近年、子どもの憧れの職業の1つとしてもその名が挙がる「YouTuber」。「自分の好きなことを表現して生きている」いったイメージから、憧れの対象になっていると考えられます。
その中でも「フワちゃん」に代表されるように、YouTuberとしての活動から大ブレイクし、タレントとしてテレビ界に進出していく人も見られます。
また、その逆パターンで、テレビタレントのYouTube進出も同時に進んでいる状況にあります。
今回の記事では、今後「勝てる」YouTuberの方向性について、フワちゃんのブレイク要因考察なども交えて読み解いていきます。

YouTuberの現況

昨今の日本でYouTube上で活動している人は1万人〜2万人ほどいると言われています。

その中でも、チャンネル登録者数1位は「キッズライン♡Kids Line」という、子供たちが出演する子供向け番組のチャンネルです。2020年8月時点で1200万人を記録し、それまで1位だった「はじめしゃちょー」を抜きました。

その「はじめしゃちょー」はチャンネル登録者数896万人、同じくトップYouTuberとして知名度の高い「ヒカキン」は872万人、テレビでも出番の多い「フワちゃん」は74万1000人といった数値になっています。

平成30年7月に総務省が発表した調査によると、YouTubeの視聴者層は10代で93.5%、20代で94.0%、30代で87.4%にも上ります。つまり、10代〜30代においては実に9割前後の人が日頃からYouTubeを視聴している、ということになります。

現在、国内で活動しているYouTuberの人気とは、主に10代〜30代の人々によって支えられており、番組を制作するYouTuber側もそういったターゲット層に届く・響くものを考慮して活動していると考えられます。

参考:
プロのユーチューバーは日本に何人いるか|President Online

ユーチュラ|You Tubeランキング

平成29年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書|総務省

テレビタレントのユーチューバー化

人気YouTuberたちが10代〜30代の人々の人気に支えられている一方で、「テレビタレントのYouTuber化」も進んでいます。

この分野の先駆け・開拓者と言えば、芸人の「ヒロシ」が挙げられます。キャンプ好きを自認する同氏は、自然の中で「ソロキャンプ」を楽しむ動画を次々に公開し、チャンネル登録者数99万8,000人と高い人気を集めています。かつてテレビのお笑い番組で披露していた「自虐ネタ」は無く、静かに淡々と、自然と向き合う様子が人々に癒やしを与えているようです。また、この活動から「キャンプの人」という新たなポジションを確立。YouTubeを飛び出して、今度はテレビ・ラジオに「キャンプの人」として呼ばれる展開も見せています。

ヒロシ氏に追従するように、お笑いコンビ「バイきんぐ」の西村瑞樹氏も「キャンプ好き芸人」という新たなイメージを確立。ヒロシ氏同様、YouTubeとテレビの「ハイブリッド型」で同じ「キャンプ」をテーマに活動の場を広げています。

「従来、テレビで見せてきた芸風とは別の顔」を見せながらYouTuberとして活動する芸人はまだまだ居ます。

小島よしお氏は、早稲田大学教育学部卒という経歴を活かし、YouTubeで子供向けの教育番組チャンネルを展開。コロナ禍における緊急事態宣言、外出自粛期間中にこの活動を始めたということで、動画公開数は37本とまだ少ないながらも、チャンネル登録者数は9万5600人と早くも人気を集めています。

また、芸人による教育系チャンネルで言うと、オリエンタルラジオ・中田敦彦氏の「YouTube大学」も挙げられます。500本近くの動画を公開中で、チャンネル登録者数は308万人。日本史、世界史、宗教、神話、自己啓発などさまざまな「授業」動画を公開し、高い人気を見せています。

そして、「テレビで出番が減った、戦力外通告された」とメディアに対して自ら語り、2020年6月にYouTubeチャンネルを始めた、とんねるずの石橋貴明氏。あっという間にチャンネル登録者数100万人を突破しました。2020年10月22日には同チャンネル上で自身の誕生会の様子を約2時間にわたりライブ配信。リアルタイムでの再生回数が190万回、視聴者数は一時約13万人に達し、「テレビタレントのYouTuber化」の中でも今もっとも、世間の注目を集めている事例だと言えるでしょう。

参考:
ヒロシのぼっちキャンプ2|BS-TBS

CAMP西村チャンネル|YouTube

西村キャンプ場(シーズン1)|TSSテレビ新広島

小島よしおのおっぱっぴー小学校|YouTube

中田敦彦のYouTube大学 - NAKATA UNIVERSITY|YouTube

「とんねるずは死にました」―戦力外通告された石橋貴明58歳、「新しい遊び場」で生き返るまで|Yahoo!ニュース

石橋貴明、50代最後の誕生祭生配信が190万再生 視聴者13万超えに「東京ドーム2個分やばい」の声飛ぶ|Yahoo!ニュース

テレビタレントがYouTubeで見せるもの

テレビとは「マスに対してメッセージを届ける」が基本です。そのため、タレントの立場では、あまりニッチなネタはテレビで披露しにくいところがあるでしょう。また、テレビ番組とはCM時間も含めて時間が細かく決まっているものですから、あまり長尺のネタも披露しにくいと考えられます。

それに対し、ネットでは「ニッチ」「長尺」なネタの投下でユーザーの支持を得る側面もあり得ます。

つまり前述のように、テレビタレントがYouTubeで見せているものとは、淡々としたキャンプの様子や、教育ネタなど「今までテレビではできなかったニッチなネタ」や、自身の誕生会などの「長尺ネタ」あるいは「よりタレントのプライベートな顔が垣間見られるネタ」といったものだと言えます。

特に、テレビとは一歩距離を置いた、プライベートな素顔も垣間見られることで、一般視聴者にとっては自分と重ね合わせて見ることもできたり、より親しみを感じられるものです。

テレビタレントのYouTuber化の成功事例を見ると、表現の幅をテレビよりも広げつつ、一般視聴者との距離を縮め、親近感を醸成することにつながっていると言えるでしょう。

Z世代の消費行動とテレビ離れ

最近、マーケティング業界では「Z世代」へのリーチに高い関心が寄せられています。

この「Z世代」とは、1996年〜2012年の間に生まれた世代でいわゆる「スマホネイティブ」とも言われます。つまり、高速インターネットもSNSも当たり前の世界で生きている「生粋のデジタルネイティブ」で、生まれたときからYouTubeが身近にある世代に当てはまります。

この「Z世代」の間では「テレビ離れ」が進んでいるとも言われています。前述したように、10代・20代の90%以上が日常生活の中でYouTubeに接触しています。余暇時間・可処分時間をYouTubeに充てている人が多く、テレビに接触する時間が他の世代より減少していることも想像できます。

「テレビタレントのYouTuber化」について論じてきましたが、「Z世代のテレビ離れ」を考えると、YouTubeに進出していかないとZ世代にリーチできない、という課題もあるのではないでしょうか。

Z世代にリーチできれば、面白いと思ったらSNSなどで話題にしてくれるものです。

テレビタレントにとってYou Tubeとは「Z世代間での話題性を高めるためのツール」と捉えられている側面もあるのかもしれません。

参考:Z世代の価値観や消費行動の特徴を徹底解説|ferret

日テレ同時配信開始で聞こえる電波返上の足音 Z世代テレビ離れに放送の制度改正待ったなし|東洋経済Online

コロナ禍におけるテレビ界の変化

また、「株式会社ゼータ・ブリッジ」が2020月4月1日~9月30日に、全国地上波25局、BS放送6局を対象に調査した結果によると、「コロナ禍で企業CMが減少した」というデータも明らかになっています。

このことは例えば、テレビ各局の番組からスポンサーが減少するなど、何らか、テレビ番組制作サイドに変化があったとも推測できます。

コロナ禍において、いち視聴者としてTVを見ている限りでも、大人数がスタジオに会して収録できない様子が見受けられるようになりました。

テレビ界に携わるタレントの立場としても、緊急事態宣言下における外出自粛期間中に「今までとは違う、何か新しい取り組みをしなければ」という課題感が生まれたことも考えられ、実際のところ前述した小島よしお氏をはじめ、外出自粛期間中にYouTubeに進出したテレビタレントも存在しているのです。

参考:上半期、テレビCMの放送回数・時間は減少/Uber Eatsら大幅増の企業も【ゼータ・ブリッジ調査】|MarkeZine