CRM(カスタマーリレーションシップ マネジメント)とは、単に顧客情報を管理するだけでなく、データをもとに購買動機を発見し、より高い価値を提供するための手法です。「CRMツール」を指すこともありますが、この記事では「手法としてのCRM」の取り組みについて解説します。

CRMによって整理した顧客データを分析すると、「顧客インサイト=顧客も気づいていない本音の購買動機」が発見できます。顧客インサイトからは、自社サービスを拡販するための新たな売り方や打ち出し方を見出すことが可能です。

この記事では、前回の記事で紹介したセグメント分析などの考え方を用いて顧客インサイトを見つけ、より高い価値を提供する方法を紹介します。隠れた動機を「推理」していくことで、「新たな購買動機」を発見し、顧客接点の強化につなげましょう。

基礎からわかる BtoBマーケティング実践ガイド【2022年最新版】

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CRMの本質を改めて理解する

CRMから顧客インサイトを分析する具体的な方法を紹介する前に、まずはCRMとは本質的にどういうものかという点について改めて解説します。

経営コンサルタントとして経験を積み、現在は金沢工業大学虎ノ門大学院の教授としてマーケティングに関する講演など行っている三谷宏治氏の定義によると、CRMとは「すべての対顧客活動の基盤」となる概念です。

CRMマーケティングやセールス、CSなどと並列に扱われるべき概念ではなく、それらの上位に位置する概念だと三谷氏は定義しています。各顧客接点で得られた情報を統合し、顧客インサイトを導くための取り組みが、CRMの本質的な意味合いです。

マーケティングやセールスなどの次に取り組む施策ではなく、各施策を通じて得られたデータをもとに購買動機を見出す取り組みとして、CRMが位置づけられます。

参考:What was/is CRM?(CRMとは何か?その本質と到達点)

CRMを実行する3つのステップ

CRMで顧客インサイトを推理するには、データを様々な視点から分析することが大切です。三谷氏はCRMに関するセッションの中で、CRMを実行し収益を高めるステップとして次の3つを挙げています。

・どの顧客LTVを狙うのか
・どんな価値を提供するのか
・どうやって価値を提供するのか

ここでは、上記の3つのステップに基づいて、顧客インサイトを探る方法を紹介します。

参考:What was/is CRM? (CRMとは何か?その本質と到達点)

どの顧客LTVを狙うのか

まずは、顧客ごとのLTVという視点から、顧客インサイトの分析を進めましょう。顧客ごとのLTVから有用な情報を得るためには、個客シェアという考え方が重要です。

個客シェアとは、市場全体ではなく、個々の顧客に対して自社商品が獲得できているシェアを指します。顧客が購入する商品のうち、どの程度の割合を自社が占めているかを分析すると、新たな購買動機を発見するヒントを得ることが可能です。

具体的な分析方法として、顧客規模(LTV個客シェアの2軸による分析が挙げられます。顧客ごとに、顧客規模と個客シェアの対応関係をグラフ上にプロットしてみましょう。

LTVが大きい顧客ほど、個客シェアが小さい」といったパターンが見られた場合は、確認されたパターンからずれている顧客をより詳しく分析することが重要です。例えば、LTVが大きいにもかかわらず個客シェアも大きいという顧客が見つかれば、その顧客の購買動機を推理することが全体の個客シェアを底上げするヒントとなります。

また、顧客規模と個客シェアからは相関関係が見出せなかったとしても、個客シェアに差が生じている別の要因が見つかるかもしれません。例えば、商品の販売経路によって個客シェアに有意な差があれば、販売経路を見直す必要があるといった仮説を立てることが可能です。

どんな価値を提供するのか

CRMを自社商品の拡販につなげるためには、データをもとに顧客インサイトを探った上で、どのような価値を提供するか考える必要があります。

顧客に提供できる価値の種類は様々です。例えば、複数の機能を持つ商品やサービスを統合し、ワンストップで提供すると付加価値が高まります。

また、顧客が求めるタイミングに合わせてサービスを提供することや、個別のニーズに合わせて商品をカスタマイズするといった価値提供も可能です。

顧客インサイトを踏まえた上で、顧客のニーズや抱えている課題を解決するという視点に立つと、提供すべき価値が考えやすくなります。また、顧客に対するアンケート調査ヒアリングなどによっても、どのような価値を提供するべきかのヒントを得ることが可能です。

どうやって価値を提供するのか

続いて、どうやって価値を提供するかを考えていきましょう。マーケティングやセールス、サービスといった顧客接点ごとに考えると、価値提供の施策が立てやすくなります。

例えば、顧客が求めるタイミングに合わせて価値を提供したい場合、顧客の行動をトリガーとした施策が効果的です。自社のWebサイトの特定のページに繰り返し訪問した見込み顧客に対して、電話やチャットなどでアプローチを行い、課題解決のサポートをするなどの施策が考えられます。

価値を提供するために、何をすれば顧客接点がより強化できるか考えることが重要です。

「顧客軸」のビジネス設計を可能にするCRM

多くの企業では、ビジネスの戦略を組み立てる際に、どの商品がどれだけ売れたのかという「商品軸」で分析を進めます。しかし、商品にフォーカスした分析からは、顧客ごとの購買動機について仮説を立てることが困難です。

一方、どのような顧客に対して商品が売れたのかという「顧客軸」でデータを分析すると、顧客インサイトを推理するヒントが得られます。そして、「顧客軸」の分析を可能にするのがCRMの取り組みです。

顧客インサイトを分析した上で、提供すべき価値や顧客接点の強化施策を立案すると、戦略の陳腐化を避けられます。日々収集されるデータをもとに、「顧客軸」でビジネスを設計していきましょう。

顧客インサイトを分析することは、新たな鉱脈を発見すること

新たな顧客インサイトの発見は、市場を変えるほどの影響力を持つ場合もあります。例えば、従来は一部の写真愛好家向けツールであった「一眼レフ」を、お洒落に楽しむアイテムとして打ち出したことなどは、新たな購買動機の発見によって市場が拡大したケースの一つです。

日々のPDCAによる0.1%単位の改善と並行して、顧客インサイト分析による「新たな鉱脈」の発見という視点も取り入れていきましょう。

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顧客を知るにはセールスに聞け! デジタル化時代のマーケ組織の立ち上げ方 2021年3月18日回」開催レポート

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BtoBマーケティングの成功メソッドがわかるferret Oneブログ「One Tip」より