デザインに関する法則とは違って、「UX」はどのように勉強すれば良いのか悩んでいる方もいるはずです。

しかし、UXの世界にも、知っておきたい*「基本法則」*が存在します。長年現場にいれば当たり前のことかもしれません。しかし、改めて確認することで新たな発見もあるでしょう。

今回は、UXの学習で知っておきたい5つの基本法則を紹介します。すでにご存知の方はもちろん、UXについてあまり知らない方も、ぜひチェックしてみてください。

UXの学習で知っておきたい5つの基本法則

1. 系列位置効果

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*系列位置効果(シリアルポジションエフェクト)*とは、単語リストなどのリスト形式で提示されたものを記憶する際に、そのリストの位置によって、それぞれの項目の記憶維持状態に大きな差異が見られる現象を指します。

このうち、比較的最初のほうにある単語の方が記憶されやすいことを「初頭効果」、終わりに近いものをよりよく記憶しているのを「新近性効果」と呼びます。

この理論に基づけば、「覚えにくい英単語は、最初と最後に覚えるのが効果的」ということになります。UX設計では、アプリやサイトを一番最初に開くときの「第一印象」、および使い終わってアプリやサイトを閉じる際の「最後の印象」が、そのサービス全体の印象を決めると言っても過言ではないようです。

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楽天市場での検索結果

また、サイト内で商品などを検索する際に、最初に「新着順」ではなく*「人気順」にしておく*のも理にかなっています。人気順であれば、より多くの人が気にいるであろう商品が「一番最初」に目に飛び込んでくることになりますが、「新着順」では単純に新しくシステムに登録された商品が最初に目に入ってくるので、購買意欲が半減してしまうこともあるからです。

参考:
第一印象でユーザーをファンにする!ヒーロー画像を設置するときに気をつけたい5つのこと

2. 孤立効果

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孤立効果は非常に古典的な心理学上の理論で、*「ありきたりでよく見るようなものよりも、場違いで際立ったもののほうが記憶に残りやすい」という理論です。ドイツの心理学者の名前を取って、「フォン・レストルフ効果」*と呼ぶこともあります。

新しくアプリやサービスを立ち上げる時に、他社の成功法則を参考にしてサービスを作り始めることは多いと思いますが、そうした*「型」*に当てはめて考えてしまうと、記憶に残りにくくなってしまうケースが多々あります。

例えば、昨今流行しているライブコマースでは、インフルエンサーを起用するケースがありますが、同じような土俵で戦うことで強みが分かりづらくなります。

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Amazonでは「カートに入れる」ボタンが目立っている

また、Webデザイン・アプリデザインでも「孤立効果」は重要です。デザインの調和を重視して、すべてのボタンを同系色にしてしまうのは、よくあるミスです。重要なボタンだけは色や大きさを変えるなど、*「浮く工夫」や「目立つ工夫」*をすることで、さらにユーザー体験が快適になることもあります。

参考:
CTAボタンを押させたい!たった3つのポイントを意識するだけでホームページのCV率の最大化に成功

3. マジカルナンバー7 (±2) の法則

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マジカルナンバー7 (±2) の法則は、プリンストン大学の心理学者であるジョージ・ミラー氏が提唱した、短期記憶に関する法則です。

提唱者の名前から「ミラーの法則」と呼ぶ場合もありますが、*「The Magical number seven, plus or minus two」*という論文の中でこの理論を展開したことから、学者名より「マジカルナンバー7 (±2) の法則」という名前の方がよく知られるようになりました。

上述の論文では、*「一度聞いただけで直後に思い出せるような記憶のかたまり(チャンク)は、7個前後である」*ということが明らかになりました。この個数は「情報のかたまり」で、簡単に覚えられる数字の羅列も、人の外見や特徴といった比較的大きな情報も同じように扱われ、7個前後 (±2個の変動差はある) しか覚えられないということです。

ユーザーに快適にサイトやサービスを利用してもらうUX設計においては、情報の量を絞ることが大切です。情報の量が多いと、認知負荷が大きくなる傾向にあり、選択麻痺に陥って結局購買を決断せずにアプリやサイトを離脱してしまう、という状況に陥ります。むやみやたらにコンバージョンボタンを置いたり、混乱するほどに多い複雑なナビゲーションは、極力控えるようにしましょう。

参考:
ユーザーを迷子にさせない!コンバージョン率を劇的に上げる斬新で意外な3つのポイント

4. ツァイガルニク効果

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ツァイガルニク効果とは、人間は達成したことよりも、達成できなかったことや中断していることのほうをより記憶しているという現象のことです。

一時期、テレビCMを中心に*「続きはWebで!」*というキャッチコピーが流行しました。これはツァイガルニク効果を応用したもので、「続きが気になる!」というユーザーの心理をうまく利用しています。

また、多くのニュースサイトが導入していますが、ニュース記事の一部だけ読ませておいて、*「続きは会員登録をすれば読むことができます」*とうたい会員登録に誘導するケースもあります。

Starbucks Rewards

ただし、ツァイガルニク効果を使って露骨にマーケティング活動を行うのは、近年では消費者に嫌われる傾向もあります。一方、スターバックスが始めたポイントサービスStarbucks Rewardsのように、ゲーミフィケーション要素も取り入れながら、*「一度ポイントを貯め始めたらやめられなくなった」*とさりげなく活用するマーケティング事例も出てきています。

参考:
人は未完成なものほど引かれやすい?ツァイガルニク効果を理解してユーザーの興味を喚起しよう

5. パーキンソンの法則

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パーキンソンの法則とは、1958年にイギリスの歴史・政治学者であるシリル・パーキンソンによって提唱された*「役人の数は、仕事の量とは無関係に増え続ける」*という法則です。以下の第一法則と第二法則に分けることができます。

第一法則:
 仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する
第二法則
 支出の額は、収入の額に達するまで膨張する

より一般的に言えば、*「需要は入手可能な範囲まで膨張する」*ということもできます。このことは、昨今のマーケティングでも広く応用されています。

代表例が、月額定額で利用できるサブスクリプション型の*「●●し放題」サービス*です。

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メチャカリ

例えば、メチャカリでは月額5,800円で新品の洋服が借り放題になります。ECのミカタが発表した調査では、10代が月に洋服にかける金額が5,000円未満なのは66.1%という結果であり、1品ずつ購入してもらうよりもメチャカリに加入してもらったほうが1人あたりの衣服にかける月額平均金額は上がることになります。

一方、ユーザー側も「5,800円で1回3着まで」というルールの中で決めていくので、1着ずつ購入してカート決済するよりも心理的なハードルが低くなります。

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Amazonパントリー

また、Amazonでは日用品を段ボールに入るまで詰め込むことができるAmazonパントリーというサービスを展開しています。日用品は他の商品に比べると単価が安く、1品だけの購入だと送料が余計にかかって赤字になってしまいますが、Box(段ボール)の使用率を表示して、条件をクリアするとBoxの利用料を無料にするなどの工夫を重ねることで、単価アップを見込んでいます。

UX設計では、このように*「カゴに入れるとどんどん金額が増えていく」という当たり前の設計を疑う*ことも重要です。上限を設定して、そこに合わせるようにユーザーを誘導することで、結果的に離脱も防ぎつつ、購入単価も増大させることができるかもしれません。

参考:
【永久保存】Webマーケティングに役立つ心理学用語36選