アートやテクノロジーなどの最先端の情報を、動画で届けているメディア「bouncy(バウンシー)」。そんなbouncyが、すでにテキストメディアで活躍しているライターを「動画ライター」として起用することが先日話題になりました。

前編では、bouncy編集長を務める清田いちる氏に、動画ライターを募集したbouncyの狙いや、今後動画メディアがどのように変化していくかをお伺いしました。後編では、実際にbouncyで動画ライターとして活躍されているフリーライター 砂流恵介氏に、動画ライターを初めて大変だったことや魅力などをお話いただきます。

▼前編の記事はこちら▼
動画なのに「ライター」?bouncyの戦略に見る、動画メディアの未来

砂流恵介氏プロフィール

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1983年、広島県生まれ。秋葉原でPCショップ販売員の経験を得て、日本エイサーへ入社。宣伝・広報を担当する。2013年12月退社。 手段を選ばないゲリラ的なPRを得意とする。現在は、BtoC企業を中心にPR業務やコンサルタント、WEBメディアでライター、ゲーム実況配信など、多方面で活動している。

動画メディアは、嘘をつけないところが面白い

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ferret:
前編では、bouncy編集長の清田さんに動画コンテンツの現状や、bouncyのメディアとしてのあり方を語っていただきました。後編では実際に、実際の動画ライターの詳細に迫って行きたいと思います。

砂流氏:
よろしくお願いいたします!

ferret:
前編では「テキストコンテンツはこれから動画化していく」という話がありました。編集長の清田さんは、今後ライターのキャリアとして「動画ライター」という選択肢があるんじゃないかと考えたんですよね。

清田氏:
はい。メディアが動画化していくのであれば、今テキストで記事を作っているライターが取材力や企画力を活かして、動画でも活躍できるんじゃないかと思ったんです。

ただ、テキストのライターだと撮影や動画編集をやったことがないから、ちょっとハードルが高いですよね。

そこで、これから動画編集も学びたいと思っているライターさんに、動画の撮影や編者の仕方を教えて、動画で自由にコラムを作成してもらう案を思いつきました。

彼らはライターの基本として、企画力や構成力があります。そんな彼らに動画編集のコツさえ教えてしまえば、動画でもそのスキルが活きると感じました。

ferret:
なるほど。動画ライターの砂流さんは、実際に動画の企画からやられているのでしょうか?

砂流氏:
はい。僕はゲームが好きでゲームに関するコラムを始めたので、「東京ゲームショウで1日中歩き回ってアポ無し突撃!」という動画を作りました。

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引用:ゲームに精通した著名人や有名人にアポなし突撃!2019年のゲーム業界はどうなる? 【TGSレポ】

清田氏:
砂流さんの場合、ゲームでコラムを書くというのが企画力ですよね。突撃で行ってそこでなんとかなるだろう、なんとかしようって言うのがWeb編集者ならではの動きだなと思います。

上手に構成してテンポよく並べて見やすくするというのも、まさにWebライターならではの構成力だと思います。

ferret:
たしかにそうですね。砂流さんの動画の場合、砂流さんが顔を出して取材をしていますよね。動画に顔出しをすることに意図はあるのでしょうか?

清田氏:
動画メディアの場合は、作り手の顔を見せることが大切だと思っています。

動画だと何かを紹介するときに、紹介する人の瞳の奥に「本当にそのモノを良いと思っているか」「楽しいと思っているか」が全部映し出されるんですよね。

テキストでももちろん、「書き手の魂が乗っている文章」と「そうでない文章」はあります。ただ、それはある程度の読解力がある人じゃないとわからないと思うんですよ。

でも動画で顔出ししていると、それが全部透けて見えるんですよね(笑)「本当にそのことに熱狂していて、教えたいという情熱を持っているか」が問われます。動画メディアの顔出しは、嘘がつけないのが面白いところですね。

Webライターが動画ライターをやるメリットは?

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ferret:
ここからは砂流さんにお伺いしたいのですが、動画ライターの魅力ってどんなところにありますか?

砂流氏:
動画編集のスキルを学べるのはメリットですね。ふだん生活していると、動画を作る機会ってなかなかないじゃないですか。それを教えていただけるのは本当に大きかったです。

bouncyの動画は最大2分と決まっています。その中で「こう撮ったものはこう使った方がいいよ」「最初にメインの素材を持ってくるといいよ」など、動画の基本を1から教えてもらえるのはありがたいですね。

ferret:
砂流さんはwebライティングの仕事と、動画ライターの仕事と両方されていますよね。動画ライターだからこその難しさはありますか?

砂流氏:
文章の場合は、取材をしていて「こんな絵が欲しいな」というのがすぐ浮かんでくるのですが、動画だとまだそれが思い浮かばないので、そこは難しいところですね。

ferret:
なるほど。それでは動画ライターを始めてよかったと思うことはありますか?

砂流氏:
海外の人に自分が何をやっているか説明しやすくなりました。

最近台湾に行ったんですけど、「何をやってるの?」と聞かれて「僕はWebのライターやPRをやっていて〜」と説明するより、パッと2分間の動画を見せる方が早いことに気が付いたんです。

一瞬で「コイツはこういうやつなんだな」とがわかっていろんな人に拡散してもらえる。テキスト記事だと日本語だから、海外の相手に内容は伝わらないけど、動画なら伝わるのはすごいなと思いました。

ferret:
確かに動画なら、言語がわからなくてもある程度の理解はできますよね。

砂流氏:
あとは、テキストで書いていたときに反応をくれていた人とは違う層の人たちからコメントをもらえるようになりました。

知り合いから「最近動画ライターの活動見てるよ」と言われることも多くなりましたね。2分間にまとめた動画に対して「あれすごくわかりやすかった!」などの反響もあります。

テキストの記事を読む気がしない人でも、「2分くらいだったら見てみようかな」という人は多いんじゃないかって思いました。

ferret:
これまでとは違う層の人たちが、砂流さんの記事を読んでくれるようになったんですね。

砂流氏:
はい。もともと僕はガジェット系の記事などを主に執筆していました。その時にインタビュー記事を公開しても、周りの反応は「あ、この人インタビューしたんだね」で終わってたんです。

でも動画は2分間全部見てくれる方が多いので、「あそこすごい良かったよ!」という反響がもらえることも増えました。今まで以上に「見てもらえてる」と感じられることが、僕の中ではすごく大きいですね。

動画編集は未経験でも可能?

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ferret:
「動画をビジネスに活用したい」と考えている人は増えていると思いますが、その時にネックとなるのが動画編集スキルだと思います。砂流さんはまったく未経験のところから動画編集をはじめてみていかがでしたか?

砂流氏:
一番つまずいたのは、動画編集ソフトの使い方かもしれないですね。はじめは何がわかっていないのかもわからないので、何を聞けばいいのかもわからなくて(笑)

でも検索してどうにか解決できることも多いので、だんだん慣れてきました。

ferret:
動画を編集して公開するまでに、どれくらいの時間がかかるのでしょうか?

テキストライティングと比べると、どちらが時間かかっていますか?

砂流氏:
動画だと出すまでに5~6時間かかっていますね。テキストで記事を出すより、動画でコンテンツを出す方が時間はかかっていると思います。

ただ、それはまだ僕が動画撮影のコツがわかっていなくて、とにかく素材をたくさん撮っているから、選定に時間がかかっているというのが大きいです。

動画撮影のスキルが洗練されれば、もっと短い時間で公開できるのではと思います。取材対象を見て撮れる絵がパッと想像できれば、撮影から編集、公開までの時間はもっと縮まりますね。

求められるのは、 動画編集スキルよりも企画力

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ferret:
清田さん、砂流さんのお話を聞いていると、これから「動画ライター」というポジションはもっともっと増えきそうですよね。

動画ライターとして活躍するには、どのようなスキルが求められるのでしょうか。

清田氏:
企画力ですね。

動画ライターの場合、必ずしも「動画編集のスキルがある人」が活躍できるわけではないんです。動画編集のスキルがあっても、そもそも「動画コンテンツを企画する」という概念のない場合は向いていないかもしれません。

例えばテレビ出身の方だと、チーフディレクターがコンセプトを決めて企画が上から降りてくる形なので、動画編集のスキルはあるけれど企画を考えるのが苦手な人がいるんですよね。それだと0から面白い動画を作っていくことは難しい。

それよりは、Webライターや編集者のような視点を持っている人のほうが活躍できると思います。

企画を立てて、構成を考えて「こういう風にしたら面白いと思います」「○○さんのインタビューを撮りに行きたいです!」とどんどんアイデアが出てくる人は向いているなと思います。

砂流さんのように、好きなジャンルがあるライターさんは強いですね。

ferret:
砂流さんは、これからどんな動画ライターになりたいですか?

砂流氏:
僕は家庭向けのゲーム機が好きなので、そういったゲームのコラムをこれからも追求していきたいです。

今は東京ですけど、近々台湾で行われるポケモンのイベントにも行きますし、2019年に福岡で開催される「EVO JAPAN」という格闘ゲームの祭典にも行きたいなと思ってます。地方や海外にも積極的に足を運んで撮りたいなと。特に海外の方が動画には強いだろうなってのがありますから。

ferret:
「ゲーム実況」だけではなく、「ゲームコラムを動画で」というのはとても新鮮ですね。砂流さんの動画記事、楽しみにしています!

▼前回の記事はこちら▼
動画なのに「ライター」?bouncyの戦略に見る、動画メディアの未来