企業のロゴマークは、企業にとってアイデンティティの1つです。
ロゴマークには取り扱っている製品やサービスだけでなく、理念や創業精神を含むことで企業のブランディングにもつながるでしょう。

ですが、いざロゴデザインを作成しようと思っても、何を参考にしたらいいのかわからずデザインに迷ってしまう人もいるかもしれません。
そんな方は、日本人にとって身近なロゴである「家紋」を参考にしてみるのはいかがでしょうか。

今回は家紋から学ぶロゴデザインのコツを解説します。
家紋は、代々引き継がれてきた固有の紋章です。袴や杯など公の場で利用する道具にも用いられ、その家のアイデンティを表す存在として利用されてきました。
「企業のロゴデザインは自社で考えたいけどデザインの知識はないし…」という方は、まずは身近な存在から学んでみるのもいいでしょう。

家紋とは

「家紋」とは、各家で定めている家のしるしを指します。名字にちなんだものや、歴史的なことがら、信仰にちなんだものなどデザインの由来は様々です。
特に信仰にちなんだ家紋の場合、神社で定められている「神紋」をもととしたものもあります。

古くは武家や天皇家のみに認められたものでしたが、江戸時代には庶民が用いるようになり、現代に至ります。この時、庶民は武士と同じ家紋を用いることが禁じられていたため、工夫を凝らした独自の家紋を作り出しました。
現代、多様な家紋が存在するのは、江戸時代に庶民にまで家紋が広がったことに由来しているでしょう。

また、家紋は小袖や肩衣などの衣服や杯のような装飾品にも用いられ、婚姻などの公の場で家を表すしるしとしても機能しています。

参考:
[調べものに役立つ資料案内|埼玉県立図書館] (https://www.lib.pref.saitama.jp/stplib_doc/reference/pathfinder/pathfinder1102.html)
江戸時代、家紋は勝手に用いることができたのか。何か制約のようなものがあったのかを知りたい。 | レファレンス協同データベース
[「家紋」を知る|結婚指輪通販 ヘブンリーレッド] (http://www.heavenly-red.jp/blog/bridal/2010/05/kamon.html)
小学館『精選版日本国語大辞典』(2006)

家紋の事例

家紋はその家のアイデンティティを示す大切な要素です。
そのためシンプルなデザインながらも、その家ならではのコンセプトを含んでいるのが特徴です。

では、家紋のデザインにはそれぞれどういった意図が含まれているのでしょうか。
代表的な3つの家紋について紹介します。

参考:
[『 家紋の由来』|国立国会図書館デジタルコレクション ] (http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/780553)

1.桐花紋

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桐花紋は、植物の「白桐」をモチーフにした家紋です。

桐花紋の1つ「五七の桐」は日本政府で用いている家紋でもあるため、首相官邸による記者会見などを通して見かけたことがある方も多いでしょう。

では、なぜ日本政府はこの家紋を用いているのでしょうか。

桐は、聖天子の出現に合わせて現れる伝説上の生き物・鳳凰が宿る木だと言われており、一説によると8世紀後半頃から天皇家の着衣などに用いられてきたようです。

なお、3枚の桐の葉の上に7つの桐花、左右に5つの桐花をデザインしたものが「五七の桐」であり、同じ桐花紋には、花の数が異なる「五三桐」やモチーフとしている桐の種類が異なる「文兆桐 」などが存在します。

参考:
お答えします|首相官邸
[家紋-桐(きり) - 家紋一覧|お仏壇のよねはら] (http://www.butudan.co.jp/kamon/index.php?kamon062)

2.葵紋

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葵紋は植物の葵の葉をかたどった家紋です。

葵祭で有名な京都の上賀茂神社・下加茂神社の神紋として知られており、祭神である加茂明神を信仰していた人々が家紋として用いました。

江戸幕府を開いた徳川の家紋でもあり、徳川家康は天正14年(1586)年以降、徳川家及び重臣の本多家以外での使用を禁じています。
徳川本家の三つ葉葵、紀州徳川家の六つ葵など、本家分家それぞれに異なるデザインの葵紋を用いました。

参考:
[家紋の種類や由来・意味・歴史など|額と盃の専門店家紋亭] (http://www.anniversarys.co.jp/page134.html)
くらしの植物苑だより No.21|国立歴史民俗博物館
『ブリタニカ国際大百科辞典』(2009)

3.巴紋

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「巴紋」は宇佐八幡宮に代表される八幡神社の神紋であり、八幡神社を信仰する人々が家紋として用いてきました。
源氏の家紋でもあったため、それにあやかって多くの武家が自分の家の家紋として定めています。

波の一番高く盛り上がっている部分を図案化したものだと言われており、そのデザインが日本古来の武具「鞆(とも)」の絵の形に似ているから「ともえ」と名付けられました。

参考:
Q&A|明治神宮
小学館『精選版日本国語大辞典』(2006)

家紋から学ぶロゴデザインのコツ

ここまで紹介してきたように、家紋にはそれぞれ由来があり、モチーフも様々です。
では、企業のロゴデザインを考える上で、家紋からどういったデザインのポイントが学べるのでしょうか。
3つのポイントを紹介しましょう。

1.シンプルなデザイン

家紋は着衣や杯などに用いられてきたこともあり、比較的シンプルなデザインが目立ちます。複数のモチーフを掛け合わせる際にも図案としての統一感はずらさないのがポイントでしょう。
また、線対称や点対称になっているデザインが多く、全体としてまとまりのあるデザインとなっています。

2.アイデンティティを表すモチーフを選ぶ

家紋の最大の特徴は、モチーフに各家のアイデンティティを示すものを選択していることでしょう。
例えば、桐花紋は伝承をもとに桐というモチーフが選ばれています。
自社の理念や創業精神などを辿り、アイデンティティを示すモチーフを探してみるのもいいでしょう。

3.モノクロでもわかるデザイン

家紋は基本的に2色でも認識できるデザインとなっています。
そのため袴へ家紋を1色で縫い付けたり、家財道具に金箔で表現したりといったことが可能です。

企業のロゴも同様にモノクロでもわかるデザインにすることで、一色の印刷でも明確に認識できるでしょう。
実際、TwitterやFacebook、LINEといった主要なSNSは白とメインカラー一色でロゴを作成しており、モノクロでもわかるようになっています。

まとめ

「家紋」は日本において長年引き継がれてきた家特有の紋章です。刺繍や漆などで表現されてきたこともあり、シンプルなデザインが多いのも特徴でしょう。
「子孫繁栄」という思いを生命力の強い葵や葦に見立てた家紋や、武具や車など身近な道具を図案化したものなど、モチーフも様々です。

企業のロゴデザインを考える際も、このような家紋の特徴をもとにシンプルでモチーフに合わせた内容を考えるといいでしょう。
今回紹介したものは家紋の中でもほんの一部です。家紋は『日本家紋総鑑 』や『都道府県別姓氏家紋大事典』などで調べられるので、デザインの参考にしてみるのもいいかもしれません。

参考:
[姓氏・家系 | 調べ方案内 | 国立国会図書館] (https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-honbun-101070.php)