近年、クラフト感のある商品が話題を呼んでいます。食料品店にはクラフト紙を思わせるベージュ色のパッケージの商品や、長い工程をかけて作られた商品が並ぶようになりました。

ですが、なぜここまでクラフトブームが広がったのでしょうか? 本記事ではクラフトブームが沸き起こった背景を深掘りしていきます。

「クラフト」の意味は幅広い

従来「クラフト」とは、手作りの工芸品のことを意味していましたが、現代ではその定義が広くなっています。

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クラフト系商品の代表格であるクラフトビールは、小規模だけど伝統的な醸造所で職人が手間暇かけて作った商品であることが定義されていました。

そこからチョコレートやコーヒーなどの大手メーカーでも「クラフト」という名前が付けられ、今ではもはや「小規模」の定義がなくなっています。

現代の「クラフト」とは、手作り感あふれる商品全般のことを指すようになったのです。

大手メーカーが引き起こすクラフトブーム

小規模企業では以前よりクラフト系の商品を販売していましたが、消費者の間でクラフトブームを引き起こしたのは大手メーカーです。

明治の「ザ・チョコレート」やサントリーの「クラフトボス」など、誰でも一度はCMや店舗で見かけたことがあるのではないでしょうか?こうした大手メーカーがクラフト系商品を販売したことにより、消費者が「クラフト感」に注目し始めたのです。

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CRAFT BOSS(クラフトボス)

なぜ「クラフト感」がヒットしたのか?

今の時代はわざわざ自分で手作りしなくても、欲しいものは簡単に買えます。
そんな時代に消費者の間で「クラフト感」がなぜヒットしたのでしょうか?

こだわりを持つ若者が増えた

日本の消費傾向として、こだわり消費のニーズが高まりつつあります。安いものは探せばかなり安価で手に入りますが、「価格だけを見ず質や伝統にもこだわりたい」という若者が増えたのです。

こだわり消費とは、例えば*「洋服はファストファッションで良いけど、食べ物にはこだわりたい」というメリハリを持つ*こと。

そのニーズに答えたのがクラフト系商品。明治のミルクチョコレートはスーパーで100円前後で手に入るにもかかわらず、こだわりを持つ人は倍以上の価格がする定価238円のザ・チョコレートを購入するのです。

参考:
「高くても買う」消費者心理をつかめ!

若者の仕事スタイルに寄り添っている

クラフトには「古さ」「伝統」などのイメージがありますが、多くのクラフト系商品がターゲットにしているのは意外にも若者です。

現代の若者はIT関連の企業に就職している人が多く、外に出て働くのではなくひたすらパソコンに向かって黙々と働くという仕事スタイル。

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例えば、サントリーのクラフトボスは、従来の缶コーヒーから脱却して500mlのペットボトルコーヒーを売り出し、長時間かけて少しずつ飲めるようにしました。容量が多いので味が濃いと飽きやすいため、他のコーヒー飲料よりも薄味で飲みやすくしています。

こうして若者の仕事スタイルに寄り添った商品にすることで、うまく若者のハートを掴んでいるのです。

「手作り感」が逆に新鮮

クラフト系商品はそのユニークなパッケージにも注目です。
何事もデジタル化が進み、私たちの目には毎日カラフルな広告が飛び込んできます。そんな中でクラフト紙を使ったパッケージや手作り感あふれる包装を見ると、逆に新鮮に感じるのではないでしょうか?

クラフトブームが沸き起こった原因として、消費者は無意識にデジタルとは真逆の「手作り感」を求めるようになったと考えられます。

実際にIT関連の企業で働く人々の中には、仕事ではデジタルに向き合いますが、一度仕事から離れたら電子機器を断ちたいと考えている人も多いです。そうした消費者は革製品などの温もりを感じるアイテムを選びやすい傾向にあります。

流行はどこからやってくる?

今ほど工業が盛んではなかった頃、人々は必要なものをクラフト(手作り)して暮らしていました。
そしてデジタルが進化した現代に、形を変えてクラフトが復活していると言えます。

流行というのは、常に新しいものが流行っているわけではありません。過去に存在したものを現代に取り入れ、少しずつ形を変え、新しいスタイルとして世に送り出した結果、消費者の間でブームが沸き起こるのです。

そのため、今流行しているクラフト系商品も過去を真似て進化させたもの。ビジネスは常に過去からアイデアを貰っているのです。

権威性は時代遅れ?

流行するものとは逆に時代遅れになるものもあります。

クラフトブームがちょうど始まった頃は「伝統の○○」「○○監修」といった権威性をキャッチコピーに入れることで、一足先にこだわり消費をしていた消費者たちに訴求することができました。

しかし、クラフト系商品があふれた現代ではどの商品にも何かしら権威性があるもの。主張しても目立つことはできなくなりました。

クラフト系商品で成功している大手メーカーを見てみても、こだわっていることを最低限伝えるものの、権威性を主張しているメーカーはほとんどいません。

時代の流れと消費者のニーズに敏感に

こだわりを持つ消費者が思わずクラフト系商品を手に取ってしまうのは、懐かしさと手作り感を新鮮に感じ、自分のスタイルに合っていると感じるからです。

これは企業が時代の流れと消費者のニーズを敏感に汲み取ったからこその戦略だと言えます。

まだまだ続きそうな、こだわりの詰まったクラフトブーム。
一度クラフト系商品を手に取り、流行する理由を探ってみるのもいいかもしれません。

クラフトブームのキャンペーン

日本でクラフトブーム? 「クラフト感」が特徴的なキャンペーンの比較

日本でクラフトブーム? 「クラフト感」が特徴的なキャンペーンの比較

2017年頃より、日本では「クラフトブーム」と呼ばれるブームが湧き起こりました。明治の板チョコ「ザ・チョコレート」や、サントリーのコーヒー飲料「クラフトボス」など、まだ記憶に新しい人もいるでしょう。2019年現在でも、いたるところで「クラフト感」を売りにした商品やキャンペーンがあります。本記事では、「クラフト感」が特徴的なキャンペーンを比較し、こうした商品が売れる理由を考察しました。