コロナ禍の消費動向変化を分析。今後の消費行動のポイントとは?
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年5月中には全国を対象に緊急事態宣言が発出されました。またそれを受けて、人々は外出自粛生活を余儀なくされていました。果たしてその前後で、消費者の行動とはどのように変化していったのでしょうか。記事ではリサーチデータを基に、コロナ禍における消費動向の変化を読み解き、さらに、この先で消費者の行動とはどのような方向に向かっていくのかを考察します。
コロナ禍における消費動向の変化
まず、株式会社ジェーシービーが公開している、国内消費動向指数「JCB消費NOW」の6月前半(6月1日~6月15日)の速報値のデータを見てみましょう。
1月後半(コロナ感染拡大前)から、6月前半までの消費動向を業種別にグラフ化し、「どの業種が、いつのタイミングで冷え込んだか」あるいは「どのタイミングから回復傾向を見せ始めたか」という点を可視化できるグラフになっています。
[図1]コロナ禍における「全総合」の消費動向変化率
出典:緊急事態宣言解除後の6月前半、百貨店やアパレルなど外出型消費の一部が急回復。デジタル消費の伸びは衰えず。(データ元:JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」)|PR TIMES
まず、「小売総合」「サービス総合」は、4月前半〜後半を底に、緩やかに回復傾向にあることがわかります。コロナ感染拡大前(1月後半)の水準まではまだ戻っていませんが、それでも少しずつ、人々がモノ・サービスを買い求める行動が復活しつつあり、かつての日常が戻り始めてきたことが示されています。
[図2]「百貨店」「織物・衣服・身の回り品小売業」の変化率
出典:緊急事態宣言解除後の6月前半、百貨店やアパレルなど外出型消費の一部が急回復。デジタル消費の伸びは衰えず。(データ元:JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」)|PR TIMES
「百貨店」に関しては緊急事態宣言中、コロナ感染拡大前と比較するとマイナス80%まで落ち込んでいました。「不要不急の外出を避ける」「3密を避ける」ということが呼びかけられていましたから、いわゆる「外出型」の消費は急激に落ち込んでいたことがデータからわかります。しかし、5月後半から急回復を遂げました。
また、「織物・衣服・身の回り品小売業(アパレル)」も5月前半から急回復し、6月前半には、コロナ感染拡大前より高い水準をマークしています。
このように、緊急事態宣言解除後、「外出型」の消費行動は速いスピードで回復していった様子が伺えます。
[図3]「外食」「旅行」「交通」「娯楽」の変化率
<small>出典:緊急事態宣言解除後の6月前半、百貨店やアパレルなど外出型消費の一部が急回復。デジタル消費の伸びは衰えず。(データ元:JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」)|PR TIMES
続いて「外食」「旅行」「交通」「娯楽」の変化率についてです。
前項の「百貨店」「アパレル」同様、外出型の消費である「外食」は緊急事態宣言解除後、伸び率が比較的大きくなっています。
しかし、「旅行」「交通」「娯楽」の伸び率はそれほど急激ではないことが見て取れます。
このことから、「緊急事態宣言が解除されて、近場での外出型消費行動はしているが、遠出を伴う旅行や、密になりやすい娯楽(ライブなど)はまだ控えておこう」といった消費者心理を読み取ることができます。
[図4]「喫茶店・カフェ」「居酒屋」「酒屋」の変化率
出典:緊急事態宣言解除後の6月前半、百貨店やアパレルなど外出型消費の一部が急回復。デジタル消費の伸びは衰えず。(データ元:JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」)|PR TIMES
続いて「喫茶店・カフェ」「居酒屋」「カフェ」の変化率です。
「喫茶店・カフェ」「居酒屋」は、4月後半を底に伸長しています。その一方で、「酒屋」は5月後半以降、ダウン。これは、緊急事態宣言解除とともに「宅飲み」から「外飲み」にシフトし、「宅飲み」で飲用するためのお酒を調達していた「酒屋」で消費指数のダウンが起こった、と考えられます。
コロナ禍で「巣ごもり消費」という言葉を盛んに聞きますが、このように細かく消費動向変化のデータを追っていくと、緊急事態宣言解除後には「巣ごもり消費」が必ずしも伸び続けてはいないこともわかります。
[図5]「デジタル消費」の変化率
出典:緊急事態宣言解除後の6月前半、百貨店やアパレルなど外出型消費の一部が急回復。デジタル消費の伸びは衰えず。(データ元:JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」)|PR TIMES
上記のグラフで「EC」「コンテンツ配信」に注目してみてください。
これまで見てきた4つの「外出型消費」のグラフに関して言うと、多くは4月後半に落ち込みの底を見せ、その後、緊急事態宣言解除のタイミングあたりで緩やかに回復していっている折れ線グラフの形になっていました。
しかし、「EC」「コンテンツ配信」に関しては全くグラフの形が違っています。2月前半(コロナ感染拡大前)からどんどん伸長していき、「コロナ以前」より消費指数が拡大していっています。
このことは、旧来の「外出型消費」より「デジタル消費」が人々の間に広く浸透し始めたことを示している、と言えるでしょう。
消費動向の変化を受けて、これからの予測
前項までで述べてきた消費動向の変化をまとめると、以下のようになります。
・サービス業は緊急事態宣言解除後、緩やかに回復傾向
・「外出型」の消費行動は速いスピードで回復
・「外食」は緊急事態宣言解除後、伸び率が比較的大きい
・「喫茶店・カフェ」「居酒屋」は、4月後半を底に伸長
・「旅行」「交通」「娯楽」の伸び率はそれほど急激ではない
・「酒屋」(巣ごもり需要の一例)は5月後半以降ダウン
・「デジタル消費」は「コロナ以前」より消費動向が拡大
ここで注目すべきは、「外出型消費」の中でも「近場の買い物・外食」には積極的である反面、「遠出を伴う旅行」「密のリスクを伴いそうな娯楽」には消極的で、消費者の行動としてはやや足踏み状態である、という点です。
そして、「デジタル消費はコロナ以前より消費動向が拡大」という点も特筆すべき点でしょう。
次項からはこれらの点に着目して、今後の消費動向の方向性を考察していきます。
旅行は「近場」「プライベート化」
まず、消費者が現時点でまだまだ躊躇しているのが「遠出を伴う旅行」。遠出の際に公共交通機関の利用を伴うことで「ソーシャルディタンスを確保できない」「密になりやすい」というリスクも孕んでいます。
そこで、今後は「近場への、マイカーでの旅行」が注目されそうだ、ということが一つの予測として挙げられます。
また、他の宿泊客との接触を避けることができる「コテージの利用」「一棟貸しの宿・別荘」なども注目されていきそうです。
その他、「マイカー移動」かつ「他人との接触を避ける」「プライベート空間を確保する」という要素の組み合わせで言うと「オートキャンプ場で、キャンピングカーでの宿泊」というのも要注目です。
このように、アフターコロナの旅行スタイルは「行き先は近場」「ソーシャルディスタンスを確保し、高度にプライベート化」というものが新常態になっていくのかもしれません。
参考:コロナで夏の国内リゾート変化 旅先「近く」、人との距離「遠く」|日経ビジネス
"アフターコロナ"の旅行はより贅沢なものになるだろう —— ホテル業界と航空業界の専門家が予想|Business Insider Japan
キャンピングカー、売り上げ好調 新型コロナ追い風|Yahoo!ニュース
ドライブインシアター
「オートキャンプ」のスタイルとも近い娯楽の在り方として、「ドライブインシアター」が再注目されつつあります。車を多数停めることができる、広い公園に大きな野外スクリーンを設置して、お客さんは各自のマイカーの車窓から映画を楽しむ、というスタイルです。
「ドライブインシアター」とは1990年代ごろまでカップルやファミリーの娯楽として親しまれていましたが、シネコンの台頭により一時はその文化が衰退していました。
しかし今、このウィズコロナの時代に「ソーシャルディスタンスを確保し、プライベート空間を守りつつ外で娯楽を楽しめる」という様式として、再注目されているのです。
参考:車から映画を鑑賞するドライブインシアターが復活!47都道府県で開催。Drive in Theater Japan Tour開始決定!|PR TIMES
ワーケーション
もう一つ、新たな旅行スタイルとして「ワーケーション」も注目され始めています。「ワーケーション」とは「Work(仕事)」+「Vacation(休暇)」の造語で、旅先のホテルや旅館、温泉、コテージなどに滞在しながらリモートワークを行う、それと並行して休養も楽しむ、というスタイルです。
コロナ禍で日本国内でも急速にリモートワークが広がり、この「ワーケーション」の需要も高まると予測できます。
都心の「密」を回避し、閑静な地方都市にしばらく滞在。ソーシャルディスタンス、プライベート空間を確保できる宿で仕事に集中して、一段落したら周辺の観光・散策・グルメや、温泉を楽しむ。
これからは、そんな新たな旅のスタイルも広まっていくかもしれません。
参考:ワーケーションができる宿泊施設を探せる「Workations(ワーケーションズ)」を2020年7月末にリリース|時事ドットコムニュース
無観客ライブ有料配信
「密になるリスクを避けたい」「デジタル消費の伸長」という消費者心理・行動に鑑みると、これからエンターテインメントの分野では「無観客有料ライブ配信」が新常態になっていくと考えられます。
2020年6月25日、人気バンド「サザンオールスターズ」がデビュー記念日に横浜アリーナで無観客ライブ配信を開催し、大きな注目を集めました。
有料の視聴権は3600円。通常、横浜アリーナの収容客数は17,000人ですが、視聴権を購入してライブ配信にアクセスした人は18万人に上り、6億5000万円の視聴権売上を記録したそうです。
通常の横浜アリーナでは、飲食しながらライブを楽しむということはまずありませんが、観客は自宅の画面前でご飯を食べながら、あるいはお酒を飲みながら、アリーナライブとはまた違った、それぞれに思い思いのくつろぎ方で、プライベートな空間にてライブを楽しむこともできます。
画面の向こうでは40台ものカメラがステージのあらゆる角度を隅々まで鮮やかに映し出し、市販のライブDVDや、豪華なセットを組んで収録されるテレビの歌番組以上のクオリティだったそうです。
この前後で、国内では「有料ライブ配信」を実施できるプラットフォームや、「有料電子チケット」を発券できるサービスが続々と登場。
音楽ライブの「有料ライブ配信」も、これからのエンターテイメントの新常態となっていきそうです。
参考:サザン無観客配信ライブ、18万人アクセス6億5000万円!|ITmedia NEWS
サザンオールスターズの横アリ無観客ライブが「特別」だった理由|CINRA.NET
ソーシャルディスタンスを保ち、プライベート空間を確保して楽しめる旅や娯楽が求められる
コロナ禍の消費動向の変化をデータから読み解き、今後の消費者行動はどんな方向に向かっていくのか、考察を述べてきました。旅行やエンターテイメントをはじめ、これからの消費行動のポイントとしては「ソーシャルディスタンスを保って」「よりプライベート空間の確保を重視」したものに注目が高まっていく、と言えそうです。
「新しい生活様式」で流行る商品やサービスは?
コロナ禍で訪れた生活習慣の乱れ。これからの消費行動の変化は?
新型コロナウイルス問題は、私達の日々の生活スタイル、消費行動などに大きな変化をもたらしており、まさに時代の分岐点とも言えます。ビジネスパーソン、特にマーケティング担当者であれば、コロナ前後で世間の消費動向がどう変わるのか、要点を押さえておきたいもの。この記事では、緊急事態宣言中の生活の変化に関するデータなどを用いて、今後の消費行動について読み解きます。
- コンテンツ
- コンテンツ(content)とは、日本語に直訳すると「中身」のことです。インターネットでは、ホームページ内の文章や画像、動画や音声などを指します。ホームページがメディアとして重要視されている現在、その内容やクオリティは非常に重要だと言えるでしょう。 なお、かつてはCD-ROMなどのディスクメディアに記録する内容をコンテンツと呼んでいました。
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