TED(Technology Entertainment Design)は、大規模な講演会を主催している非営利団体です。

TEDの講演会はTEDカンファレンスと呼ばれ、テクノロジー(学術)分野・エンターテインメント分野・デザイン分野を中心に、その世界で活躍する人々が " TEDトーク " と呼ばれるプレゼンテーションを行います。

さらに、TEDでは「Ideas worth spreading(広げる価値のあるアイデア)」をスローガンとして標榜し、インターネットでも無料で簡単に " TEDトーク " を閲覧することができます。

今回は、TED トークのデザイン分野に着目し、デザインの基礎がない人でもわかりやすく概念が学べるTED動画をまとめました。

デザインの概念が学べるTED動画8選

1. ドナルド・ノーマン「感情に訴えるデザインの3つの要素」

01_ドナルド・ノーマン「感情に訴えるデザインの3つの要素」.jpg
ドナルド・ノーマン「感情に訴えるデザインの3つの要素」

カリフォルニア大学サンディエゴ校名誉教授でデザイン批評家のドナルド・ノーマン氏は、デザインには3つのレベルがあると述べています。
Web上でモノを売る時にも、ブランディングやストーリーテリングが重要だと言われますが、それがなぜ大切なのかは、この「デザインの3つの要素」を学ぶことでわかります。

彼の認知科学者としてのデザイン論を論じた書籍『誰のためのデザイン?』も、デザインとユーザビリティの関係を捉える上で非常に参考になるはずです。

押すのか引くのかわからない扉、回すとどれくらいの温度になるのかわからない蛇口、どちら向きに入れればいいのかわからない電池など、頻繁に出会う具体例を通してデザイナーの独善的なデザインを戒めてくれます。

2. ポール・ベネット「デザインは細部に宿る」

02_ポール・ベネット「デザインは細部に宿る」.jpg
ポール・ベネット「デザインは細部に宿る」

故スティーブ・ジョブズ氏も「神は細部に宿る」という言葉を頻繁に口にしていたと言われていますが、ポール・ベネット氏は*「デザインは細部に宿る」*という言葉でデザインにおけるこだわりを表しています。

このプレゼンテーションでは、組織やシステム、国家といった「大きなもの」と、私たち個々人といった「小さなもの」との調和が語られています。
医療現場で、実際に看護師が患者にどうふるまっているかを観察することで、人間的な行動を起源としたシステムこそデザイン性を感じることがよくわかるでしょう。

3. ジンソップ・リー「五感に訴えるデザイン」

03_3._ジンソップ・リー「五感に訴えるデザイン」.jpg
ジンソップ・リー「五感に訴えるデザイン」

「見た目がよいものだけが優れたデザインなのか」
デザイナーのジンソップ・リー氏はこのように問いかけます。

私たちはデザインを視覚的にしか評価しませんが、聴覚や触覚など、五感を軸に分析して、数値化し、足りない部分を補うことで、より良いものにできると言います。
このプレゼンテーションを通して、全身の感覚を使ってデザインを捉えることの重要性に気付くことができるでしょう。

4. パオラ・アントネッリ「デザインをアートとして捉える」

04_パオラ・アントネッリ「デザインをアートとして捉える」.jpg
パオラ・アントネッリ「デザインをアートとして捉える」

ニューヨーク近代美術館(MoMA)のデザインキュレーターであるパオラ・アントネッリ氏は、デザインを単なるデコレーションとして認識する風潮に警笛を鳴らしています。
モノと人との関係だけでなく、デザインしたモノを通しての持続的な対人関係の着目にこそ、突破口があるといいます。

イスラエルの学校で配布される幼児用ガスマスクのデザインや、足の指の間にはめて恋人に舐めてもらうキャンディのデザインなど、MoMAだからこそ出会うデザインの例が聴衆を魅了します。

先入観と向き合うことで見えるデザインの本質を考えさせられるプレゼンテーションです。

5. マシュー・カーター「フォントをめぐる私の人生」

05_マシュー・カーター「フォントをめぐる私の人生」.jpg
マシュー・カーター「フォントをめぐる私の人生」

VerdanaやGeorgeaなど、日常的によく見るフォントの多くがマシュー・カーター氏によるデザインだということをご存じでしたか。

彼のプレゼンテーションでは、フォントに含まれるあらゆる文字の1ピクセルに至るまでのキャリアの全貌が明らかになります。

テクノロジーが現在ほど発達していなかった時代に出会った、美しさを追求するデザイナーと技術的な制約との葛藤を垣間見ることができます。

6. クリス・ダウニー「目の不自由な人を思ってデザインすると」

06_クリス・ダウニー「目の不自由な人を思ってデザインすると」.jpg
クリス・ダウニー「目の不自由な人を思ってデザインすると」

建築家のクリス・ダウニー氏は、2008年に突然失明してしまいました。
彼の住むサンフランシスコの街を、目が見えなくなる前となった後で比較し、盲目の人にやさしい思いやりのあるデザインが、実際は盲目であるかどうかにかかわらずすべての人の生活を豊かにするものだと語ります。

デザインとアクセシビリティの関係性について、深く考えさせられるプレゼンテーションです。

7. サイモン・シネック「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」

07_サイモン・シネック「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」.jpg
サイモン・シネック「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」

このプレゼンテーションはサイモン・シネック氏によるリーダーシップ論についてのものですが、デザインにも非常に通じるところがあります。
シネック氏はトークの中で、デルの失敗とアップルの成功について言及し、優れたデザインはビジョンと結びついていることを語っています。

8. 佐藤卓「あ moment」

08_佐藤卓「あ_moment」.jpg

子どもの頃、父親と一緒に壊れた時計の原因を究明しようとして出てきた言葉「あっ」。
東京で開催されたTEDx Tokyoのカンファレンスで、NHK教育テレビで『デザインあ』という番組を担当しているデザイナーの佐藤卓氏は、小さな「あ」を日常の中に見つけていくことの大切さを語ります。

「あっ」という言葉は、問題解決に取り組む時に、今までは気づかなかった新たな発見によって出てくる言葉です。
デザインでも、自分の想定外のデザインに出会うと、「あっこんなデザインがあるのか」と思わずうなずいてしまいます。
最近同じようなものしかデザインしてないな、と思ったらぜひ見てほしいプレゼンテーションです。