BtoBマーケティングが浸透してきた今、「BtoBマーケティング」について検索すればまとめ情報は無数に見つかります。でも、マーケティング担当者が切実に知りたいリアルな体験談や等身大のノウハウは、なかなか見つかりません。

そこで本コラムでは、読者に代わって、『ferret』運営会社である株式会社ベーシック 代表取締役の秋山が、活躍するマーケターやその道のプロに突撃インタビュー。BtoBマーケ成功の秘訣を探ります。

今回のゲストは、MA(マーケティングオートメーションツール)導入支援のリーディングカンパニーである、toBeマーケティング株式会社 代表取締役CEO 小池氏です。

プロフィール

小池 智和

toBeマーケティング株式会社 代表取締役CEO
株式会社リクルートにて営業を経験後、株式会社ネクスウェイに転籍しネット広告事業の立ち上げ及び商品開発責任者を歴任。株式会社セールスフォース・ドットコムに転職後は、パートナー支援や地域スキーム構築に携わる。2015年、マーケティングオートメーションシステムの導入支援を行うために、toBeマーケティング株式会社を設立。

秋山 勝 プロフィール

株式会社ベーシック 代表取締役社長
高校卒業後、商社に入社。2001年、IT系上場企業に移り、Webマーケティング分野の新規事業企画などを手がける。2004年に「世の中の問題を解決する」をミッションに、株式会社ベーシックを創業。設立以降、50を超えるサービスを生み出し、10件以上のM&Aの実績を持つ。

MA導入支援1,200社の実績を持つ企業が語る!「MAを本当に活用できているのは2~3割」

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toBeマーケティング株式会社 小池氏

─お二人はいつ頃からのお付き合いなんですか?

小池氏:実際にお会いしたのは、一昨年です。共通の知り合いがいっぱいいて、それまで会わなかったのが不思議なくらいでしたが。

秋山:貴社も弊社もツールを使った、企業のマーケティング支援ということで、重なる部分が多いんですよね。ところで貴社の社名はやっぱり、「BtoBマーケティング」が由来なんですか?

小池氏:BtoBマーケティング」にもちょっとかけていますが、どちらかと言うと、理想のあるべき姿と現状を比べて問題解決を見出すフレームワーク、「As is / To be」の「toBe」の意味が強いですね。我々の仕事は、企業のマーケティングの目指す姿に近づくための支援をすることなので。

秋山:貴社はMA(マーケティングオートメーションツール)の導入支援の先駆者ですが、この事業を始めるきっかけは何だったんですか?

小池氏:2013年当時、在籍していたセールスフォース・ドットコム社がMAツールベンダーを買収し、日本でもMAツールをCRMと合わせて展開するようになるだろうと強く感じていました。また、明らかにエンドユーザーの購買行動や情報収集方法が急激に変化していることも感じていて、企業はますますデジタルマーケティングを強化する必要が出てくると確信していました。

とはいえ、MAツールを導入してもお客様自身で環境構築し活用し成果を出していくことは少し難しいだろう、とも感じていました。

当時は、企業のマーケティングツールの導入や活用の支援をする会社は少なかったように思います。SIerや人を派遣するタイプの会社はあっても、MAやCRMに特化して企業に伴走するような、MA導入時のコーチ的な存在の会社はないと感じていました。そこで、「じゃあ自分がやろう」と。

秋山:これまでにどのくらいの実績があるんですか?

小池氏:「MAの導入支援」という言い方をすれば、1,200社くらいお手伝いしています。弊社は、今年の6月で丸4年を迎えたんですが、コンスタントに年間約300社ほどのお手伝いをしています。

秋山:トータル1,200社! 同業他社さんはどのくらいなんでしょう?

小池氏:これまで耳にした同業者の実績では、多いところで100社くらいだったと思います。

秋山:貴社の実績は、圧倒的ということですね。では、その1,200社のうち、MAを活用できている企業はどのくらいあるんでしょうか?

小池氏:本当にMAを活用できていて成果を出しているのは、2割~3割くらいという感覚ですね。我々も導入支援をたくさんしているにもかかわらず、もう少し活用し成果を出していく企業の支援をしていく必要性を感じています。

2019年の今、「MA導入失敗談の記事」をよく見かける理由とは?

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─創業時の2015年と2019年現在では、MAの導入を検討している企業の状況もだいぶ変わっているのではないでしょうか?

小池氏:大きく変わりましたね。創業した2015年の頃は、MAの基本的な機能を説明するだけで、「おお!」という反応がもらえる、啓蒙の時期でした。

今は、導入すること自体はもうすでに決めていて、MAを使ってどう成果を出して行こうかということを具体的に考えている企業が多いです。今までデジタルマーケティングマーケティングの可視化に取り組めていなかったので、これから取り組んで行こうというステージのお客様が年々増えています。

また、以前はIT業界や不動産業界など、比較的Webサイトが充実していてWebのマーケティングとの親和性も高い業界がMA導入に積極的でしたが、今は業界でのバラつきはありません。BtoB企業の導入も増えていますし、実際に弊社の1,200社の導入実績のうち、7割がBtoB企業です。
個人を特定して商談を進める企業の中で、MAの導入を全く検討していない企業を探す方が難しいくらい、MAが欠かせないものになっているとも感じています。

秋山:その背景には、何があるんでしょうか?

小池氏:エンドユーザーの情報収集方法や購買行動が変わってきているので、企業側もデジタルマーケティングに対応せざるを得ない状況なんだと思います。また、各社でMA導入が進むなか、競合他社がMAを導入しリーチできている顧客に対して、自社がリーチできないのはまずいだろう、という理由もあると思います。

秋山:企業の組織的には、どんな変化がありましたか?

小池氏:4~5年前までは、マーケティング部門がない企業も多く、販促企画や営業部門がMA導入の窓口をしている状態でしたが、最近はちゃんとマーケティング部門のある企業が多くなってきました。そのため、デジタルマーケティングのバジェットも多くなっているし、数値的な期待・目標も大きくなっています

最近、マーケティング関連のメディアで、「MA導入が上手くいかなった企業に向けた記事」をよく見かけます。それだけ、MAを導入した企業が増えたということだと思うので、感慨深いですね。個人的には、それでもまだまだ導入企業は少ないと思っていますが、5年前と比べると明らかな変化です。

MA導入に失敗した企業に共通するのは、マーケに〇〇が足りないこと

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**[tertiary]─「MAを導入しても上手くいかなかった」ケースに共通点はありますか? [/tertiary]

小池氏: MAの導入支援を行っている弊社としては、「我々ベンダーがもっと良い支援をご提供しなくては…」という自省が尽きないんですが、強いて企業側の要因を挙げるとすれば、「マーケ部門が、もしくはマーケティング自体に、目的意識を持てなかった」という点でしょうか。

例えば、営業から、「このセミナーコンテンツをLPにして公開しておいて」と言われてマーケ部門が請け負う、みたいな。そうした企業では、まだまだ営業部門がリードしていて、マーケが営業のサポート部門としてしか機能していない印象があります。

秋山:スタメンになっていないみたいな感じですか。

小池氏:そうです。せっかくMAを導入しても、マーケがMAを使ってメールを配信するオペレーションセンターになってしまう。そうすると、やらされている感が拭えません。

と言っても、それはマーケ担当者個人の問題ではないと考えています。こうしたケースでは、そもそも会社がマーケ部門に数値や成果を期待していないことが多い。売上に繋がる商談数やリード獲得数といった数値を期待されていないから、目的意識を持つことが難しいんです。

秋山:「会社として、マーケへの期待値が低い」というのが、根本的な問題なんですかね。

小池氏:会社からの期待値が低いから目的意識が持てない、目的意識がないから成果が出ない、成果が出ないから会社からの期待が低い…という負のループですね。また、BtoB企業の場合「マーケに何を期待して、どんな成果が得られるのか」ということが、まだイメージが湧かないこともあると思います。

お客様を見ていると、企業規模や業界による違いはありませんが、「マーケに対して、数値を伴う期待を寄せているかどうか」は、成果に大きく影響します。

具体的には、ゴール設定やKPIの設定が弱いと、なかなか成果を出せません。
あえてKGIと言わずゴール設定と言ったのは、必ずしも定量的でなくて良いので、「何に向かってこの施策をしているのかという、意識の方向性を含めてのゴール設定」が必要だからです。

ゴール設定やKPIが定まらないと、マーケ担当が目的意識を持てません。
そして、マーケ担当が、「自分たちが営業数値をリードする」という意識を持てないまま施策の実行がタスクになると、マーケの仕事がつまらなくなり、MAも活用しきれないのかなあ、と思います。

秋山:ゴール設定は、MA導入時における、マネジメント層の必須タスクと言えそうですね。

小池氏:はい。でも、マーケが目的意識を持つ以前に、MAの導入目的すら現場に共有されていないこともあります。
極端な例ですが、MA導入時のキックオフミーティングでマーケの方に、「私たち何をするんでしょう?」と聞かれたこともありました。MA導入を決定した役員がミーティングに出ていなかったため、何のためにMAを導入したのか、集められたメンバーが知らないんです。

秋山:それは、めちゃくちゃ不幸なケースですね。

小池氏:どんな経営課題があって、それをどの組織でどうやって解決していくのか、という企業のバックグラウンドそのものは、ベンダーではどうすることもできないので、悩ましいです。

秋山:それはもう、経営層しかできないことですもんね。

小池氏:反対に、MA導入を決めた役員の方のツールへの期待が大きすぎて、「MAを入れればどうにかなる」と思い込んでいるケースもあります

運用者やコンテンツを作る人ではなく、ツールそのものを過信しちゃうんです。これもまた、MAを活用できないNG例のひとつ。同じMAを使っていても、運用する人やコンテンツを考える人によって、出せる成果は全く違うので、ツールを導入して終わりではなく、活用支援やコンテンツに対しても、リソースや予算を確保して欲しいですね。

MAを活用するためには、組織づくりに秘訣があった

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マーケティング部門が担う領域って企業によって違うと思うんですが、適切な範囲ってあるんでしょうか?

小池氏:マーケティング部門の担っている領域が広すぎても、狭すぎても上手くいきませんね

例えば、営業以外を全部マーケが見ているような企業もあります。イベントからパンフレット制作から広報から資料送付まで、担っている領域が広すぎるのに、担当者が少ない。営業100人に対してマーケが2人とか。
そうすると、目的意識が薄まっちゃう。次から次へとあらゆる次元のタスクが押し寄せるなかで、フォローメールやシナリオ施策やキャンペーンの目的や成果などを振り返る余裕なんてないですよね。

逆に、マーケの範囲が狭い場合も成果が出しづらい。リード獲得の広告施策やフォローメールはマーケで、営業へ繋ぐインサイドセールスチームは別部門にあって、コンテンツ制作は制作チーム。縦割り組織で、マーケ部門が担っている範囲が狭い。そういう体制の企業は結構あると思いますが、リードジェンとイベントフォローメールだけでは、マーケとして成果を証明するのは難しい。
実際のデザイン・制作までやるかは別として、Webコンテンツや動画、ebookの企画や編集などのコンテンツ企画は間違いなくマーケが行った方が良いと思います

秋山:インサイドセールス部門を設けている企業が増えていますが、インサイドセールスはマーケかフィールドセールスか、どちら側にあるべきだと思いますか?

小池氏:マーケティング、インサイドセールス、営業(フィールドセールス)の3つに分かれていても良いんですけど、強いて営業かマーケかと言えば、インサイドセールスはマーケの方に入った方が良いと思います
お客様とのきっかけをつくり、ニーズを捉えていくというマーケ寄りの役割をインサイドが担って、営業はクロージングに集中する。

秋山:うちもまさに、先日そういう組織体制にしました。元々はインサイドセールスとフィールドセールスがセットになっていたんですが、マーケ施策のフィードバックを迅速に行って改善するためにも、インサイドはマーケ側にいた方が良いよねと。

小池氏:営業(フィールドセールス)はゴールを決めるためにある部門。インサイドセールスやマーケティングがパスを上手く繋ぐことによって、営業が本来すべき仕事に集中できてパフォーマンスが上がることは絶対あると思うんです。

BtoBの購買プロセスって検討時間が長い。取引は発生していないけれど企業とコンタクトがある期間って、平気で半年~2年ありますよね。その期間に、将来のユーザーが見たいコンテンツや知りたい情報をちゃんと用意するのが、マーケの仕事だと考えています

例えば、セミナーの集客までがマーケの仕事で、来場後は全部営業の仕事になっていると、営業らしさを活かせない。すぐに商談になれば良いんですけど、すぐに商談化されるケースは25%程度。それ以外の75%の方たちを誰がどうフォローアップを担うべきかと考えれば、マーケだと思うんです。これって、物凄く重要な役割です。

今日からできる、MA活用のためのTIPS

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─MAを活用するときに、これだけは押さえておいた方が良いポイントがあれば教えてください。

小池氏:デジタルマーケをやる以上は、小さい成果を証明し続けないと意味がありません。ダッシュボードやレポートなど、数値を見るための枠組みは真っ先に用意したが良いでしょう

展示会フォローひとつとっても、展示会が終わった後にダッシュボードや可視化の仕組みをを作っていては遅すぎます。
展示会後のフォローコンテンツの準備、第1回のフォロー施策はこういうメールコンテンツで、第2回の施策はこう、落としどころはセミナー参加なのか、アポイントなのか。最終的にどのくらい商談が生まれて、受注に繋がるのか。そういったシナリオのスケッチと設定を、展示会が始まる前に最初に作り、そのシナリオやコンテンツやフォロー施策自体を、展示会が始まる前に営業含めた関係者に伝えるべきなんです。

BtoBのマーケは、当たり前ですが1~2週間じゃ結果は出ません。ファーストタッチから半年~2年、商談化や営業状況なども含めたダッシュボードを眺めていなくちゃならない。実際、弊社も1年前に出展した展示会のお客様と今、商談になっていたりします。

経営層も覚悟が必要ですBtoBのマーケ施策の結果を3ヶ月程度で見ようとしちゃダメです。購買期間が1年がかりの商材なのに、MAを導入したから3ヶ月で結果を出せと言っても出るわけがない。ただし、施策やアクションそのものを実施していないのであれば、それはしっかりと指摘すべきですね。

秋山:MA導入時に気を付けておきたいポイントは何でしょうか?

小池氏:MAのメリットはマーケを可視化できることですが、CVRやコンバージョン数、CPA、メールのCTRだけを可視化しても、あまり意味がないんです
極端な話、コンバージョン数2件でも、CPAが10万円でも、営業がそこから受注できれば良いんですよね。なのでマーケが目指す中間ゴールは、営業の商談に何件繋げるかということ。

CPAを下げることは自体は悪いことじゃありません。でも、「CPAを下げたリードから商談に繋がったの?」と聞かれて、「いえ、わかんないです」では、目的がずれてしまっています。「何でも良いからリードが欲しい」という営業は、そんなにいないと思うんですよね。
マーケは直接ゴールを決められないからこそ、最終的なゴールを生むパスを意識することが重要になってきます

秋山:フォワードの営業に、どれだけ良いセンタリングを上げられるかということですね。

小池氏:まずはチームや担当者レベルで目的意識を持ち、そして小さな成果をちゃんと証明できる枠を作る。営業にどのくらいしっかりパスができているか、営業の商談をどれくらい生んでいるか、その意識を持つことが最初の一歩になります。

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─貴社のようなMA導入時の支援会社と、上手にお付き合いするコツがあれば教えてください。

小池氏:企業は我々のような支援ベンダーにはどんどんリクエストして、支援ベンダーを巻き込んでいくのが良いと思います。支援ベンダーの担当者はお客様を支援するためにいるので。

質問するときのコツとしては、「こういうことしようと思っているんですけど、どう思いますか?」とか、「○○みたいなケースはありますか?」と、範囲や条件を絞って聞いていただけるとより良い支援を引き出せるかと思います。
範囲を限定せずに、「うちにぴったりのケースありませんか?」とざっくり聞かれた場合、もちろん頑張るのですが、お客様のビジネスや本質的な目的や状況などを外部のベンダーが認識することは難しい部分もあるので。

秋山:僕も社員に、「専門家と仕事をするときの秘訣は、我々が何をしたいかを先に伝えて意見をもらうこと」という話をします。漠然としていても答えづらいし、先にあれこれ準備してから、「どう思いますか?」と聞かれても、専門家だって否定しづらいですよね。
ほかにも、支援ベンダーを巻き込むコツはありますか?

小池氏:あとは、結果を共有してもらえるのは嬉しいですね。弊社が勝手にお客様のアカウントにログインして確認することはできないので、施策の成果はお客様しか知らないんです。それを共有していただくことで、自然と伴走的に支援できるパートナーになっていくと思います。

秋山:なるほど。最後に、小池さんにとって、マーケティングって一言で言うとなんでしょうか? “Marketing is 〇〇” で表すと?

小池氏:Marketing is 経営.”ですね。
米国ではトップ企業をはじめとして、最高マーケティング責任者であるCMOという役職が浸透してきています。つまり、マーケティングは経営ごととして捉えられるようになってきているんですが、日本ではまだまだマーケティングの存在感が小さい

CMOというポジションを作ってみたものの、実態はマーケ部門の部長と変わらない企業も珍しくありません。でも、マーケには事業をリードする力がありますし、会社全体のバリューチェーンをマーケが引っ張って行っている企業は、成長感があります。

そういった企業がもっと増えて、マーケ出身者が会社の根幹を担えるように、真の意味でのCMOが定着するように、全力で支援していきたいですね

秋山:どうもありがとうございました!

編集後記:対談を終えて

MA等のマーケティングツールがどんどん進化するなか、ツールを使う側の意図や意志が益々重要になってきている、そんなことを実感した対談でした。

マーケターはMAに使われてはおしまいです。そして、マーケターがMAを使いこなすために必要なのは、MAを深く知ることではなく、自社のビジネスや経営そのものを深く知ることなのです。