企業が利益のみを追求するだけでなく、社会的責任を果たすCSR活動は企業が存続する上で重要になります。そんな中で、今注目が集まっているのがSDGs(エス・ディー・ジーズ)の考え方です。

今回はSDGsの基礎情報やマーケターがSDGsと向き合うべき理由について紹介します。

SDGsとは?

SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略称で、2016年〜2030年の15年間に「持続可能でよりよい世界」を目指す国際目標のことをいいます。

2001年に策定された(※)ミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月に国連サミットでSDGsが採択されました。

(※)ミレニアム開発目標とは

ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)は,開発分野における国際社会共通の目標です。2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで採択された国連ミレニアム宣言を基にまとめられました。
MDGsは,極度の貧困と飢餓の撲滅など,2015年までに達成すべき8つの目標を掲げ,達成期限となる2015年までに一定の成果をあげました。その内容は後継となる持続可能な開発のための2030アジェンダ(2030アジェンダ)に引きつがれています。
引用元;(ODA)ミレニアム開発目標(MDGs) | 外務省

SDGsは17の目標に紐づく169のターゲット(具体的目標)から構成されています。

目標1 あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ
目標2 飢餓をゼロに
目標3 あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
目標4 すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
目標5 ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
目標6 すべての人々に水と衛生へのアクセスを確保する
目標7 手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
目標8 すべての人々のための包摂的かつ持続可能な経済成長、雇用およびディーセント・ワークを推進する
目標9 レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る
目標10 国内および国家間の不平等を是正する
目標11 都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする
目標12 持続可能な消費と生産のパターンを確保する
目標13 気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
目標14 海洋と海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
目標15 森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
目標16 公正、平和かつ包摂的な社会を推進する
目標17 持続可能な開発に向けてグローバル・パートナーシップを活性化する
引用元:SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは? 17の目標ごとの説明、事実と数字 | 国連広報センター

経営方針に取り入れる動きが出てきている

大企業の中にはSDGsを経営方針などに取り入れる動きがあります。投資家や消費者の間では、消費によって社会貢献に繋がることを意識するようになってきました。

例えば、スターバックスコーヒーは、フェアトレードのコーヒー豆を利用しています。

フェアトレードとは、開発途上国の商品や製品を公平・公正な取引で購入し続ける貿易のことです。大手コーヒーチェーンがフェアトレードのコーヒ豆を使うことで、コーヒー豆農家の生活を守ることに繋がるのです。

参考:コーヒー生産地への支援|スターバックス コーヒー ジャパン

SDGsがマーケティングに及ぼす影響

消費者の間でもSDGsが評価対象になりつつあります。

ブランド・ジャパンのブランドランキングTOP100(2019年に発表)で、SDGsに関する項目が調査されました。

例えば、6位のトヨタ自動車は「環境に配慮している」、「社会への貢献度が高い」、「このブランドが行う企業活動に参加したい」の3項目で首位を獲得。

SDGsへの評価はブランドイメージ戦略に欠かせないものとなっています。

消費者が商品を選ぶ基準としても、影響は今後大きくなっていくでしょう。

ブランド・ジャパン 2019 ブランドランキング発表|CCL.|日経BPコンサルティング

SDGsに取り組む企業

ここからは、SDGsに取り組む企業を紹介していきます。

本田技研工業株式会社

2030年にありたい姿を「2030年ビジョン」として制定しました。

もちろん2030年というキーワードは、SDGsに合わせたものです。

2030年ビジョンの柱は「『移動』と『暮らし』の価値創造」「多様な社会・個人への対応」「クリーンで安全・安心な社会へ」の3点です。

自動車メーカーならではの取り組みとしては、「交通事故ゼロ社会」の実現を目指し、自動運転テクノロジーを開発・研究し続けています。

2020年に高速道路での自動運転を実現し、一般道にも広げていく予定です。

参考:
ホンダ「2030年ビジョン」とSDGsの達成に向けた取り組み事例

すべての人に、「生活の可能性が拡がる喜び」を提供する

味の素株式会社

味の素株式会社はSDGsと似たような取り組みとして、創業以来、ASV(Ajinomoto Group Shared Value)を制定してきました。

ASVとは、事業を通して社会課題の解決に取り組み、社会・地域と共有する価値を創造することで経済価値を向上し、成長につなげることを目指すものです。

食品メーカーならではの取り組みとしての一つに、「勝ち飯®」があげられます。

「勝ち飯®」とは、「何のために食べるか」を考えながらおいしく食べて、食生活を整える栄養プログラムのことです。

トップアスリートの支援(遠征や合宿などでの食事提供など)にも取り組んでおり、動画やレシピ集を通して一般消費者への啓蒙にもつなげています。

参考:
始まった食品事業者の取組:味の素株式会社:農林水産省

「勝ち飯®」レシピ|料理をするなら味の素パークの【レシピ大百科】

日清食品グループ

日清食品の中でも、代表的な商品が「カップヌードル」。

日清食品は2019年末以降、カップヌードルをはじめとする全ての縦型容器に、環境への負荷が少ない紙容器を使用していくことになりました。2021年度までに切り替えが完了する予定です。

冷凍食品のトレーをなくしたり、カップ麺の詰め替え用製品を発売することでも、包装量を減らしゴミをなくす努力をしています。

参考:トップメッセージ | サステナビリティ | 日清食品グループ

株式会社良品計画

良品計画は、慶應義塾大学SFC研究所xSDG・ラボとコラボレーションし「感じ良い社会の実現に向けたSDGsの戦略的実現モデルの創出」に取り組んでいます。

このプロジェクトはSDGsの17の目標をものさしに、現在できていること・いないことを整理するものです。

同社の製品開発は「本当に必要なものを、本当に必要なかたちでつくる」ことを基本としています。こうした生活者や生産者に配慮した商品・サービスは、消費者の間でも強い支持を得ていると言えるでしょう。

参考:
第四回:これからの社会はどうあるべきか | 「感じ良いくらし」の実現 | 株式会社良品計画

「感じ良いくらし」の実現 | 株式会社良品計画

株式会社ニトリ

株式会社ニトリは、圧縮できる布製品・家具の梱包サイズを小さくする取り組みをしています。

例えば、布団・マットレスなどは丸めて圧縮後に輸送しています。ニトリは一度に運べる商品の数を増やし、輸送回数を減らすことに成功。輸送費・コンテナ数を減らし、CO2削減に貢献しました。

このような圧縮した商品の1つが、2018年に発売された「持ち帰ってすぐ使えるマットレス」はその名の通り「持って帰られるサイズのマットレス」です。

圧縮され段ボールに入っているので、一人で持ち帰ることができ、その持ち運びやすさが反響を呼び、一人暮らしの若者などに購入されました。

参考:
環境保全活動|CSR情報|ニトリホールディングス

便利すぎて品薄必至!?ニトリ「持ち帰ってすぐ使えるマットレス」新生活の6大メリット

今後さらに注目が高まるSDGs

企業がSDGsに取り組むことは、ブランドイメージの向上にもつながります。

環境問題へのコミットが叫ばれている現在において、SDGsは投資家や消費者の間でもさらに注目される項目です。

SDGsはマーケターが向き合うべきもののひとつとして、今後重要になることは間違いありません。