信号が「赤」になったら、歩行者も自動車も一斉に止まるように、人は色を見ることでさまざまな意味を受け取ります。色には感情に訴えかける効果もあり、メッセージ性も強いので、デザイナーは色使いに注意を払うことが大切です。

ロゴデザインでは、ロゴマークやタイポグラフィにばかり注意が行きがちですが、実は「色」こそが最も重要な情報です。

そこで今回は、ロゴデザインよりも大切な「ブランドカラー」選びの5事例を紹介します。実例を見ながらブランドカラーの重要性を学ぶことで、ご自身のブランドについても考え直すきっかけになれば幸いです。

多くのブランドは「ロゴデザイン」よりも「色」で記憶されている?

人間の目から入る視覚情報のうち、80%以上が「色彩からの情報」だと言われています。色彩が人に与える影響は、私たちが想像する以上に大きく、色の選び方次第で好印象にも悪印象にもなります。言い換えれば、多くの物事は色のイメージによって記憶されている、ともいえるでしょう。

これを逆手に取っているのが、Microsoft Officeのソフトウェアのアイコンです。

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© Microsoft

Microsoft Officeの「Word」「Excel」「PowerPoint」のソフトウェアのロゴは、それぞれ「ブルー」「グリーン」「オレンジ」のロゴとなっており、それぞれの色を見ただけで、それぞれのソフトウェアがすぐに識別できるようになっています。

ロゴデザインの中には、凝ったデザインのものもたくさんありますが、ロゴデザインそのものをユーザーがはっきりと記憶できるのは稀です。むしろ、ロゴイメージを認識するのに「色」が大いに役立っているのです。

スターバックスのセイレーンのロゴを間違いなく描くことができる人は、本当にごく一握りでしょう。しかし、スターバックスが、「グリーンの丸の真ん中に白い人魚」という大雑把なイメージでなら、ユーザーは記憶することができるでしょう。

参考:色の意味、効果は? | 色|色の効果・意味|色彩心理学

ロゴデザインよりも大切な「ブランドカラー」選びの5事例

1. コカ・コーラ:「赤背景に白の曲線」

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© Coca-Cola(Japan)Company, Limited

コカ・コーラのロゴは、誰でも一目で分かるほどに人気です。赤背景の上に乗せられている白い曲線は「ダイナミックリボン」と呼ばれていますが、初めからダイナミックリボンがあった訳ではありません。

コカコーラの初代ロゴが誕生したのは、1886年、ジョン・ペンバードン博士がこの飲料を発明したときですが、この時は白黒のタイポグラフィロゴでした。それ以降、何度かマイナーチェンジを経て、ついに1969年には、「アーデン・スクエア」と呼ばれる赤い四角形の中にスペンサリアン書体のコカ・コーラの文字とその下に波模様が描かれるようになりました。

シンプルながらも見たものに強い印象を残す赤色は、コカコーラのブランドイメージ向上に一役買っています。一方、よくライバルとして引き合いに出されるペプシには赤と青がバランスよく使われていますが、あまり印象的ではないため、この2色を見てペプシを思い浮かべる人は少ないかもしれません。

参考:コカ・コーラのロゴの下にある白い波線はなんですか? | 日本コカ・コーラ お客様相談室

2. スターバックス:「グリーンに白の模様」

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©2018 Starbucks Coffee Company.

1971年に誕生した最初のスターバックスロゴは、黒い円の中にリアルな版画調のセイレーンが乗ったデザインでした。スターバックスのテーマカラーである緑がロゴに載ったのは、1987年にロゴデザインが大幅に刷新されたときです。この時には、リアルに描かれたセイレーンはよりシンプルに描かれることになりました。

2011年には、縁に描かれた「STARBUCKS COFFEE」の文字を消し、緑の円の中にセイレーンを大きく描いた、ミニマルなデザインに変化しました。スターバックスの知名度が増し、コーヒー界で不動の地位を占めることになり、セイレーンと緑色だけを見ても誰もがスターバックスだと分かるために、このようなミニマルなデザインになったと言われています。

参考:スターバックスのロゴデザインの歴史や意味と都市伝説 - ロゴデザ

3. Virgin:「スカーレットレッド」

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©Virgin Group

CEOのリチャード・ブランソン氏でおなじみのイギリスの巨大コングロマリットであるVirginは、スカーレットレッドと呼ばれるワインレッドのような色(スカーレットレッド)を採用しています。日本国内では認知度はそれほど高くないかもしれませんが、Virginのブランド調査では、イギリス・フランス・オーストラリアで99%、アメリカと南アフリカで96%の認知度を誇っていると言われています。

Color Preferenceによれば、赤色は青色に次いで男女ともに好む色であることでも知られています。赤には「情熱的」で「活発」、「決断が早く行動的」なイメージがありますが、リチャード・ブランソン氏の人柄とぴったり合うところもあり、色がイメージアップに大きく貢献しているようです。

参考:性別による色の人気!男性と女性の色彩嗜好

4. Twitter:「水色に白抜き」

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© 2018 Twitter, Inc.

数あるブランドの中でも、Twitterは現代で「色」を最も効果的に活用したブランドの一つだと言えるでしょう。

Twitterは、ブランドガイドラインでも公式に述べているように、「#1DA1F2」で表現される水色をプライマリーカラー、そして「#FFFFFF」の白色をセカンダリーカラーとして、この色とグレースケールの色以外は、原則としてブランドカラーとして用いないことを表明しています。例外なく一貫してこの色を用いることで、水色と白を見ればTwitterであることがすぐに分かるでしょう。

一方、Facebookが使っているいわゆる「Facebookブルー」と呼ばれる紺色の色は、初期のInstagramのロゴの色やTumblrの色とも重なる部分があります。競合で似たようなブランドカラーを使っているケースが多いと、ブランドカラーが埋もれてしまう可能性もあるので、注意が必要です。

参考:ブランドガイドライン | Twitter(PDF)

5. LINE:「明るいライムグリーン」

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©LINE Corporation

日本人のスマートフォンのほとんどにインストールされていると言っても過言ではないLINEですが、ライムグリーンに丸み大びた白抜き文字があれば、容易にそれがLINEだと識別できるでしょう。

「#00c300」というシンプルなカラーコードで知られるLINEのロゴ。世界的に見ても似たようなブランドカラーを採用しているのはGrouponかHulu、Nvidiaと指で数えられるほどで、LINEほど明るい色を採用していないこともあり、「明るいライムグリーン」はLINEの重要なブランドアイデンティティの一つとなっています。

ブランドカラーの2つの特殊ケース

1. カラフルなロゴ

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© Google LLC
© Microsoft
© Slack

カラフルなレインボーカラーをロゴデザインに持つブランドとしては、「Google」や「Microsoft」「Slack」などが挙げられます。カラフルなロゴは「ダイバーシティ」(多様性)の象徴として語られ、現代ではLGBT運動の象徴としても語られます。見ている人に「希望」や「未来」のような明るいイメージをもたらします。

カラフルなロゴデザインは、万能で何にでも適用できるイメージがある反面、シンプルさにかける、「うるさい色」と見なされてしまうこともあります。

事実、「Apple II」を発表した時にはレインボーカラーだったAppleのロゴマークは、今日ではグレーの背景に白いりんごのマークで描かれています。21年間使われたレインボーカラーのロゴは、「コンピュータを暖かく親しみやすい存在」にする効果として一役買いましたが、現在みなさんが持っているiPhoneの裏のリンゴマークは「持っているだけでクール」である象徴となっているのです。

2. 白黒のロゴ

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© 2018 Apple Inc.
© 2018 Nike, Inc.
© PUMA NA, 2018

白黒のロゴを採用しているケースは、あえて「モノトーン」でニュートラルなイメージを植え付けたいという思いから採用している場合があります。色が与える印象はあまりありませが、一方でロゴの形をシルエットとして捉えてもらうには都合のよいフォーマットでもあります。

このタイプのロゴを採用しているのは、「Apple」や「Nike」、「Puma」などです。シルエット勝負になっている分、どんな色で切り抜いても適用しやすいというメリットがあります。

まとめ

ロゴデザインといえば、ロゴのシルエットやタイポグラフィばかりにこだわってしまいがちですが、実はブランドカラーこそがユーザーの印象に残る最重要の要素だと言えます。

もし、ユーザーの印象に残るようなブランドカラーを持っていないのであれば、今すぐブランドカラーを決めましょう。Airbnbの他にはないピンク色のように、リブランディングによってブランドカラーを再定義することもできます。

「色だけでブランドを想起できるか?」
これが、適切なブランドカラーを定義する上で、最も簡単な質問です。答えがノーであれば、ぜひもう一度ブランドカラーを決めなおしてみるといいでしょう。