プログラミング言語を扱う、あるいは学ぶ人の間で近年、「Python(パイソン)」という言語のシェアが高まっています。*その理由には、「開発速度が速い」「機械学習に向いていて、チャットボットの開発に適している」といったことが挙げられます。*また、InstagramやYouTube、Dropboxといった身近なWebサービスもPythonで開発されています。

そこでこの記事ではビジネスパーソンに向けて、汎用プログラミング言語Pythonについて、その概要やメリット、できることなどを解説していきます。

汎用プログラミング言語Python(パイソン)とは

プログラミングの世界では「Python(パイソン)」が人気!

[図1]現場のITエンジニアが普段使用しているプログラミング言語
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出典:プログラミング言語人気ランキング2020、2位に「大躍進」したあの言語|日経クロステック

[図1]は、「日経 xTECH」が2019年下半期に行ったアンケート調査の結果を抜粋したもの。現場のITエンジニア440人に、「普段使っているプログラミング言語」を問いかけた結果です。

この調査結果を見ると、「Python」は国内のITエンジニアの間で普段使用されている言語のシェア第2位であることが分かります。

[図2]世界のGoogle検索における、プログラミング言語の検索動向ランキング
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出典:【2020年】プログラミング言語ランキング!日本と世界で人気な言語を紹介!| Webmedia

[図2]は、世界のGoogle検索においてプログラミング言語のチュートリアル検索回数をランキング化したものです。

これを見ると、「Python」は第1位でシェア30%以上となっていることが分かります。しかも前年度と比較すると、「Trend +4.3%」となっており、近年、ますます注目度が上がってきている様子が伺えます。

「Python(パイソン)」とはどんなプログラミング言語なのか?

このように、近年プログラミング言語を扱う、あるいは学ぶ人の間で注目度が高まっている「Python」。どのような特長やメリットがあり、シェアが高まっているのでしょうか?

Pythonの登場は、1990年代初頭ごろから。

プログラムの「読みやすさ、わかりやすさ」をとても重視していて、Pythonを知らない人でも理解しやすいようにデザインされていることが特長の一つです。さらに、実用的で、高い拡張性も備えています。

前述したように、プログラミング言語の利用度調査で高いシェアを占める理由は、システム管理やツール・アプリケーション開発、科学技術計算、Webシステムなどで広く活用できるためです。

特筆すべきは、2010年代ごろからの「機械学習ブーム」において優れたツールとして評価され、大きな人気を得た点です。

2020年度からは、日本の国家資格である「基本情報技術者試験」で出題されるプログラミング言語に、Pythonも追加されました。従来から選択可能だったCやJavaなどの言語に加え、PythonもIT産業を支える基礎技術として信頼されているのです。

Python(パイソン)でできること・メリット

①Webアプリケーションの開発

Pythonは、さまざまなWebサービスの開発にも使われています。

身近なサービスでは、例えばInstagram、YouTube、Dropboxなどが、Pythonを使ってサービスを提供しています。

Pythonは、C言語などと比べればコードの実行速度はそれほど速くなく、メモリ使用量も多くなります。

それでも、InstagramやYouTube、Dropboxなど世界中から多くのユーザーが日々アクセスするWebサービスではPythonが採用されています。その最大の理由は、「開発速度が速いこと」です。

処理がどんなに高速でも、必要な機能を迅速に開発し、適切なタイミングで提供できなければ、ユーザに支持されるサービスにはならない、といった観点から、Pythonを採用しているのです。

②科学技術計算(データ分析)

Pythonは、科学技術計算のためのツールとしても広く使われています。

科学技術計算とは、確率、統計、関数などといったデータ分析のことです。

前述の通り、Python自体はコード実行速度がそれほど速くはありません。しかし、拡張性に優れているため、C言語などで開発された高速な処理をPythonに組み込んで開発することができます。

つまり、プログラミングが専門領域ではない研究者でも、習得が容易なPythonを使って科学技術計算を実行できる、というメリットがあるのです。

③機械学習・深層学習

機械学習・深層学習関連では特に大きな注目を集めています。

Googleが提供している機械学習プラットフォームや、Facebookが提供する機械学習・深層学習ライブラリなどは、Pythonを利用したパッケージが中心となっています。

現状、機械学習・深層学習を学ぶには、Pythonの知識が必須だと言えるでしょう。

参考:プログラミング言語 Pythonの紹介 - python.jp

チャットボット開発とPython(パイソン)

Pythonは、チャットボット開発にも活用できます。

「Flask」というWebフレームワークを使うことで、人工知能APIを使ったチャットボットを作成できます。

Webフレームワークとは?

「Webフレームワーク」とは、チャットボット開発作業に欠かせないツールです。アプリやサービスを開発する際に活用できる「部品集」と考えれば分かりやすいでしょう。ほとんどのフレームワークはオープンソースとして提供されており、誰でも無料で利用することができます。

フレームワークを使用することにより、効率よく開発を行うことができます。
Pythonを使って、フレームワークの各部品を呼び出すことで使えるようになります。

APIとは?

「API」とはApplication Programming Interfaceの略称です。

何かしらのサービス提供者が、そのサービスを利用するために提供するインタフェースのこと。

アプリケーション開発者がプログラムコード上で既存のAPIを連携させてWeb上で呼び出せば(=Web上で情報を取得すれば)、同じ機能を持ったサービスを開発する必要がないため、開発効率アップや開発コスト減が期待できます。

つまり、先述した「フレームワーク」同様、Pythonを使って「API」を呼び出すことで、スピーディーで効率的に、かつ低コストでチャットボットを開発できる、というわけです。

参考:
AIチャットボット開発のすすめ|ECのミライを考えるメディア

APIとは何か? Web APIとの違い、利用者のタスクを解説|Tech Target Japan

Pythonで開発できるWebサービスとは|Pythonでできること6選|.NET COLUMN

チャットボットの身近な事例

ここで、チャットボットの身近な事例を見てみましょう。

①ヤマト運輸

[図3]ヤマト運輸 LINEチャットボット

ヤマト運輸のLINEアカウントでは、「荷物問い合わせ」「配達時間変更・指定」などにチャットボットで対応しています。

荷物問い合わせナンバーを入力し、「時間指定」などこちらの要望を入力することでボットが自動回答で配達時間指定まで案内をしてくれます。

②ローソン

[図4]ローソン LINEチャットボット「あきこちゃん」

ローソンも同じくLINEで「あきこちゃん」というAIチャットボットを一般消費者向けに提供しています。

例えば「おすすめ商品は?」などと話しかけると、自動で今のおすすめ商品を回答してくれます。

③LOHACO

[図5]LOHACO チャットボット「マナミさん」

LOHACOはWeb上で、顧客からの問い合わせに対してAIチャットボットの「マナミさん」を提供しています。

こちらも例えば「おすすめ商品は?」などと話しかけると自動で答えを返してくれるほか、
「注文直後の確認・変更」「配達時間の変更」「領収書について」など顧客からよくある問い合わせについても自動回答に対応しています。

チャットボットの仕組み、機械学習との関係

前述した「ヤマト運輸」「ローソン」「LOHACO」のチャットボット事例は、いずれも「ユーザーから問い合わせがあったら自動で答えを返す」という仕組みになっています。

例えば、「おすすめ商品の問い合わせがあったら、商品を回答する」「価格の問い合わせがあったら、価格を回答する」「荷物ナンバーの問い合わせがあったら、それにまつわる情報を回答する」といったものです。

このように、Webサイト上に散在している様々な情報を取得する際に役立つ仕組みが「API」であり、Pythonを使えばその「API」を簡単に呼び出すことに役立ち、高度なチャットボットを作成できるのです。

[図]チャットボットのプログラム概要
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出典:チャットボットの基礎知識 | Tech Note

また、Pythonは近年、機械学習・深層学習の分野で必須知識になっていることも前述しました。
チャットボットにおいては、ユーザーとより自然な会話、正確な会話を実現するために、機械学習の手法を活用しているものもあります。この観点からも、Pythonはチャットボット開発に適する言語だと言えます。

Python(パイソン)をこれから学んでみたい人は

①Google Colaboratory(グーグル・コラボレイトリー)

Googleが提供する「Google Colaboratory(グーグル・コラボレイトリー)」というWebサイトがあります。

これは、機械学習の教育、および研究用に無料で提供されているものです。

ブラウザとGoogleアカウントさえあればすぐに利用でき、インストールは不要。

Pythonを用いた機械学習環境が整えられているため、すぐにPythonプログラミングを始めることが可能で、Pythonを用いた機械学習とはどんなものかを体験できます。

②YouTubeで入門動画を見る

YouTubeで「Python 入門」「Python チュートリアル」などと入力すると、入門者向けの解説動画がいくつかヒットします。

いずれも無料で視聴できますので、まずは「Pythonとはどんなものか?」と、その入口に立ちたい人は、YouTubeで学ぶというのも一手でしょう。

③有料のオンライン講座で学ぶ

本格的、体系的に学ぶなら「Udemy」など有料のオンライン講座で学ぶ手もあります。

初心者向けから「機械学習」「データ分析」といった応用編まで、実に多数のコースが提供されています。

▼Pythonコース|Udemy
https://www.udemy.com/topic/python/

これからますます需要が高まっていくことが予想されるPython人材

チャットボットを導入する企業・サイトが増え、AIを活用した自動接客はこれからますます求められていくでしょう。
その際に、機械学習・深層学習の開発ができる人材も、需要が高まっていくと考えられます。
これからプログラミング言語を新たに習得する方は、ぜひPythonへのチャレンジも視野に入れてみてください。

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