「課題整理」から始めるインサイドセールス。既成事実としてのパートナーシップ形成術
インサイドセールスで見込み顧客との関係性を構築するには、相手の状況に応じたアプローチが重要です。特に、「仕事中に何となく感じたモヤモヤを解消しようと資料をダウンロードした」という初期段階の見込み顧客に対しては、課題を一緒に特定していくアプローチが適しています。
セールスについて研究を行った英国の行動心理学者ニール・ラッカム氏は、見込み顧客の潜在的なニーズを4つのステップで引き出す技法「SPIN話法」を提唱しました。SPIN話法においても、前半の2つのステップで見込み顧客の状況を理解し、課題を明確化することが推奨されています。
【SPIN話法の4つのステップ】
(Situation)状況質問:顧客の現状を理解する
(Problem)問題質問:顧客のニーズを明確にし気づかせる
(Implication)示唆質問:問題の重要性を認識させる
(Need payoff)解決質問:理想の状態をイメージさせる
この流れに沿って、課題を一緒に見つける作業を通じてパートナーシップを構築すると、問題解決のフェーズへとスムーズに移行し成約につなげることが可能です。
今回は、インサイドセールスの最初のアプローチとして、ヒアリングだけでなく課題整理をすることでパートナーシップを構築するテクニックを紹介します。
基礎からわかる BtoBマーケティング実践ガイド【2024年最新版】
本書は、これから“BtoBマーケティング”を本格的に行いたいという方向けに、マーケティングの戦略設計や各種施策のノウハウを網羅した資料です。
STEP①:課題の前に、まずは正しい「問題の特定」から
見込み顧客の課題を整理する前に、そもそもどのような問題を解決すべきかを確認する必要があります。この場合の「問題」とは、見込み顧客が本質的に解決したい状況のことです。そして、「問題」をクリアするために解決すべきより具体的なハードルを「課題」とします。
例えば、「新たにローンチしたサービスの売上が増えない」という問題に対して、「サービスサイトへのアクセス数を増やす」、「ランディングページのコンバージョン率を高める」などが課題です。
初期段階の見込み顧客は、問題意識が漠然としていたり、問題と課題が区別できていなかったりします。そのため、当事者には持ちにくい俯瞰的・客観的な視点からインサイドセールスがアプローチし、問題を正しく特定することが第一歩です。
問題を特定するためのポイントとして、次の2つが挙げられます。
根っこの問題を探る
見込み顧客が悩んでいる問題が、実は別の大きな問題が原因となって生じていることも一般的です。この場合、問題を生み出している「根っこの問題」を解決しないことには、根本的な解決に至りません。
例えば、担当者が「広告の反応率が上がらないので、良いクリエイティブの作り方を知りたい」という問題意識を持っていたとします。しかし、そもそもターゲットの属性と広告媒体がずれている場合、クリエイティブをどれだけ工夫しても良い反応は得られないでしょう。このようなケースでは、「ターゲット層に合う媒体選定ができていない」ということが根っこの問題と考えられます。
根っこの問題を探るために、「そもそもなぜその問題が起きているか?」を意識しながら、見込み顧客とコミュニケーションを取りましょう。
問題の絞り込み
見込み顧客へのヒアリングでいくつも問題が挙がる時は、同じ問題を別のアングルから捉えているケースがあります。その場合、抽象度を上げて問題を捉えなおし、1~2個に絞り込むことがポイントです。
例えば「残業時間が減らない」、「業務効率が上がらない」、「離職率が高い」という3つの問題は、いずれも「仕事を効率的に進める職場環境が整っていない」という問題にグルーピングできる可能性があります。
問題を絞り込むと、リソースを集中させ、効率的に解決することが可能です。また、インサイドセールスにおいては解決策を提案しやすくなるというメリットもあります。見込み顧客が抱えている問題の数が多い場合、それらをグルーピングできる視点がないか考えてみましょう。
STEP②:特定した問題を具体的に解決するために「課題」を設定する
次のステップは、見込み顧客の問題を解決するための課題設定です。「課題」とは、問題を解決するためにやるべきことを具体化した取り組み事項を指します。
インサイドセールスにおけるヒアリングはあくまで営業業務のため、自社サービスへの落とし込みも意識しながら整理することが重要です。ただし、担当者が抱える問題が自社サービスと合わない場合、無理に売り込もうとする必要はありません。無理に売り込んで成約したとしても継続にはつながらず、LTVは低くとどまってしまいます。
見込み顧客の課題を整理するためのポイントは次の3つです。
粒度を揃える
問題解決のために設定する課題は、粒度を揃えましょう。全社的に取り組むべき事項や、担当者が個人レベルで取り組めることなど、課題の粒度がバラバラだと解決のイメージがつかみにくくなってしまいます。
例えば、「仕事を効率的に進める職場環境が整っていない」という問題に対する良い課題設定・悪い課題設定は下記の通りです。
組織レベルの課題は、担当者がクリアできるレベルまで分解し、具体的に設定することで粒度を揃えましょう。
論理的な整合性をとる
課題を整理する2つ目のポイントは、課題同士の論理的な整合性をとることです。問題を解決するために課題設定の抜け漏れや、課題同士の重複・矛盾がないか確認しましょう。
例えば、業務効率を高めたいにもかかわらず、情報共有の頻度を必要以上に多く設定してしまうとかえって手間がかかり逆効果です。この場合、手間をそれほど増やさずに、情報共有をスムーズに行うための適切な課題を設定する必要があります。
担当者が心から納得できるように整然と課題整理してこそ、取り組みのモチベーションを高めることが可能です。
「まとめて一気に解決」感を
整理した複数の課題が、自社サービスによって一気に解決できるものとして見せられると、商談につながりやすくなります。全てではなくても、いくつかが自社サービスによってまとめて解決できるとアピールできるように、意識して課題を整理しましょう。
単に見込み顧客の問題や課題をヒアリングするだけでなく、自社サービスの強みや導入のメリットも念頭においてコミュニケーションをすることが重要です。複数の課題を洗い出した上で、それらの解決策としてサービスを提案すると、見込み顧客の興味度を高められます。
「既成事実」としての、パートナーシップ
見込み顧客の問題意識や課題が明確な場合は別として、初期段階の場合は自社サービスを売り込む前の「地ならし」として、課題整理を一緒に進めることがインサイドセールスのコツです。ヒアリングを通じた課題の整理が終わった時には、既成事実として顧客とのパートナー関係ができあがります。
今回紹介したポイントを押さえて、課題整理を通じた見込み顧客との関係性構築にぜひ取り組んでみてください。
▼インサイドセールスのロープレ手法を公開!
インサイドセールスの効果的なロープレ手法とは?ferret Oneでの実施内容を公開!
BtoBマーケティングの成功メソッドがわかるferret Oneブログ「One Tip」より
- ランディングページ
- ランディングページ(landing page)とは、ユーザーが検索エンジンあるいは広告などから最初にアクセスしたページのことです。「LP」とも呼ばれています。ただしWebマーケティングにおいては、商品を売るために作られた1枚で完結するWebページをランディングページと呼びます。
- 広告
- 広告とは販売のための告知活動を指します。ただし、広告を掲載するための媒体、メッセージがあること、広告を出している広告主が明示されているなどの3要素を含む場合を指すことが多いようです。
- LTV
- LTVとは、Life Time Value の略で、ある顧客1人または1社が、企業にもたらす価値の総額のことを言います。