ユーチューバーのテレビタレント化

これまで述べてきた「テレビタレントのYouTuber化」とは逆パターンで、「YouTuberのテレビタレント化」も進んでいます。

「フワちゃん」は「YouTuber兼お笑い芸人」として、今やテレビ界でも引っ張りだこ。数々のバラエティ番組に出演し、誰に対しても物怖じしない率直な発言、フレンドリーさ、パワフルさ、飾らない人柄で幅広い世代の人気を集めています。

また、「ヒカキン」や「はじめしゃちょー」「ラファエル」も「トップYouTuber」という点をフックにテレビ出演を果たすようになりました。「ヒカキン」は、2020年8月に「24時間テレビ」のオープニングにリモート出演。「はじめしゃちょー」や「ラファエル」もトークバラエティ番組へ出演するなど、YouTube上だけに留まらない活躍を見せ始めています。

また、2人組YouTuberの「水溜りボンド」はテレビだけでなく、深夜ラジオでもレギュラー番組を持っています。さらにはこのラジオ番組から派生して、「東京国際フォーラム」にて大勢のリスナーを集めてのリアルイベント開催が決定。YouTube、テレビ、ラジオの垣根を越えて、そしてオンラインとオフラインの垣根をも越えた人気を集めています。

そして、料理系YouTuberとして活動する「リュウジ」は、独学で料理を学び、数々の型破りなレシピの考案・紹介により、ネット上で「バズる」状態を連発。You Tubeチャンネル登録者数も12万人を超え、今やお昼の情報番組、バラエティ番組への出演のほか、何冊もの料理レシピ本の出版をも果たしています。

参考:HIKAKIN、羽生結弦選手が登場! オープニングは“リモート画面”から<24時間テレビ>|ザテレビジョン

明石家さんまが、はじめしゃちょーに爆笑YouTube企画を提案し…!?|フジテレビュー!!

オールナイトニッポン史上最速記録! 水溜りボンド、東京国際フォーラム・ホールAで早くもイベント決定|ニッポン放送NEWS ONLINE

水溜りボンドの“バズる条件”をもとに有田哲平が芸人のネタをプロデュース!“M-1”の再現も|ザテレビジョン

バズレシピ研究家・リュウジ、最高月収を包み隠さず告白!華大&ココリコも騒然の金額|テレ朝POST

フワちゃんのヒット要因考察

これまで、「ネット」と「テレビ」はある程度垣根があるものだと考えられてきた節があったのではないでしょうか。

そもそも、「テレビ」はオフラインの世界、「ネット」はオンラインの世界、という違いがあります。

ネットは匿名性が高い場であり、YouTubeに関しては、少なくとも個人レベルの運営で企業タイアップ案件など実施していない場合には、テレビのように「対スポンサー」への表現・再生回数に関する配慮も本来はないはずで、表現の自由度が高いメディアだと言えます。

一方、テレビ番組の中には「スポンサー企業への配慮」「コンプライアンス」「視聴率」など制作サイド・タレントサイドが考慮しなければならない制約が多々あるものです。また、今や一般視聴者もタレントの発言などを通じてそのことを薄々知っています。

それに対してYouTubeの世界には「まだ誰も考案したことのないような料理レシピを考案して、披露する」など、さまざまなジャンルで新しい才能を持った人が活動し、型破りで新しいアイデアに溢れています。

中には世間の物議を醸すような行動を映す「迷惑系YouTuber」といった人たちも居り、時折、事件としてニュースで報じられたりしますが、その根底にある発想は「まだ誰もやったことのないようなことにトライして、世間を驚かせる、注目を惹く」といった側面だと考えられます。

そんな中でも、ネットとテレビの垣根を超えて活躍し、幅広い層に好感を持たれている「フワちゃん」は、「型破り」と「常識、好感度、共感度」のバランスを絶妙に保った新しいタイプのスターと言えるのではないでしょうか。

自身のYouTubeチャンネルでは、「海外留学することになりました!」とタイトルで見せておき、実際に再生してみると「普通こういうのって、これから行きますよ!って告知だと思うんだけど、実はもう(現地に)来てま〜す!!」と留学先(セブ島)の様子を自動り棒で画面に映し出し、視聴者の期待を良い意味で裏切る展開を見せます。他にも、「ファンの人と秒で友だちになる」といった、フワちゃんに対してますます親しみが深まるような動画なども公開されています。そこには、テレビで見る姿も、YouTubeで見る姿もどちらも変わりない行動力、パワフルさ、フレンドリーさ、飾らない率直さがにじみ出ています。

「事前予告なしで海外留学」「初対面の人と秒で友達になる」などストーリー展開は型破りですが、題材そのものは一般ユーザーが共感できたり、羨ましいと思える範囲のものが選ばれていると言えるでしょう。視聴者が不快にならず、ハッピーになったり、元気づけられる題材をちゃんと選んでいるとも言えます。

ちょうど今の世の中は、コロナ禍で「ソーシャルディスタンス」「新しい生活様式」と言われ、新たに人と出会ったり、既に親しい人とも密な交流や会食すら障壁を感じてしまう、今までに体験したことがないような特異な時代を迎えています。

世の中に閉塞感が蔓延する今、ネットもテレビも垣根を超えて自由自在に行動している「フワちゃん」に対して、多くの人々がある種、「自由で、壁がなくて、やりたいこと、言いたいことをスピーディーに行動に移していて羨ましい」といった羨望の眼差しで見ているところがあるのではないでしょうか。

フワちゃんのブレイク要因は、閉塞感を打ち破るニューヒロイン、といったポジションを確立したところにあると考えられます。

参考:
フワちゃんTV|You Tube

フワちゃんFILIX|You Tube