が多いと思っていた競合のA社は若年層にも強く、B社は意外と女性支持が多いといったことが見えてきます。

また直帰率や滞在時間もわかるので、サイト制作の指針もデータを基にたてられます。LPなど特定のページ単位で把握できるので、他社のサイト閲覧状況を見ながら自社のPDCAのプロセスをショートカットできます。

ヘビーユーザーが見ている景色とは

ferret:
Q.他社のLPのパフォーマンスまで分かるのは驚きですね。Dockpitを使い始めるとビジネスの景色が一変しそうですが、ヘビーユーザーは日常どんな風に使っているのでしょうか?

ヴァリューズ 簗瀬:
月間使用回数が1,000回を超える会社もあり、業務のあらゆる場面でDockpitを開きながら思索し、判断の根拠にするという企業様が多いです。何か気になったことがあればデスクリサーチとしてとりあえずDockpitを開いて調べてみるなど、日常のいち業務に取り入れていただいています。見やすい画面で気づきが多く得られるので、お酒を飲みながらDockpitを叩くのが趣味という方もいるほどです。

Dockpitのデータはコンテンツづくりの素材にも活用できるので、メディアを運営している企業の導入も最近増えています。また新聞社などに記事の根拠となるデータを広報協力として提供するといったこともよくあります。

ヴァリューズ 榊:
商品開発ですと定期的に新商品のブレスト会議があるので、その100本ノック用のネタ探しに使ったりすることが多いようです。ブレストといいながらも根拠をもったアイデアが出せるので重宝されています。

あとは事業企画やマーケ担当だとSNS広告やメディアタイアップを含めた他社の出稿状況も把握できるので、他社がどのようなメディアプランニングをしているのかを推測して手を打つことができます。

新たな顧客層に合わせて、ブランドメッセージも改訂

ferret:
Q.想定外の反響に合わせて、ブランドの打ち出し方も軌道修正されたということですが?

ヴァリューズ 簗瀬:
元々はマーケターに向けて「マーケターのためのリサーチエンジン」というメッセージだったのですが、あらゆるビジネスシーンの「意志決定」に役立つツールであるという打ち出しに変更しました。

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全く新しいターゲットになりますので、まずはデータに基づかずにビジネスを進めていること自体を「課題」として認識してもらうことから始めることにしました。

その上でデータを手軽に扱えるというDockpitのベネフィットを自分ゴトとして捉えてもらうために「その意思決定に、データを。」というブランドメッセージを設定しました。商品開発も事業企画も営業も、あらゆる業務は何かしら「意志決定」に関わっているんだという気づきをコミュニケーションのきっかけにしようという狙いです。

サイトリニューアルと共に動画広告も制作しました。普段業務でデータを活用する意識が薄い層に対して、日常業務の課題意識とDockpitの手軽なデータ活用による解決シーンをリズミカルに数パターン見せて認識を紐づけすることで、様々な立場のビジネスパーソンに自分ゴト化してもらうメッセージとしました。

1課に1台、Dockpit

ferret:
Q.最後に、今後のDockpitのビジョンについてお聞かせください。

ヴァリューズ 簗瀬:
「何か業務をする時はまずDockpitを開く」という習慣を広め、マーケター以外の方々にもどんどん使われるツールになっていきたいという想いがあります。まさに1家に1台ならぬ「1課に1台」の存在になっていきたいですね。

ferret:
データに基づいた施策検討を各社当たり前にするようになれば、逆にDockpit無しで何かを考えることが著しく不利になるので「1課に1台」となる状況も見えてきますね。本日はありがとうございました。