昨年2016年は「VR元年」と呼ばれ、プロモーション動画からコンシューマーゲームまで様々なVRコンテンツがリリースされました。

VRコンテンツは、専用のヘッドマウントディスプレイを使って視聴するものもありますが、スマートフォンで気軽に利用できるのも普及した理由の1つです。

視聴は気軽にできる一方で、制作は専用のカメラと編集ソフトが必要であることから、スキルや費用などコストが掛かるため導入へのハードルが課題でした。

そのような状況のなか、米GoogleとYouTubeが共同で発表した新しいVRコンテンツのフォーマット「VR180」が制作面のハードルを大幅に下げるのではないかと期待されています。

今回は、「VR180」の概要と、制作面におけるメリットやコンテンツ活用事例をご紹介します。

YouTubeが発表した「VR180」とは?

「VR180」とは、GoogleとYouTubeが共同で手がけた新しいVRフォーマットです。VR180という名の通り、見たままの光景を180°の視野で視聴できるのが特徴です。

平面を立体で見ることができる「立体視」を利用した技術で通常の映像と比べ、臨場感を得られる特徴があります。
視聴環境は、Google CardboardやPS VRのようなVRゴーグルでの視聴が推奨されていますが、スマートフォンでも視聴できます。

撮影者の目線で撮影できるため、撮影者は自分自身の映り込みを気にせず「見たまま」を映せるのが特徴です。
これにより、大掛かりな機材を使わずにVRコンテンツを制作できるようになりました。

参考:
VR180 - Google VR

既存のVRコンテンツとの違い

既存のVRコンテンツとの違いは、撮影できる視野の広さです。通常VRコンテンツは360°全方位を撮影しますが、VR180はその半分の180°にカットされています。

そのため、真後ろを向くと映像は無くなり、360°のVRコンテンツのようにあらゆる方向を映像に収めることはできません。
そのため、前面の視野のみで完結するコンテンツにしか対応できないという制限があります。

しかし、人間の視野角は両眼視でおよそ90°〜100°です。
VR180は、それを超えた180°で左右上下を映し出せるため、臨場感を表現できるという仕組みです。

視野が「180°」であるメリット

VR180の視野が180°であるメリットを2つご紹介します。

1つ目のメリットは、視野が半分になることで、360°全方位カメラの同じ画質の映像と比較したとき高画質化しやすいというメリットがあります。
これにより、映像の細部まで解像した立体感のある映像が撮りやすくなります。

2つ目のメリットは、撮影スキルを問わないことです。360°全方位カメラで撮影する場合、「撮影者が映りこまない撮り方」が重要です。

これは、一人称視点でVRならではの没入感を表現するためです。一方で、VR180であれば、そもそも背面は映らないため撮影者はカメラを構えるだけで一人称視点で撮影できます。

360°全方位の本格的なVRコンテンツ制作はできませんが、カジュアルなドキュメンタリー映像やYouTuberによるビデオブログなどの用途で得られるメリットは大きいでしょう。

誰でも「VR180」コンテンツを制作できる理由とは?

低コストで導入できる専用カメラを開発中

VR180専用カメラ

VR180 - Google VR

現在、Google DaydreamチームとYI TechnologyやLG、レノボなど電子機器メーカーが共同でVR180向けの専用カメラを開発しています。

価格は、従来のVR専用カメラよりも低価格で購入できるものを目指しており、一般的なデジタルカメラと同価格帯に落ち着く見込みがあります。

VRコンテンツ用にカメラや周辺機器を揃えるには予算的に厳しいという方にとって気軽に利用できるのが特徴です。

参考:
YI 180 VR Camera | YI Technology

一般的な動画編集ソフトで編集可能に

YouTube日本版公式ブログによると、VR180フォーマットで撮影したVR180のコンテンツは、Adobe Premiere Proなど一般的な動画編集ソフトへの対応も進めていると発表がありました。

動画編集を既に経験しているユーザーであれば、今まで通りの感覚でVR180コンテンツを制作できます。また、既にAdobe Premiere Proなど多くの動画編集ソフトで360°VRコンテンツの編集に対応しはじめています。

しかし、アクションカムを複数台使う撮影手法の場合、別途ステッチ(動画をつなぎ合わせる)ソフトが必要でした。
その点、VR180フォーマットは単一ソフトで気軽に編集できるのが特徴です。

次に、YouTubeが公式に作成した「VR180コンテンツ」の再生リストからコンテンツ活用事例をご紹介します。

参考:
YouTube Japan Blog: VR180、180 度のバーチャル リアリティで見る世界

「VR180」を利用したコンテンツ活用事例

次に、YouTubeが公式に作成した「VR180コンテンツ」の再生リストからコンテンツ活用事例をご紹介します。

再生リスト:
VR180 のご紹介|YouTube

1.ミュージックビデオでの活用事例

The Poppy VR180 Experience

アメリカの歌手The Poppyのミュージックビデオです。定点から撮影したシンプルな構成の動画ですが、VR180の立体視の効果により立体感がでます。

被写体として背面を映す必要がなく、一方でライブ感(現実味のある雰囲気)のある撮影をしたい場合に活用できるでしょう。

2.ドキュメンタリーコンテンツでの活用事例

Coachella VR180 Tour - Coachella 2017

アメリカの音楽フェス「コーチェラ・フェスティバル」の様子をVR180フォーマットで撮影した動画です。一人称視点で現地を歩いているかのような雰囲気で撮影されています。

このようなドキュメンタリー系コンテンツのように、撮影者の目線をそのまま表現したい場合に活用できます。

しかし、撮影者が振り返らないかぎり背面は見えないため、その場合は360°全方位カメラでの撮影が適しています。

まとめ

VR180は視野を半分の180°にカットしたことで気軽にVRコンテンツを作成できるようになります。

撮影には専用のカメラが必要ですが、価格は一般的なデジタルカメラと同等に落ち着く見込みがあります。また、編集ソフトはAdobe Premiere Proなど一般的なソフトが利用できるのも良心的な仕様です。

360°全方位の撮影が必要な場合、VR180では対応できませんが、簡易的なVRコンテンツ制作には十分活用できるでしょう。

なので、企業のWeb担当者からユーチューバーまで幅広いユーザーの活用が期待されています。VR180の専用カメラの発売後、どのようなコンテンツが登場するのか、注目です。