連載「 株価と決算から見る デジタルマーケティング市場 」の2023年8月版です。

8月の株式市場を大きく動かしたニュースと、日本の上場デジタルマーケティング企業26社の中で大きく株価が動いた会社にフォーカスして、その背景を検証します。
自社をとりまく業界の状況を、ぜひチェックしてみましょう!

2023年8月の株式市場を大きく動かしたニュース

8月は米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めが長期化するとの観測から米長期金利が上昇したことや、中国不動産大手の破綻申請を受けて中国経済への不安が高まったことから株式市場は世界的に軟調でした。NYダウは前月比で2.4%下落しています。

米景気のリスクは商業用不動産価格の下落

米国はこれまでの大幅な利上げに伴う景気抑制効果から、経済が減速するとみられます。ただし、雇用が安定しており、個人消費が底堅いことやインフレが鈍化していることから、景気の腰折れは回避されるとみられます。

米景気は低水準ながらプラス成長を続け、ソフトランディング(軟着陸)する見通しですが、当面のリスクは商業用不動産価格の下落だと言えます。コロナ禍後もリモートワーク比率は一定の水準に留まり、そもそものオフィス需要が減退していること、金利の急騰が要因です。

商業用不動産保有する投資家の多くは借金をして資金を確保していますが、その借金の金利が短期間で急騰したことでコストが投資リターンに見合わなくなり、手放す投資家が多いために価格の下落が続いています。

中国の不動産市場も大きなリスク要因

また、それ以上に大きなリスク要因は中国の不動産市場と言えます。中国の大手不動産会社が続々と資金繰りに行き詰ったり、経営危機に陥ったり、破産したりしています。その引き金となったのは2年前に導入された、不動産融資の厳格化です。

中国の不動産ビジネスは日本と異なり、建設している最中から購入者が代金を支払う形になっているので、開発者には住宅が完成する前にお金が入り、その資金を次の開発に充当する自転車操業の様なことができていました。ただし、中国政府が2020年8月に「三条紅線」という不動産融資厳格化の方針を示して以降はそれができなくなっています。

三条紅線とは
・資産に対する負債比率が7割を超えないこと
・自己資本に対する負債比率が100%を超えないこと
・現金に対する負債比率(現預金÷有利子負債)が1を上回ること
の3つを指します。
これら

上場デジタルマーケティング企業の株価騰落率ランキング(2023年8月月間)

【特集】株価と決算から見る デジタルマーケティング市場