デザインを"オフショア"で!発注する上で注意したい製作指示の基本ルール
元来、アジア圏を中心にコスト削減をメインに広まってきたオフショアの活用ですが、近年では発注先の各国の技術革新が進み“安い上、クオリティも日本並み”という認識が広がってきています。
オフショアのメインストリームは、ソフトウエアやWebシステム、アプリの開発、さらには運用保守などでしたが、Webデザインの一部をオフショアが担っているというWeb制作会社も少なくありません。ただ一方で、オフショアに対して、「本当にクオリティは確保できるの?」と訝しむ方が少なくないのも事実です。
そこで今回は、Webデザインにおいてオフショアにオーダーする際に認識しておきたいルール、注意すべきポイントをご紹介していきます。
目次
- 仕上がりが不安定なのは日本側の指示に問題がある!?
- 縦書き・横書きが混在するWebサイトは世界的に少数
- スタイルガイド・コーディングルールの相互理解は必須
- まとめ -「なぜそうなる」かを丁寧に説明する -
仕上がりが不安定なのは日本側の指示に問題がある!?
Webデザインに限ったことではないのですが、オフショアに付き纏うネガティブなイメージとして、海外は「スケジュールにルーズ」という話を良く耳にします。日本人と比較するとオフショア先のクリエイターは納期に対するスピード感がないというのは事実なのでしょうか。
もちろん、それが全てというわけではないのですが、この問題を解く鍵にコミュニケーションの円滑化が挙げられます。言い換えれば、コミュニケーションを円滑にすることで、多くの時間的な問題が解決に向かうということです。
問題視されるシーンをいくつか例に挙げたいと思います。
1. 納期について
納期が迫っているのに期日に間に合わせる意識が薄い
2. 作業スピードについて
軽微な修正依頼に想定外の時間をかける
3. コミュニケーションについて
決定した内容に対して、後になって反論してくる
1. 納期について
まずは、納期への危機意識についてです。
この点について、まずは皆さんが請け負う一般的な制作フローを頭に思い浮かべてください。納期ギリギリのオーダーでない限り、コンセプトのすり合わせ、仕様策定にじっくりと時間をかけた後に、最終の納品にかけて加速度的に制作スピードが上がっていくのが通常と考えがちです。
具体的に言えば、制作初期は数日、長ければ数週間レベルで連絡をやり取りしていたのに、納期が近付くと、数時間、差し迫っている局面だと数分レベルの回答、対応を求めていませんか。
こうした対応、舞台裏を全ての国が認識しているかというとそうではありません。これまで緩やかに進めていたプロジェクトが、どこかのタイミングから“日本の都合”によってスピードアップしたのであれば、その経緯と事情をしっかりと説明すべきでしょう。オフショア先に納期の意識が薄いと感じた場合、発注する日本側が「制作スピードについて誤解させている部分はなかったか」との意識を持つべきです。
2. 作業スピードについて
日本人であれば5分少々で終える修正が数日かかったという話も聞きます。
実際にあった例を挙げると、オフショア先のベトナムに、制作中のデザイン上にある全ての「問い合わせ」というボタンを赤にしてほしいとオーダーした際、修正箇所は5つだったのにも関わらず、対応に5営業日を要したことがありました。
後になって気付いたことですが、「問い合わせ」の部分こそ5箇所であったものの、そのほか「問い合わせ先」という文言があり、そこをどう処理すべきか悩んでいたようです。特に英語圏の場合、「問い合わせ」と「問い合わせ先」が同じものか違うものかの判断がつきません。
上記の例に限ったことではありませんが、この問題は全体イメージの共有を怠ってているからということにほかなりません。具体的な指示と、その理由を伝えることでこういったミスは大きく軽減するはずです。
3. コミュニケーションについて
最後に決定した内容について、オフショア先から「再調整の依頼」が入るケースについてです。
決定して、すでに動き出しているものについて、後になってオフショア先から「やはりここはこうした方が良い」という意見をもらうこともあります。それによって制作が滞ることもしばしばあります。
この問題もコミュニケーションがカギを握っているのも言うまでもありません。オフショア先のクリエイターが打ち合わせの場では納得できない、疑問を感じる部分についても、日本語で論理的に反論できないとその場では意見を引っ込めることは少なくありません。そこで“この問題は解決した”とプロジェクトを先に進めるのではなく、日本側から「意見はないか?」とこちら側から積極的にアプロートすることでこの問題も軽減することが大切です。
縦書き・横書きが混在するWebサイトは世界的に少数
これまで、オフショアでデザインを依頼する際の心構えの部分にフォーカスを当てていましたが、より具体的な注意点について説明します。
まずは、日本において存在する縦書きと横書きの混在デザインが世界ではレアだということです。依頼する内容にも応じますが、元々縦書きというデザインに見慣れていない多くの国にとって、混在が意味すること、置き位置、余白の使い方などに関する知識は皆無と考えて良いでしょう。仮に、縦書きをデザインに組み込む場合は、細やかな指示とそれが意図する部分をしっかり伝えて、理解してもらう必要があると言えます。
これに類似する例として下記なども、日本以外の国は馴染みのないデザイントピックスとなるでしょう。
・ひらがな、漢字、カタカナの違いと使いわけ
・ルビ
・カギ括弧、墨付き括弧ほか、他国よりルールが曖昧な括弧の使いわけ
・日本語書体
中でも日本語書体について細く言えば、「行書体」と「勘亭流」の違いは、日本人以外の国の人には理解されづらいため、使いわけや、後の確認漏れの対象となる可能性があります。また、日本のデザイナーであれば丸括弧といえば全角括弧が基本ながら、オフショアなどでは全角と半角の違いに意識がいかないケースも少なくないので注意が必要です。
スタイルガイド・コーディングルールの相互理解は必須
相互の誤解を解き、曖昧な境界線を生まないようにするには、特にオフショアでデザインをオーダーする場合は、デザインドキュメント、またはWebデザインのスタイルガイドの作成が必須と言えるでしょう。
これは文化や言語の違いを解消するという理由のみならず、オフショアでは一部分のみ、パーツデザインをオーダーするケースがことも少なくないためです。
スタイルガイドを作る理由としては(1)お国柄や個人的な好みでスタイルを調整して、全体のバランスが崩れてしまうのを防ぐ(2)定義されたWebサイトのコンポーネントを利用することで、オフショア先のクリエイターが迷わず効率的にパーツを再利用することができる、などの理由が挙げられます。
制作拠点が離れているからこそ、細やかなルール設定とその根拠に関する説明にはしっかりとした時間を費やすべきである。
まとめ -「なぜそうなる」かを丁寧に説明する -
ここまで読んでいただき、「コストと時間の相互関係を考えるとオフショアでデザインをすることにメリットを感じない」と意見を持つ方もいるかもしれません。
しかし、賢明な読者の方であれば今回のテーマ、実はオフショアでの開発に限ったことではないことに気付いていただけたはずです。日本におけるデザイン発注においても同じことで、事前にルールを徹底化させること、そして制作途中に迷わないよう「なぜ、そうなのか」という部分を事前にしっかり理解してもらうことで、制作トラブルは“加速度的に”解決していくはずです。
短期で成果をみるのではなく、中長期の視点でみればオフショアでのデザインオーダーはコスト分のメリットを十分に享受できるはずです。
参考:
オフショア開発を活用する企業のCTO6名が語る「オフショア開発が失敗する理由」(DMM城倉氏・ランサーズ横井氏他)|ferret
複数人でデザインするなら必須!誰にでもわかるデザインスタイルガイド作成のコツ|ferret
- アプリ
- アプリとは、アプリケーション・ソフトの略で、もとはパソコンの(エクセル・ワード等)作業に必要なソフトウェア全般を指す言葉でした。 スマートフォンの普及により、スマートフォン上に表示されているアイコン(メール・ゲーム・カレンダー等)のことをアプリと呼ぶことが主流になりました。
- コンセプト
- コンセプトとは、作品やサービスなどに一貫して貫かれている考え方をいいます。デザインと機能がバラバラだったり、使い勝手がちぐはぐだったりすると「コンセプトが一貫してないね」などと酷評されてしまいます。
- Webサイト
- Webサイトとは、インターネットの標準的な情報提供システムであるWWW(ワールドワイドウェブ)で公開される、Webページ(インターネット上にある1ページ1ページ)の集まりのことです。
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