音楽サービスから自動車まで、日常生活のあらゆる場面でサブスクリプションサービスを目にするようになりました。

では、サービス提供者は、従来の売り切り型のビジネスから、このサブスクリプションビジネスへの変化をどのように受け止め、収益につなげるべきなのでしょうか。

今回は2019年10月31日(木)に開催された、アライドアーキテクツ株式会社主催の「サブスクサミット2019」より、Zuora Japan株式会社の桑野順一郎氏による基調講演、「サブスクリプションビジネス収益化成功のポイント〜B to C 編〜」の内容をレポートします。

なぜサブスクリプションサービスが広がっているのか

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2015年はサブスク元年と呼ばれ、様々なサブスクリプションサービスの提供が始まった年でした。その代表的なサービスとして定額制の音楽・動画配信サービスがあります。その後、さまざまな業界でサブスクリプションサービスが広がってきましたが、その背景にはユーザーのニーズの変化があると桑野氏は話します。

「このサブスクリプションサービスの広がりは、顧客のニーズが『所有から利用へ』『モノからコトへ』と変化していることが大きな要因です。この変化により、企業はモノが売れないプロダクト販売の限界を迎え、サブスクリプションビジネスへと舵を切るようになりました」(桑野氏)

このサブスクリプションビジネスへの転換を桑野氏は事例を交えて解説します。

「アメリカの自動車メーカーであるフォードもサブスクリプション型のカーシェアリングサービスを始めました。これは、ユーザーのニーズが『車を所有すること』から『移動すること』へと変化していることを表しています。また、このようなサービスの登場が別のサブスクリプションサービスを生むことがあります」

「一例として、フランスの高速鉄道TGVもサブスクリプション型の定額乗り放題サービスを提供しはじめました。それまではヨーロッパでの長距離移動といえばバスや飛行機、TGVだったのですが、カーシェアリングやライドシェアなどにより安価に移動できるサービスが普及し、鉄道利用のニーズが減ってきたため、このようなサービスを始めています」(桑野氏)

顧客と直接繋がる重要性

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桑野氏は、サブスクリプションビジネスの成功のためのポイントとして、顧客と直接繋がることが重要だと言います。

「サブスクリプションビジネスを正しく理解できない落とし穴として、サブスクリプションを従来のプロダクト販売の延長で捉えて、単なる課金形態の変化だと思ってしまうことがあります。従来は誰が顧客となるかは二の次で、良いプロダクトを作ってたくさん売るだけでビジネスが成立していました。しかし現在は変わり続けるユーザーのニーズを理解して、サービスを永遠のベータ版としてアップデートを続けていかなければなりません。この変わり続けるユーザーのニーズを掴む、いわば『究極の御用聞き』となるために、ユーザーと直接繋がれるサブスクリプション型のサービスが広がっています。これは単なる課金形態の変化ではありませんよね」(桑野氏)

続けて桑野氏は、このユーザーとの繋がりをギターメーカーfenderの事例を交えて解説します。

「アメリカのギターメーカーであるfenderはギターの教則動画をサブスクリプションサービスとして提供しています。これはギター購入者の9割が演奏の難しさを理由に挫折してしまうことを背景に、ギター購入者の生涯に渡っての機会損失を防ぐために提供されていますが、このサービスにはもう1つの面があります。これまでfenderの直接的な顧客は、商品を卸す楽器店でしたが、この教則動画によって実際にギターを演奏するユーザーと直接繋がれるようになったのです。この繋がりによって『どんな音楽が好きで、どれくらいのスキルをもった人が自社のギターを利用しているのか』など、ユーザーの情報が分かるようになり、ニーズを掴みながら関係を築いていくことが可能となりました」(桑野氏)

長期的な関係を築くことが大切

顧客と直接つながりを持ってニーズを掴むことは、サブスクリプションビジネスの収益に関わる契約期間にも大きく寄与すると桑野氏は話し、その事例として、スナック菓子のサブスクリプションサービスを提供する「Graze」を挙げて解説します。

「Grazeは定期的に4つのスナック菓子が送られてくるサブスクリプションサービスです。このGrazeが徹底したのは、利用者からそれぞれのお菓子の好き嫌いをフィードバックとして取得し、利用者の好みを把握することです。この好みのデータをもとに、4つのお菓子の中に利用者の好みの商品と、好みからは少し違うような商品を混ぜて送付しました。すると利用者は毎回何が届くのかが楽しみになり、飽きること無く長期的に契約をしてくれるようになりました」(桑野氏)

最後に、顧客と長期的な関係を築くポイントとして、価格にあった価値を提供することも重要であると桑野氏は話します。

「サブスクリプションビジネスは顧客の幸せの上に成り立つビジネスモデルです。つまり、顧客は何を求めているのか、何に満足するかをしっかりと見極めることが必要です。提供する価値が価格より大きければ継続となりますし、その逆は解約です。定額制サービスのサブスクリプションの収益化には、契約期間を伸ばしてLTVを最大化することが非常に重要となります。そのため、顧客がサービスを十分に利用できていない際には、ダウングレードプランや、一時的な契約休止などをサービス提供側から提案することもLTVの最大化につながるのであれば必要となります」(桑野氏)

サブスクリプションビジネスを正しく認識することが重要

サブスクリプションビジネスの成功には、正しくビジネスモデルを認識することが必要だと言えます。既存の売り切り型のモデルとはことなり、常に顧客の視点に立ってニーズを掴みながら長期的な関係を創ることが必要です。そのためにはブランディングやマーケティング、セールスなど多くの部署の認識・文化を変化させていく必要があるでしょう。

桑野順一郎氏プロフィール

桑野順一郎氏
Zuora Japan株式会社 代表取締役社長。外資IT企業でマネジメントを経験した後、ライトナウテクノロジーズ、キリバ・ジャパンの代表として国内ビジネスの立ち上げに従事。2015年2月、米Zuora社の日本進出に伴い、日本法人の代表取締役社長に就任。国内企業に対してサブスクリプションビジネスへの変革を支援している。