BtoBマーケティングアカデミーの広報・PRの記事テーマは「PR視点を持てば鬼に金棒。BtoBマーケターが今持つべき「広報・PR」の素養」というものでした。では具体的に知っておくべき広報・PRの視点とは何か?について今回は考えてみましょう。

広報・PR業務といえばパッと思いつく仕事のイメージとしては「メディア対応」や「プレスリリースの作成」など、どちらかといえばパッシブな印象がまだまだ根強いのではないでしょうか。しかしそれは「PR後進国」ともいわれる日本企業においての話。大統領選などでもPRパーソンが大いに活躍する米国などでは戦略的に世論形成を仕掛けていく「攻めるPR」が主流です。

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そしてその手法は、日本においても既に大手ブランドのマーケティングでは「戦略PR」としてすっかり定着しています。

基礎からわかる BtoBマーケティング実践ガイド【2022年最新版】

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本書は、これから“BtoBマーケティング”を本格的に行いたいという方向けに、マーケティングの戦略設計や各種施策のノウハウを網羅した資料です。

BtoCマーケの歴史を変えた「戦略PR」

「攻めるPR」が大々的に広まるきっかけとなったのは、2009年にアスキー新書から出版された本田哲也氏著の『戦略PR 空気をつくる。世論で売る。』という一冊の本から。現在、BtoCマーケティングにおいては「戦略PR」的手法はすっかり定着しています。

現在、多くのブランドが商品ローンチの前に調査リリースなどの情報クリエイティブを作り、事前に「編集コンテンツ」としてプロモーションキーワード等のメディア露出を獲得したうえで本番の広告キャンペーンを投下していますが、これも戦略PRの発想に基づいています。

社会的に有意義であったり興味を惹く調査リリースという形をとることで、まずは「編集コンテンツ」としてニュートラルに情報を受容させ、認識の地ならしをした上で広告キャンペーンに引き継ぐことでメッセージ受容度を上げる、という手法です。

戦略PRの概念の普及により、それまでは別領域と捉えられていた「編集」と「広告」は統合して捉えられるようになりました。広告クリエイティブにも編集発想を取り入れる流れが加速し、博報堂ケトルなど編集的発想を持った広告クリエイティブブティックにも注目が集まるようになったのです。

同時にこの頃普及したSNSによってクチコミが可視化されるようになったため、「拡散される」ネタづくりやSNSによって育まれた「共感感性」へ訴えるアプローチに注目が集まるようにもなりました。

「戦略PR」はもちろんBtoBマーケにも有効

事前の調査リリースによる編集コンテンツの露出によって、まず商品が受け入れられる「世論・空気感」を形成し、そこに広告を投下する戦略PRの考え方はもちろんBtoBマーケでも有効です。

最近だとオフィスの電話受付代行サービスfondeskの「テレハラ」など、実際の広告キャンペーンでの活用もされているようです。

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出典:「fondesk」が年齢や肩書によって電話対応を押しつけられる状態を「TELハラ(テルハラ)」と命名

しかし、まだ事業部のBtoBマーケターにおいては知らない人も多いと思われるため、改めて基本的な方法を紹介します(注:本田哲也氏提唱の「戦略PR」そのものではなく、実際に各企業が実行している「戦略PR発想」の手法についての概観です)。

戦略PRの基本ステップ

STEP①:マーケティング調査

まず最初のステップは、調査リリースの根拠となるデータ収集です。fondeskの例では「社会人の6割以上が会社宛ての電話にストレスを感じている」という印象的なファクトを生み出す作業にあたります。
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出典:上述のプレスリリースより

ここで大事なのは、単なる調査ではなく、最終的にマーケティングコンセプトに落とすための「仮説」を実証するための調査であるということ。ニュートラルに調査を実施して、調査結果を元に何かを発見するというスタンスでは「使えるファクト」にたどり着くのは難しいでしょう。

手持ちの調査データやこれまでのマーケティング結果から確からしい仮説を絞り込み、その仮説を証明するための調査設計を行うことがポイントとなります。

STEP②:情報クリエイティブ制作

次に調査結果のデータを基に、印象的なコンセプトを軸としたメッセージをまとめる作業です。多くの場合は調査リリースという形を取ることが多いでしょう。

一般的なプレスリリースとの違いは、印象的なデータとともに「コンセプト」が提示されること。fondeskの例では「テレハラ」という言葉にあたります。これが現在の社会に対する「問題提起」となり、その「問題解決」の手段としてfondeskを位置づけるという構図になっているのです。

編集目線を持った広告クリエイティブの腕の見せどころもまさにここで、各媒体の編集部が興味を持ちそうな切り口を逆算してコンセプトを策定する必要があります。

STEP③:情報リリース

多くの場合は、プレスリリースの配信が最初の一手となります。その日のうちにプレスリリースの文面のまま各媒体に転載され、その後それを元に各媒体の編集目線を加えた記事や、取材記事が加わっていきます。

また、商品のターゲット層が多く接触している「絶対に掲載してほしい媒体」に関しては、その媒体の文脈に合わせた独自の切り口のプレスリリースを作成し、個別にアプローチすることで掲載確率を高めることができます。

STEP④:広告キャンペーン

事前の各媒体への露出によって、印象的なデータやコンセプトの周知が行き届いた段階で、TVCMなどの広告キャンペーンを実施します。

本田哲也氏の著書「戦略PR」ではこの事前の認識の地ならしのことを『カジュアル世論の形成』と呼んでいるのですが、世の中の気分がなんとなく商品まわりの問題意識に傾いたタイミングで広告を投下する。それによってニュートラルな状態で広告を打つよりも高いメッセージ受容度が期待できるというわけです。

同時に関連領域のオピニオンリーダー層やインフルエンサーも活用するなどして「多様な場面でターゲットが話題に触れる」状況を作り出すことで、メッセージの確信を深めていくことができます。

世の中に大きな「矢印」を立てる仕事をしよう

日頃コツコツと行うコンテンツマーケが顕在化したニーズを確実に捕まえるための「網」づくりなら、戦略PRは世の中の気分が向かう方向性を指し示す大きな「矢印」となるマーケティングコンセプトを打ち立て、ダイナミックに「ニーズを顕在化」する手法。

BtoBマーケティングの領域でも各社がテレビCMなどを活用するようになった現在、「終わらない昭和問題」など社会にテーゼを発信するコミュニケーション手法も活発化しています。自社ならではのテーゼを見い出す際には「戦略PR」の考え方や方法論も参考になるでしょう。

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