マーケティング部門」と「広報・PR部門」では、互いの役割、日頃から持つべき視点、取るべき行動が異なります。

その違いを踏まえたうえでマーケターが広報・PRの視点も持ち合わせていれば、“鬼に金棒”です。社会全体を俯瞰で眺め、「自社商品の効果的な見せ方は?」「今、最適なユーザー層へのアプローチは?」といった切り口がさまざまに広がるからです。

この記事では、これからのBtoBマーケターが持つべき「広報・PR」の視点について解説します。

目次

  1. 広報・PRとは?広告との業務領域の違い
  2. 社外広報と社内広報
  3. 露出獲得の基本はメディアリレーションと「プレスリリース」の作成
  4. 自社の魅力を言語化する「切り口」の見つけ方
  5. マーケターにとっても「PR視点」が今必要な理由
  6. 広報とマーケターの「共闘」が生むもの
  7. これからのPRパーソンに求められる「編集力」とは?
基礎からわかる BtoBマーケティング実践ガイド【2024年最新版】

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本書は、これから“BtoBマーケティング”を本格的に行いたいという方向けに、マーケティングの戦略設計や各種施策のノウハウを網羅した資料です。

広報・PRとは?広告との業務領域の違い

『「広告」と「広報・PR」の業務領域の違いは?』―こんな問いを投げかけられたら、答えに困ってしまう人もいるのではないでしょうか。

次表は、「広告」と「広報・PR」の違いを分かりやすく整理したものです。

広告 広報(PR)
有料 無料
広告主(企業)が原稿を書く 媒体の記者・編集者が原稿を書く
主観的 客観的
広告主(企業)がコントロールできる 企業はコントールできない

大きなポイントは、メディアとの向き合い方が違う点です。

●広告

メディアから有料で掲載枠を買う、商取引

●広報・PR

…メディアとの間で、掲載枠の売買を目的にしていない。その代わり、「この情報、良いと思いませんか?」「新規性がありますよ!」などニュース性・話題性の取引を行う。

メディアの記者は毎日、「新しいネタ」「新たな取材対象」など、新しい情報を求めています。そのような人々と情報のやりとりをすることが、広報・PRの主な仕事です。

広告代理店(広告運用担当者)もまた、日々、メディアと向き合う仕事ではありますが、広報・PRとは相手先の部門が異なります。

▼「PRの強み」についてさらに深く知りたい方はこちら!

【インタビュー連載】ferret×本田哲也 PRのいまを聞くー混同している人も多い!本田哲也氏に聞く、PRと広告の違いとは?

【インタビュー連載】ferret×本田哲也 PRのいまを聞くー混同している人も多い!本田哲也氏に聞く、PRと広告の違いとは?

PRという概念は一見マーケティングとは関係ないのではないかと思われがちです。しかし、マーケターにとって、PRの視点というのは非常に重要になるもの。この連載では、そんなPRについて、日本を代表する戦略PR専門家である本田哲也氏に伺います。記念すべき第1回目となる今回は、基本中の基本! PRと広告の違いについてお聞きしました。

社外広報と社内広報

広報・PR業務には、「社外広報」と「社内広報」があります。
それぞれ、役割は次のとおりです。

社外広報

新聞、雑誌、テレビ、Webメディアなど、報道機関を通じて会社の取り組みを世の中に向けて広く発信し、一般消費者、業界、ステークホルダーの認知を促す役割です。

<例>
・商品・サービスに関する発表(新発売、リニューアル、システム障害等)
・企業代表の年頭挨拶
・イベント登壇の告知
・新規性・話題性のある福利厚生の導入(副業制度、男性の育児休暇制度等)
・調査結果発表

社内広報

社内(社員)に向けた情報発信業務です。離職率低下・コンプライアンス強化・リスクの早期発見などの意義があり、会社の成長を後押しする役割があります。

<例>
・社内報や会報で、企業理念の浸透を図る
・事業・CSR等、会社の取り組みを発信する
・社員同士のコミュニケーション活性化

マーケティング業務にも関わる!「広報・PR」の役割

マーケティング業務にも関わる「広報」の仕事と役割

マーケティング業務にも関わる「広報」の仕事と役割

マーケティング担当は広報担当と仕事をする機会も多いのではないでしょうか。社外に向けて企業やサービスの情報を発信し価値を高める活動をするため、共通点もあり実際に業務で関わることも多い職種です。だからこそ広報の役割や仕組みを理解することで、よりスムーズなマーケティング活動が実現できます。

広報がマーケティング担当と連携すべきポイント

特に「社外広報」のうち「商品・サービスに関する広報」はマーケティング担当者と連携を取ることが多い業務です。

●プレスリリースのベストタイミングの検討

新商品発表やリニューアル時のプレスリリースは、認知獲得の重要なステップです。リリースの最適な日程を検討する中で、マーケティング部門が実施した競合調査の結果も加味するなど、密な連携が欠かせません。

●キャンペーンやイベントの集客

キャンペーンやイベントの集客強化にも、広報部門との連携が有効です。広報の力でメディアに取り上げられれば、一挙に認知を獲得でき、集客の大きな後押しになります。

●潜在顧客へのリーチ拡大

BtoBマーケティングでは「潜在層へのリーチ・認知獲得」が重要な課題です。メディア露出を獲得できれば、効果的にターゲットに向けて情報を伝えることができます。

「どんなターゲットに向けてPRすることが最適なのか?」について、マーケティング部門と広報部門の間で共有して常にズレがないようにし、最適なメディアに露出していくことが重要です。

[参考]
広報とマーケティングの違いは?仕事内容・役割の違いを現役広報が解説します | PR TIMES MAGAZINE

露出獲得の基本はメディアリレーションと「プレスリリース」の作成

メディア露出獲得の基本は、メディアリレーションとプレスリリースの作成です。メディアリレーションとは、新聞・雑誌・Webメディア等の報道機関と日頃から良好な関係を築き、自社の情報を伝えることです。

具体的なアクションとしては

・メディアキャラバンを行う(各報道機関へ訪問して、情報を売り込むこと)
・プレスツアーを行う(取材してほしい場所に報道機関を招待して視察・体験してもらうこと)
・記者発表会/記者説明会を行う
・プレスリリースを配信する

といった施策が挙げられます。

[参考]
メディアリレーションズとメディアプロモートの違いとは?関係性を築く5つのポイントと注意点| PR TIMES MAGAZINE
「メディアキャラバン」とは?広報が知っておきたい方法・効果・4つのコツ | PR TIMES MAGAZINE

「プレスリリース」は、企業が新商品・サービスの情報を効率的に拡散させたい時に有効な手法です。

各報道機関に向けてメールでアプローチする方法もありますが、「今回のリリースでは、どの報道機関にアプローチするのが最適か?」という事前検討・リストアップに時間が掛かります。

一方、プレスリリース配信サイトを活用すれば、膨大な数の媒体に対して一括で情報を届けることができます。情報の受け取り手は、毎日、新しい話題をキャッチしようと各方面にアンテナを張り巡らせているメディアの記者たちです。「面白い」「新規性がある」と思ってもらえれば、大手メディアへの掲載を獲得できます。

プレスリリース配信サイトによって「プロによる原稿チェックサービスを利用できる」「海外メディアにも配信できる」などさまざま特色があります。自社に合ったサービスを選びましょう。

▼プレスリリース配信サイト5選はこちら!

広報なら絶対に知っておきたい!プレスリリース配信サイト5選

広報なら絶対に知っておきたい!プレスリリース配信サイト5選

プレスリリースを配信することで、新聞社からWebメディアまで様々な媒体で紹介してもらえる可能性があります。プレスリリース配信サイトは、掲載可能なメディアを大量にかかえておりプレスリリース情報を一斉に展開できます。また、独自の強みを持っているプレスリリース配信サイトも多いため、自社にマッチした配信サイトを選ぶこともできます。

自社の魅力を言語化する「切り口」の見つけ方

広報・PRのミッションは、社内外に向けて情報発信をして認知・理解を獲得し、自社の企業価値を向上させることです。

そのためには、「今日の良いネタは?」と日々、新たな話題を自分から掘り起こすアクションが不可欠です。マーケティング部門、採用部門等、社内各方面にアンテナを張り巡らし、なおかつ社外とも良好な関係を築いていくための行動も欠かせません。

ferretを運営する株式会社ベーシックの広報グループでは、次のような視点・行動を重要視しています。

ネタ興し

他社のニュース含め情報収集する際は、「うちの会社やプロダクトに置き換えた場合、どう魅せられるかな?」「どんな切り口だと関心を持ってもらえるんだろう?」「競合他社はこんな打ち出し方をしているのか」と考えながらインプットする。日頃からの積み重ねで、ネタを自ら切り出す「切り口」を数多く持っておく。

報道機関側の記者との交流会

日頃から積極的に参加する。記者の興味関心を理解しておき、各報道機関の記者のアンテナに合わせたネタを、タイムリーに提供する。
 
▼マーケターが知らない広報の実態はこちら!
https://ferret-one.com/blog/about-pr

マーケターにとっても「PR視点」が今必要な理由

モノも情報も溢れている昨今、買い手側は新商品・サービスがリリースされても「この商品は自社には必要なさそうだから、スルーかな」「我が社はこんなスタイルで仕事をしているから、この商品・サービスは関係ないな」などと捉えてしまいがちです。

そこで新商品・サービス発売に際しては、「これからの仕事には、こんな商品・サービスが必要」「業務効率化とはこういうこと」など、買い手の認識を変えなければなりません。これからのマーケターは「どんどん新商品・サービスを世に知らしめること」よりも「既存の認識を変えていくこと」という役割を強く意識する必要があります

商品・サービスの新規性だけにフォーカスするのではなく、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「ESG経営」「サステナビリティ」といった社会の潮流に対しても敏感になるべきです。社会全体を俯瞰で眺め、話題・トレンドから着想を得て「自社商品・サービスを、どんな切り口でアピールしていけば、いま一番刺さるか?」という勘所が必要になります。それこそが、PR視点です。

▼マーケターが持つべきPR視点とは?

【インタビュー連載】ferret×本田哲也

【インタビュー連載】ferret×本田哲也

PRという概念は一見マーケティングとは関係ないのではないかと思われがちです。しかし、マーケターにとって、PRの視点は非常に重要なもの。このインタビュー連載では、日本を代表する戦略PR専門家である本田哲也氏に、これからのPRについて伺います。2回目は、「マーケターが持つべきPR視点とPRパーソンが持つべきマーケティング視点」です。

広報とマーケターの「共闘」が生むもの

BtoBマーケティングにおいては、ターゲットとなる潜在顧客にいかに自社商品・サービスについて知ってもらうかが重要です。顧客とのコミュニケーションでは、マーケティング部門と広報部門のベクトルを合わせていくことが欠かせません

広報・PR部門が担う大きな役割は

今、世間に刺さる切り口で商品・サービスの情報を切り出す
適切な相手にアプローチし、認知を獲得する

という2点です。

しかし広報・PR部門だけで動いていては、マーケティング部門の意図を適切に反映できないケースも起こり得ます。マーケティング部門が狙うターゲット層から認知獲得できることが、会社全体で見てベストなゴールであるはずです。そのため、広報・PR部門とマーケティング部門が互いに議論を深め合い、強固な「共闘」体制を築くことが必須だと言えます。

▼「マーケと広報の共闘」が生む「意味のある認知」とは?
https://ferret-one.com/blog/marke-and-pr

これからのPRパーソンに求められる「編集力」とは?

日本を代表する戦略PR専門家・本田哲也氏はferretのインタビューに対して「PRパーソンに必要なのは、コミュニケーション力より『編集力』」という旨を述べています。

<ポイント>

まずは、現状の顧客の状態を理解する。
 「顧客の意識をどう変えていきたいか」にフォーカスする

「どう話せば興味を持ってもらえるか」を考える。
  アプローチ先の媒体や、話す相手によって情報の切り口を変える

  
相手の興味関心を引く切り口を、いかに数多く作れるか。つまり、「情報を編集する力」が、PRパーソンの腕の見せどころです。

▼コミュニケーション能力より、編集力!? 本田哲也氏に今改めて聞くこれからの「戦略PR」とは?

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コミュニケーション能力より、編集力!? 本田哲也氏に今改めて聞くこれからの「戦略PR」とは?

日本を代表する戦略PR専門家である本田哲也氏が、日本初となるPR戦略立案に特化したブティック「株式会社本田事務所」(東京都港区)を立ち上げました。「Powered By PR~日本のPRには「戦略」が足りない。~」というキャッチフレーズを冠した、同社の狙いとは。そしてこのタイミングで新たな道を切り拓くこととなった、本田氏の想いとは?「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」(PRWeek誌)に選ばれたPRの専門家本田氏にPRに対する想いや、今後の展望について話を伺いました。

顧客と向き合いながら、社会全体を洞察する

マーケターは、顧客だけをいつでも追いかけていれば良い訳ではありません。これからの時代はPR視点も踏まえ、「今の世の中に対して、自社商品をどんな切り口でPRすればハマるか?」など、社会全体を俯瞰してその動向を常に洞察する姿勢も求められます。

もし、自社内に「マーケ部門」「広報・PR部門」の双方があり、相互連携が不足していると思ったならば、早急に共闘体制を構築しましょう。

あるいは広報業務とマーケティング業務を兼務しているならば、2つの業務の異なるポイントを改めて理解した上で、メディアとの向き合い方を再整理してみましょう。

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広報・PR業務といえばパッと思いつく仕事のイメージとしては「メディア対応」や「プレスリリースの作成」など、どちらかといえばパッシブな印象がまだまだ根強いのではないでしょうか。しかしそれは「PR後進国」ともいわれる日本企業においての話。大統領選などでもPRパーソンが大いに活躍する米国などでは戦略的に世論形成を仕掛けていく「攻めるPR=戦略PR」が主流です。