「顧客のクレームはニーズの原石」サブスクリプションビジネスで顧客と長期的な関係を築くためのカギとは
サブスクリプション型のサービスが、ここ数年で市場規模を拡大させています。
AdobeやOfficeの様なビジネス向けのサービスや、SpotifyやNetflixなどの娯楽向けのサービスなど、今では、サブスクリプション型サービスは当たり前の様に利用されているのが現状です。
このように、あらゆるジャンルにおける「サブスク化」が始まり、自社サービスのサブスクリプション化を検討する担当者も少なくないでしょう。
今回は、サブスクリプションビジネスの導入をサポートする「サブスクストア」を運営するテモナ株式会社にお話を聞いてきました。
サブスクビジネスは昔から存在していた
ferret:
近年様々なサブスクリプション型ビジネスが誕生し、市場が盛り上がっていますが、なぜこれほど受け入れられる様になったのでしょうか?
杉山氏:
やはり、大きな要因として物を買わなくなった時代に突入した点が大きいです。
昔だとロレックスやポルシェを買うことに価値がありましたが、そんな流れはいつの間にかなくなりましたよね。サブスクストアが運営するメディア「サブスクマガジン」で調査をしたところ、年齢層が高いほどCDを買う傾向になり、一方で年齢層が低い若年層につれて、購買率が下がる結果となりました。ミレニアム世代にとって「アルバムを買うよりは、音楽ストリーミングアプリのSpotifyなどを利用してプレイリストを集めるだけで良いよね」みたいな感覚なんですよ。
テモナ株式会社 経営企画室マーケティングチーム長 兼 メディア編集長 杉山氏
ferret:
たしかに自分のお気に入りの曲をストリーミングアプリからSNSにシェアする人が大きく見受けられるようになりましたね。
では、サブスクリプション自体も最近生まれたビジネスなのでしょうか?
杉山氏:
「サブスクリプション」という言葉は最近注目を集めるようになった言葉なのですが、ビジネスモデル自体は昔からありました。たとえば、新聞の定期購読や、交通定期券、あとは定期購買の青汁などですね。
実際にサブスクストアも健康食品・美容などの商品を初期の頃は販売していました。特に年齢が高い層には単品通販の定期購買文化が根付いており、ビジネスモデルとしては今に始まった訳ではないのです。
つまり、現代のテクノロジーの進歩によって様々なデジタルコンテンツが生まれ、デジタルに慣れ親しんだミレニアム世代の人々の目に触れやすくなったことで目新しさを感じるんでしょうね。
とはいえ、現在のサブスクリプションがミレニアム世代だけで流行っている訳でもなく、アクティブシニアといった健康志向な方々は、健康食品などのサブスクリプションの利用率は高いです。
サブスクに合わないビジネスモデルはない
ferret:
確かに様々な業界や企業がサブスクリプションビジネスを導入していますよね。しかし、自社サービスはサブスクリプションと相性が良いか分からないと考える企業も多いのではないでしょうか。
吉澤氏:
実はクライアントからもよく聞かれるのですが、僕はサブスクリプションに合う合わないはないと思っています。
経営企画室 PR担当 エグゼクティブマネージャー 吉澤氏
先ほど話したように、サブスクリプションに近いビジネスモデルである新聞や、定期券などの定期購買は昔から存在しており、モノがコト(サービス)に変わっただけなんです。ですので、各社ごとの商材によってサブスクリプションに”合う・合わない”を考えるよりは、企業としてサブスクリプションビジネスに適応させるための準備ができるかどうか、だと思います。
ferret:
“適応させる”とは具体的にどのような準備が必要なのでしょうか?
杉山氏:
やはり、核は*「顧客視点」で考えることができるか*です。顧客によっては、商品を一括で購買したい人もいれば、サブスクリプションを利用したい人もいます。サブスクリプションビジネスがこれだけ世に広がっても、一定数は昔から変わらない消費感覚の方はいらっしゃるので、自社顧客を再認識することが大切です。これはどんなビジネスにおいても通づる大事なポイントですが、どうしてもサブスクリプションを導入すれば上手くいくと勘違いしてしまっているクライアントも少なくありません。
ferret:
他にも大切なポイントはありますか?
杉山氏:
事業者目線の場合、サブスクリプションは体力勝負の部分が多分にあると思っています。サブスクリプションビジネスは、自社顧客を理解した上でいざ導入したとしても、導入初期は売り上げが減ります。たとえば、従来までは100万円の商材を10本売り切っておけば売上げが立っていました。一方で、サブスクリプションは、100万円の商材を毎月3万や5万円といった価格設定で売り続けるビジネスモデルです。つまり初期段階では、確実に売り切りモデルよりも売上げが減少してしまいます。そのため、損益分岐点を超えるまでに時間がかかってしまう点は注意が必要です。
とはいえ、それらの堅実な準備をし、収益を安定化させることができれば、サブスクリプションは強い収益モデルとなります。
どれだけ顧客からの「声」をニーズとして捉えることができるか
ferret:
しかし、収益を安定させることって非常に難しいですよね。特に重要視するポイントとかあるのでしょうか?
杉山氏:
収益を安定化させるために最も注力するポイントは顧客への対応です。
元々の売り切りの時代は、顧客に売ってしまえば終わりなので、カスタマーサポートはコストでした。しかし、サブスクリプションにおいて重要な点は、いかに顧客に自社の商品を継続して利用してもらうかです。継続して利用してもらうためには、商品の質はもちろん、顧客の満足度をあげることが大切になります。問い合わせの対応の質なども求められ、それらの対応の結果、収益の安定化につながります。
このように以前のカスタマーサポートと対応が変化してきたことで、近年は、カスタマーサクセスと呼ばれるようになっています。サブスクリプションにおいては、従来の顧客からの声が「クレーム」だった時代から、「ニーズ」に変わりました。
ferret:
まるで「お客様は神様」みたいな対応ですね。
吉澤氏:
その通りです。顧客への対応を怠ると、チャーンレートが大きく上昇するなど売り上げに直接影響します。
弊社では「サブスクリプションサービスを利用しているお客様はVIPだと考えるように」と言われているように、サブスクリプションは、継続利用が長い顧客に対して付加価値を提供することが大事です。たとえば、同梱物に力を入れたりするケースもあります。クーポンを同梱したり、直筆の手紙を送付したりと、あえて血の通ったアナログの付加価値を提供することって、特別感が生まれて良いんですよね。このように顧客と関係を築いていくことで、自社サービスへの「ファン化」を目指すこともサブスクリプションにおいてのカスタマーサクセスの1つですね。
サブスクリプションは究極の顧客マーケティング
杉山氏:
顧客の声を「ニーズ」と捉えることは、顧客から受け取った意見へ対応することが重要ですが、サービスの提供と共に企業側から付加価値を付随させられるかも大事だと思っています。継続的に利用してくれる顧客に対して、「自社の顧客はどんなサービスがあれば喜ぶか?」といった顧客のニーズを自ら探し続けることは意識した方がいいです。
顧客に「継続的に利用していてよかった」、「これからも利用したい」と思ってもらい、最終的には自社のファンになってもらうことが大事ですね。そうやって考えてみると、いかに*「ターゲット層のニーズを捉えるか」*という、超ユーザー視点を常に持ち続けることがサブスクリプションビジネス成功の秘訣なのではないでしょうか。
テモナ株式会社とは
1,400社以上の導入実績のあるシェアNo.1の単品通販・定期通販システム「たまごリピートNext」の後継版であり、サブスクリプション事業において重要な販売・顧客・入金・在庫などの管理と販売促進などを一元的に管理できるクラウド型システム「サブスクストア」や、サブスクリプションビジネスの導入および成長を加速させるトレーニングサービス「サブスク成功くん」、サブスクリプションビジネスの考え方や気をつけなくてはいけないポイントなど、サービスモデルの基本を設計するためのサービス「サブスク始めるくん」などを提供する。
プロフィール
テモナ株式会社 吉澤 哉氏
デジタル黎明期よりハイエンドコンテンツ制作で培ったノウハウをWebサイト制作に移行し、様々な大手プロモーションサイトのプロデュース実績あり。大手ECサイトの総合ディレクション、及びUT結果によるサイト改善やコンテンツ設計を担当。また、映像やイベントの制作ノウハウも持ち、常にリアルを意識したプロデューサーとして支持される。 2015年よりテモナ株式会社に入社し、開発部門のUI/デザインセクションを立ち上げ、2018年4月から現職。
テモナ株式会社 杉山 拓也氏
1998年より株式会社日立情報にて金融システムのSIerとして活動。
その後、当時10名だった株式会社ファインドスターで広告ニュース編集長、マーケティング部、新規事業部などを歴任。
2011年に株式会社スターガレージを設立、代表取締役としてアプリのマーケティング支援事業を月額定額で開始。売上を伸ばし、2014年にバイアウト。
その後、サブスク課金型アプリ『あすけんダイエット』のプロダクト部長となり、会員120万人から200万人へ成長させる。
2018年よりテモナ株式会社に入社しサブスクリプションマガジン編集長/マーケティンググループ長。
日々、サブスク事業会社へのインタビューを行い、サブスクリプションマガジンを日本最多のビジネスモデル事例サイトに。2019年5月よりサブスク振興会事務局長としても活動を行っている。
顧客とのコミュニケーションを学ぶ
「解約理由は顧客に直接聞け」サブスク事業でリピーターを増やすコミュ二ケーションとは【サブスクサミット2019】
サブスクリプションビジネスは積み上げ式のモデルであり、顧客との継続的なつながりが前提です。しかしながら、顧客の属性やサービスの利用理由はさまざまで、長期的な関係構築は一筋縄ではいかないのが現状です。 2019年10月31日、アライドアーキテクツ株式会社主催で開催された「サブスクサミット2019」では、そんな熱狂的なファンから解約を考えているユーザーまで、さまざまなステージにいる既存顧客へのアプローチ方法や顧客基盤の作り方の議論が行われました。
- アプリ
- アプリとは、アプリケーション・ソフトの略で、もとはパソコンの(エクセル・ワード等)作業に必要なソフトウェア全般を指す言葉でした。 スマートフォンの普及により、スマートフォン上に表示されているアイコン(メール・ゲーム・カレンダー等)のことをアプリと呼ぶことが主流になりました。
- マーケティング
- マーケティングとは、ビジネスの仕組みや手法を駆使し商品展開や販売戦略などを展開することによって、売上が成立する市場を作ることです。駆使する媒体や技術、仕組みや規則性などと組み合わせて「XXマーケティング」などと使います。たとえば、電話を使った「テレマーケティング」やインターネットを使った「ネットマーケティング」などがあります。また、専門的でマニアックな市場でビジネス展開をしていくことを「ニッチマーケティング」と呼びます。
- アプリ
- アプリとは、アプリケーション・ソフトの略で、もとはパソコンの(エクセル・ワード等)作業に必要なソフトウェア全般を指す言葉でした。 スマートフォンの普及により、スマートフォン上に表示されているアイコン(メール・ゲーム・カレンダー等)のことをアプリと呼ぶことが主流になりました。
- シェア
- シェアとは、インターネット上で自分が見つけて気に入ったホームページやブログ、あるいは、Facebookなど自分自身が会員登録しているSNSで自分以外の友達が投稿した写真、動画、リンクなどのコンテンツを自分の友達にも共有して広めたいという目的をもって、SNSで自分自身の投稿としてコンテンツを引用し、拡散していくことをいいます。
- コンテンツ
- コンテンツ(content)とは、日本語に直訳すると「中身」のことです。インターネットでは、ホームページ内の文章や画像、動画や音声などを指します。ホームページがメディアとして重要視されている現在、その内容やクオリティは非常に重要だと言えるでしょう。 なお、かつてはCD-ROMなどのディスクメディアに記録する内容をコンテンツと呼んでいました。
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