ただでさえ変化の激しい広告業界は、新型コロナウイルスの影響を受けてますます競争が激化しています。しかし、コミュニケーションデザインが軸となる広告業界では、大手の代理店・制作会社ではなくても「小粒だがピリっと辛い」提案力で勝てる会社はたくさんあります。

ただ、同じように鋭い提案を出しているのに最近どうも勝てない、というケースも増えてきているのではないでしょうか。そんなケースが続くときは、提案精度の問題ではなく、段取りの悪さや校了前のバタつきなどプロセス面の拙さで顧客に悪印象を与えている可能性があります。

エッジの利いたクリエイティブアイデアと同じくらい担当者の印象に残るのは、納品までのプロセスの安心感。さらに、仕事を進めやすいプロセスを整備する副次的な効果として、社内調整などの負担や手戻りを減らせる分、付加価値の高い作業に集中できるというメリットもついてきます。アイデアでは決して負けていないのに、どうも競合に流れることが多い場合は、自社のプロセス管理をアップデートしてみてはいかがでしょうか。

プロセス管理ツールを導入する

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今やIT業界だけでなく、あらゆる業種でSaaSを活用したビジネス効率化は当たり前になってきています。それは広告業界も同じこと。未だにエクセルのスケジュール表を都度メールで送っているとしたら、クリエイティブアイデアの前に磨くべきものがあるかもしれません。

この画面は、プロセス管理ツールとしてよく知られている「 Wrike(ライク)」の画面です。さまざまな表示形式で各タスクの状況と全体の進捗を把握したりファイルを共有できるだけでなく、マーケティング分野向けに、画像や動画をオンライン校正する機能と Adobe CC との連携機能をパッケージした Wrike for Marketers を提供している点に特徴があります。

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レビュー対象のファイルが複数あっても、どの画像のどの位置への修正かを明確にやりとりでき、後からの参照も簡単

プロセス管理ツールの4つのメリット

①赤字内容が「自然にまとまる」

各部署からの赤字の集約を、クライアントの担当者に任せてはいませんか?プロセス管理ツールを使えば、誰がいつ何を指摘したのかが自然と集約されていきます。また、ツール上に修正内容が記録されているので、第二校以降での修正確認なども断然スムーズです。

さらに、クライアントから返ってきた赤字をクリエイティブ部門の担当者が直接参照して対応できるため、社内での情報共有の負担が少なくなるメリットも見逃せません。

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「コミュニケーション」という究極の無形商材を扱う広告業務は、究極のサービス業でもあります。本来不要な作業を、「これまでそうしてきたから」という理由でクライアントの担当者に押し付けるのは常に競合と争う広告業界では得策ではありません。

②紙の出力が不要になる

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クライアントの中にはリモート体制の企業も多くなっています。自宅で原稿チェックをする際、わざわざ近所のコンビニまで出かけて出力し、赤字を入れるのはかなり大変。かといって送られてきたPDFをパワポに貼り付けて赤字を入れるのもひと手間です。

送られてきた原稿に直接修正指示を書き込めれば、クライアントはソファーの上でスマホからでも赤字チェックが可能。クライアントの「わざわざ」を可能な限り巻き取ることも、立派なクライアントサービスの一環です。

③納品までの工程をクライアントと明確に共有できる

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プロジェクト管理で使用されるガントチャートが、代理店や制作会社の行う原稿制作やイベント管理でも効果を発揮

赤字入れややりとりなどが自然とまとまるだけでなく、両社のやるべきことなどもビジュアルに整理できるため、原稿制作にありがちな煩雑感がなくなります。特に複数の関係者が絡む場合は赤字の改修漏れなどのチェックミスも減るので安心です。

また、抜け漏れがないかの心配が無くなる分、より良い制作物を仕上げるための思考にお互い集中できるので、クライアントも「いい仕事ができた」という実感を持ちやすいのです。

④収益構造の改善=クライアントにやさしいプロセスは、利益率にも従業員にもやさしい

筆者も10年以上広告会社に勤務していましたが、実際の業務時間の7割以上は制作スタッフやクライアントとの調整に費やしていました。本来時間を注ぐべき提案書のブラッシュアップや先回りした提案などに回せる時間は日中にはなく、深夜作業も多く発生していました。

クライアントにやさしい情報が自然と集約されるプロセス管理ツールを導入することは、顧客満足度を向上させるだけでなく、7割以上を占める調整業務の負担を軽減し、また過重労働の減少による収益構造の改善にも寄与する一粒で何度もおいしい改善といえます。

これからは提案力に加えてチーム力とプロセス力で受注を勝ち取る時代へ

ここまでご紹介してきたように、Wrike for Marketersを導入するだけで、会社の全案件のクライアント満足度のベースを引き上げることが可能です。また、その導入費用は一人のスーパークリエイターを雇い入れるよりもはるかに安価で、そして恐らくはるかに多くの全社利益をもたらします。

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競合他社も次々とSaaSによる業務効率化を推進する中、プロセス管理ツールの導入にあえて手を付けない理由はありません。こちらの図にまとめた通り、プロセス改善を出発点に、顧客満足度とアウトプット品質を高めて受注獲得につなげるだけでなく、働きやすい職場づくりも推進できるなど、そのメリットは多岐に渡ります。提案力だけでは勝ちきれない時代に、自社のプロセス力を高めて、継続して受注が取れる体質への転換を図ってみてはいかがでしょうか。