近年、インターネットのプライバシー保護の関心が高まり、ブラウザのCookieが制限されるようになりました。EU圏ではEU一般データ保護規則が制定され、Apple社のSafariブラウザではIntelligent Tracking Prevention(以下、ITP)によってCookieによるトラッキングを禁止する機能が搭載されています。

ログリー株式会社(本社:東京都渋谷区/代表取締役:吉永浩和、以下:ログリー)はこれらの背景を鑑みて、2019年5月10日、Cookieをまったく利用せずにWebページのアクセス情報からユーザーの性別・年齢などのデモグラフィック情報、そして興味・関心などのサイコグラフィック情報を推定する技術を確立、特許の取得に至ったと発表しました。

参考:
Cookieを使用せずにユーザー属性を推定する技術を確立し、特許を取得 | ログリー株式会社

ユーザーのプライバシーに配慮した広告配信

ログリーが実施したスマートフォンにおけるITPの影響調査では、iOSのバージョンアップ以降、Cookieによるトラッキング捕捉数が約25%減少していることがわかりました。

image2.png

出典:https://corp.logly.co.jp/news/20190510/000095

Cookieによるトラッキング捕捉ができないと、企業は従来のようにCookieを介した適切な広告配信ができなくなり、同時にユーザーにも自身に関係のない広告が届くようになります。

ログリーではこれらの背景を鑑みて、2018年1月よりユーザーのプライバシーに配慮した広告配信を可能とする技術の開発に努めてきました。2018年7月には、「ユーザーの興味を分類・可視化する技術に関して特許を取得」の文面を発表しています。それをさらに推し進め、今回の特許の取得にいたりました。

高速なユーザー属性の推定が可能に

今回の特許技術では、ページの内容を利用せずにアクセスログやURL、端末情報などをパターン化し、機械学習させることで、高速なユーザー属性の推定が可能となりました。属性の推定結果を広告配信に適用するシミュレーションを行った結果、アルゴリズムが適用可能と判断した広告の約90%でCPA、CTRCVRの改善が見込めることが判明しています。

image1.png
出典:https://corp.logly.co.jp/news/20190510/000095

従来、ユーザーの属性を推定する技術として、Cookieを用いてユーザーが過去に閲覧したWebページの履歴(行動履歴)から機械学習によってユーザーを分類し、属性を推定する手法が用いられてきました。しかし、Cookieが利用できない端末においては行動履歴を蓄積することができず、アクセスした単一ページの情報しか保持できません。この場合、ページの内容を解析することでユーザーの興味を推定する手法が用いられてきましたが、この手法ではテキストの形態素解析や意味解析を行う必要があり、膨大なWebページを解析するには多くの時間と計算リソースが必要でした。また、即時性を求められる広告配信においては利用が難しい状況でした。さらに、グローバルに適用するには地域ごとに言語対応をしなければならないという課題もありました。