サイトやメールマガジンに載せる文章を作成する際、「“行う”と“行なう”、どっちが正しいんだったかな」と、言葉の表記に悩んだ経験はありませんか?

表記を統一せずに文章を作成すると、「表記ゆれ」が起きてしまいます。
表記ゆれとは、同一文書内において、同じ音や意味で使われるべき語句が異なって表記されることを指します。

読み手を困惑させないためにも、表記についての理解を深め、文書内で統一を図ることが重要です。
今回は、表記を統一するためのヒントになるルールをご紹介します。
メディアを持たれている方は是非参考にしてみましょう。

日本語表記の「目安」を知る

そもそも日本語には、“こう書かなければならない”という制約が存在しません。
日本語の表記には漢字・ひらがな・カタカナが混在し、何を使うかは任意という特徴があるからです。

そこで、「一般の社会生活において現代の国語を書き表すための目安」として、内閣告示されているのが「常用漢字表」や「送り仮名の付け方」、「外来語の表記」です。

参考
文化庁|常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)
文化庁|送り仮名の付け方
文化庁|外来語の表記

公用文書やマスメディアは、これらに準じた表記を採用しています。
また、主要な報道機関は、日本新聞協会の「新聞用語集」に準拠し、各新聞社からはこれをもとにした用字手引書が発売されています。

特に共同通信社の「記者ハンドブック」は、各業界のライター、Web担当者など、文章に携わる人の間で重宝されています。
手元に一冊置いておくと便利です。

参考
amazon|「記者ハンドブック 第13版 新聞用字用語集」

ひらがな表記のルールを決めよう

とはいえ、兼務されている方も多いWeb担当者にとっては、報道機関と同様に漢字表を覚えたり、用字用語集を都度引いたりする時間を取るのは難しいでしょう。

そこで、文章作成時に遭遇しやすい表記ゆれパターンをご紹介します。
書き方が分かれやすいものは、どちらで表記するか、あらかじめ決めておくと良いでしょう。

ひらがなに「ひらく」か・「ひらかない」か

漢字ではなくひらがなで表記することを、「ひらく」といいます。一般に、難しい漢字以外で、ひらくことが多い語句には下記のようなものがあります。

・形式名詞
こと(事)・もの(物)・とき(時)・ところ(所)・ため(為)
※「~すること/事の重大さに~」など、別の語句を受ける場合はひらくことが多く、単独の名詞として用いる場合は漢字を使用する
・副助詞
など(等)・まで(迄)・ほど(程)・くらい/ぐらい(位)
・接続詞、副詞
および(及び)・すなわち(即ち)・すでに(既に)・たとえば(例えば)・なかなか(中々)・ぜひ(是非)
・数や状態を表す名詞、副詞、形容動詞
さまざま(様々)・いろいろ(色々)・すべて(全て)・たくさん(沢山)
・敬語表現
いたします(致します)・いただく(頂く)・ください(下さい)
・抽象的、具象的な語句どちらにも用いられる動詞
いう(言う)・もつ(持つ)・みる(見る)
※具体的に誰かが喋る、形のあるものを持つ・見る場合は、漢字を使用することが多い

送り仮名

動詞の活用の仕方などによっておおむね決まっていますが、例外や許容範囲として送り方が分かれるものもあります。

行なう/行う・表わす/表す・生まれる/生れる・当たる/当る・問い合わせ/問合わせ/問合せ・取り扱い/取扱い/取扱

カタカナ表記のルールを決めよう

長音(─)

文化庁の「外来語の表記」では原則、長音は長音符号「─」を用いて書くものとされています。特に‐er、‐or、‐arなどで終わる用語は、Microsoftも2008年より、長音符号を付けるよう推奨しています。

参考
Microsoft|News Center

・‐er、‐or、‐arで終わるもの
コンピュータ/コンピューター・スキャナ/スキャナー・ユーザインタフェイス/ユーザインタフェース/ユーザーインターフェース

・‐yで終わるもの
メモリ/メモリー・アクセサリ/アクセサリー・セキュリティ/セキュリティー

拗音(ィなど)、V音(ヴなど)、撥音(ン)

これらは、英語の原音やつづりに近い形で書き表そうとする場合に用い、特にその必要がなければ、直音で表してよいとされています。

ソフトウェア/ソフトウエア・レヴュー/レビュー・エンターテインメント/エンターテーメント

なお、ボウリング(球技)とボーリング(穴を掘ること)など、表記で意味が異なってしまう同音異義語には注意しましょう。

記号の表記も統一する

頻出する約物(記述記号類)は、出版業界で慣例化されている、下記パターンに倣うとよいでしょう。

かっこ類

かっこ内に句点(。)は入れません。

・かぎかっこ「」・・・語句の引用や強調、会話文を表現
・二重かぎかっこ『』・・・特に書物や映画の作品名の強調、「」の中の語句をさらに明確化する
・丸かっこ()・・・注記や補足を加える
(例)
彼(1年目の新人)はこう語る。「お客様に『ありがとう』と言っていただけて嬉しかった」。

感嘆符(!)、疑問符(?)

これらの後は1マス(全角または半角)空けるのが一般的です。いっぽうで、読みにくいという見方もあり、ルールは媒体で分かれます。

(例)
お知らせです! 情報番組内で当社が紹介されました。

年や金額の表記

バリエーションが豊富なので、きちんと統一を図りましょう。

・年 1990年/90年/‘90/平成2年/H2
・金額 1万5千円/1万5000円/15000円/15,000円/¥15,000

全角か半角か

基本的に英数字は半角入力が多いでしょう。ただし、媒体(特に縦組みの場合など)によっては1文字の場合は全角、というルールが設けられています。

まとめ

担当者の入れ替わりや外注先の多いweb業界では、最初に策定していたはずの表記のガイドラインが、いつのまにか形骸化してしまっているおそれもあります。
作業の効率化と読みやすい文章を目指して、今一度、表記ルールの見直しや、関係者間での共有を心掛けましょう。