生成AIをビジネスで活用する機会が増えている中、著作権の扱いが気になっている方も多いのではないでしょうか。

AI生成物の著作権に関する現状のルールや、生成AIを使用する際に気を付けるべきポイントについて、法律事務所ZeLo・外国法共同事業の島内洋人弁護士に伺いました。

AI生成物に関する著作権の議論が盛り上がってきたのは2022年からですが、実はそれ以前から文化庁では継続的な議論が行われています。

プロフィール

島内 洋人 弁護士
法律事務所ZeLo・外国法共同事業 弁護士(第二東京弁護士会所属)
2017年東京大学法学部卒業、同年司法試験予備試験合格。2018年司法試験合格。2019年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2020年法律事務所ZeLo参画。多くのブロックチェーン技術を用いたビジネスのリーガルスキームの整理・構築に携わるほか、生成AIに関しても研究・実務を行い、所内「AI専門チーム」にてチームリーダーを務める。主な論文に「ステーブルコイン・DeFiとCBDC」(金融・商事判例1611号、2021年)、主な講演に「生成AIの法的論点 最新事例を交えて解説」(株式会社LegalOn Technologies、2023年4月)「生成AI×著作権 法的論点と最新トレンド」(株式会社LegalOn Technologies、2023年6月)など。

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目次

  1. AIが生成したものの著作権に関する現状
  2. AI生成物が他者の著作権を侵害するリスクについて
  3. 生成AIを使用する担当者が気を付けるべき点
  4. 生成AIで訴訟になった実際のケース
  5. AIに関する今後の法整備について

AIが生成したものの著作権に関する現状

ferret:
AIが作成した画像などの著作権について、現状の法律ではどのような扱いになっているのでしょうか。

島内弁護士:
AIによって生成されたものの著作権については、「人間の創作性が認められるかどうか」が主なポイントです。

例えば、Photoshop(Adobe Photoshop、Adobe社)などのソフトウェアを使ってクリエイターが画像を作った場合、創作を行ったのはクリエイター自身であり、クリエイターに著作権が発生します。

法律的な用語では、道具を使ったクリエイターによる「創作的寄与」が認められる場合、クリエイターに著作権が発生すると考えられます。

クリエイターが画像を作った場合の著作権

同様に、生成AIが道具として使われている場合には、創作した人に著作権が発生するというという考え方が基本です。しかし、具体的にどのようなケースに創作的寄与が認められるかは、現在も議論が続いている状況です。

例えば、Stable Diffusion(Stability AI社)やMidjourney(Midjourney社)などの画像生成ツールでは、「青い犬を描いてください」といったごく簡単なテキストをプロンプトとして入力するだけで画像が作れます。このような、単純なプロンプトを入力するだけの事例では、人による創作的寄与があるとは言えず著作権が認められないという見方が一般的です。

一方、数多くのパターンの画像をAIで生成し、その中から目的に合うものを選び取って使用するような場合については、創作的寄与が認められるかどうかの議論が続いています。

生成AIが道具として使われている場合の著作権

生成AIの著作権については整理が必要という考えが政府の基本的な姿勢です。内閣府の知的財産戦略本部が出している『知的財産推進計画』の2023年版には”具体的事例に即して整理し、考え方の明確化を図ることが望まれる”と記載があり、考え方の明確化が今後進められていく見込みです。

引用:内閣府知的財産戦略本部『知的財産推進計画2023』

AI生成物が他者の著作権を侵害するリスクについて

ferret:
AIを使用して作った画像が、他の誰かの著作権を侵害してしまうリスクはあるのでしょうか。

島内弁護士:
明確に著作権侵害となるのは、既存の作品を思い浮かべてAIにプロンプトを入力し、本質的に類似した生成物を作った場合です。ただし、作風やテイストが似ているだけの場合は、著作権の侵害にはあた











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