*「選択麻痺」「分析麻痺」*という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

簡潔にいえば、ユーザーの選択肢が多すぎて決断ができず、結果的に思考停止状態に陥ってしまうことです。マーケティングの世界では、そうした状況のことを「選択麻痺」や「分析麻痺」という言葉で説明します。

2000年に、心理学者のマーク・レッパー博士とシーナ・レンガー博士が、食料品店に来店する客に、次のような実験を行いました。

ジャムが陳列してある2つの棚のうち、一つの棚は24種類のジャムが陳列してあり、その代わりにこちらの棚で買えば1ドル値引きするキャンペーンを行いました。
もう一つの棚は、6種類のジャムだけが陳列してありました。もちろん割引はありません。しかし、最終的に、より少ない選択肢の陳列棚から購入するお客さんのほうが多いという結果となりました。

実は、商品の購買を促進するランディングページにも、こうした選択麻痺を引き起こす要素はたくさんあります。
もしランディングページにたくさんの選択肢があったら、コンバージョン率を下げるだけではなく、求めている商品を購入できなかったユーザーのチャンスも奪うことになります。

今回は、「選択麻痺」を回避して、コンバージョン率をあげるための、斬新で見落としがちな3つのポイントを解説していきます。

1. 目的をたった一つに絞る

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ランディングページにおいて、ユーザーのストレスが最もたまりやすいことは何でしょうか。
それは*Web制作者の目的とユーザーのニーズの「不一致」*です。

この不一致はなぜ起こるのでしょうか。
それは、ランディングページの最終的な目的が全くもって不明瞭なので、来訪者が簡単に離脱してしまうような"魅力のないランディングページになっている"からです。

もちろん、こうした不一致は、ランディングページ上に選択肢がたくさんあり過ぎるというのも原因の一つになっています。そうなると、先ほどのジャムの実験のように、ユーザーはどれを選べばいいのかわからなくなり、購入するのを諦めてしまうのです。

この不一致はコンバージョン率を下げる原因となるので、あなたの行うことは、ランディングページを「できるだけシンプルにすること」です。ランディングページでは、できるだけ選択肢を取り除いてください

□ ナビゲーションメニューは設置してはいけません。
□ コンバージョンボタン(Call to actionボタン)は1種類だけ設置してください。
□ コンタクトフォームや連絡先はできるだけ掲載してはいけません。

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カナダのランディングページ制作会社Unbounceは、どうすればWeb制作者の目的とユーザーのニーズの「不一致」を回避させられるかを解説しています。Unbounceが製作した「ランディングページ・コンバージョンコース」では、ゴールに必要のないものは一切取り除き、コースの中身を読みたいと思っているユーザーのほとんどが「ここをクリックしてコースを始める」というコンバージョンボタンを押すのに成功しています。

ランディングページで本当に成果を出したいのであれば、コンバージョンボタンは1種類に絞り、不要な情報は一切取り除いて、ユーザーの行動を喚起することに集中してください。

2. 役に立つ情報を、わかりやすく伝える

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*「情報アーキテクチャー」*という言葉を聞いたことがありますか。

情報アーキテクチャーは、もともとは「知識やデータの組織化」を意味します。一方で、Webマーケティングの世界では、「情報をわかりやすく伝え」「受け手が情報を探しやすくする」ための表現技術を指して使われます。

Webデザインの進歩によって、デザイナーの仕事は、白紙のカンバスに素敵な色合いでカラーリングし、インパクトのある写真を載せるといった、従来の平面デザインから、編集やコミュニケーション、テクノロジーなどを組み合わせてユーザー体験をデザインする仕事に変わりつつあります。
その意味では、優れた「情報アーキテクチャー」を持つホームページというのは、単に見た目に好感が持てるだけではなく、全体的に内容もまとまっており、理解しやすく、役に立ち、共感も呼びやすいコンテンツを持つページのことを指すのでしょう。

それでは、ランディングページについては、どのようなことが言えるのでしょうか。
ユーザーはできるだけ効率的で簡単にページの内容がどんなものかを理解したがっています。したがって、選択肢が多過ぎる状態だと、ランディングページ上でどういう行動をすればいいのか素早く判断ができません。さらに内容も理解しづらいものであれば、ついにはユーザーはページから離脱してしまいます。

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ビデオホスティングサービスWistaのサインアップページは非常に参考になります。何をすべきかが明確に示されています。まずはご覧ください。

Wistaのサインアップページの最終的なゴールは、もちろんサインアップしてWistaアカウントを作ってもらうことです。
冒頭に大きな文字で書かれた目立ったヘッドラインを見れば、すぐにそのことがわかります。サインアップを誘導するために、入力しやすいように大きなフォームを設置し、「アカウントを作る」と書かれた大きなボタンを添えて、このページのゴールを明確にしています。つまり、来訪者はこのページを見た途端、何をすべきかがわからないということはなくなります。
これが、「情報アーキテクチャー」のポイントです。フォームを入力する以外には、他の選択肢を与えないということです。

特に意識してほしいのが、*「ファーストビュー」*です。
このWistaのサインアップページを見てもわかるように、ファーストビューで余計な選択肢を排除しつつ、何をすべきかを明確にすることが、コンバージョン率アップの秘訣です。

3. 驚くほどシンプルに

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認知負荷(コグニティヴ・ロード)理論という、主に心理学の分野で研究されており、近年では教育やWebデザインの世界でも浸透している研究があります。これは、ホームページを閲覧したりWebサービスを使う時に、どれくらい心理的に負担があるのかを計算する研究です。

「認知負荷」は、ユーザーがどれくらい簡単に内容を理解し、どれくらい手短にあるタスクを完了させることができるのかと大きく関係しています。ランディングページではたくさんの選択肢が与えられれば、それだけユーザーの「認知負荷」が大きくなってしまいます。

そんな「認知負荷」ですが、2つのカテゴリーわけることができます。「内発的負荷」と「外発的負荷」です。

□ 「内発的負荷」: 未知の新しい情報を受け取ったり、自分が達成したいことが頭の中をよぎっているときに起こる負荷
□ 「外発的負荷」: 心の余裕を使い果たしているのに、ホームページの内容が複雑だったり難しかったりして全然理解できないときに起こる負担

当然のことながら、ランディングページで選択肢の数が多過ぎる時に起こるのは、「外発的負荷」です。
仮に、ランディングページにホームページを回遊する内部リンクが張り巡らされていたり、ナビゲーションメニューがあったとしたらどうでしょうか。そうしたリンクさえ、ユーザーがページの内容を理解する妨げとなり、ユーザーの心理的な余裕を消耗させてしまいます。

もしかしたら、言い過ぎかもしれませんが、コンバージョンボタン以外はすべて「外発的負荷」を引き起こしてしまう可能性もあります。「認識負荷」が高まってしまうと、ユーザーはランディングページにおける最終的なゴールに集中することができなくなってしまい、結果的にコンバージョン率が下がってしまいます。

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「外発的負荷」をなるべく減らすには、どうすればいいのでしょうか。
そのお手本となるのが、自宅の不動産価値を査定するTruliaです。Truliaのランディングページは、まさに「外発的負担」となる要素を一切排除しています。
このランディングページの最終的なゴールは、ユーザーに自分のメールアドレスを送信してもらうことです。アドレスを入れるインプットボックスと、送信ボタンだけです。つまり、このランディングページにたどり着いたユーザーが次に行う行為は、たったのこれだけです。

(1) 自分のアドレスを入力する
(2) 送信ボタンを押して、回答を得る

ランディングページのゴールを遂行するのにかかる時間は、たったの数秒です。もちろん「認知負荷」はほとんどかからないでしょう。

まとめ

選択肢を与えれば与えるほど、コンバージョン率を下げることが理解できたかと思います。

心理学は、Webデザインの中でも大きな役割を担っています。もちろん、ユーザーが訪れるランディングページのデザインもその中に含まれています。ユーザーがたくさんの選択肢に直面したら、ユーザーは次にどんな行動をとるだろうか、どんな気持ちになるだろうかを想定することは、非常に大切です。

選択肢が少なくなれば、それだけユーザーが次にとるべき行動も明確になります。昨今ではWebデザインの潮流としてミニマルなデザインが好まれますが、実はシンプルなほうがコンバージョン率が上がっていくのです。

ぜひ、今回のポイントを振り返って、ご自身のランディングページを見直すきっかけにしてみてください。