簡単に社内情報を共有できるサービス

ferret:
まずはじめに、「toaster」のサービス概要について紹介していただけますか?

堀辺氏:
一言で言えば、業務マニュアルや各種手順書、ガイドライン、取扱説明書などの業務プロセスを簡単に作成、チームで共有できるクラウドサービスです。

89553228_607648263297896_4912305034470883328_n.png

堀辺氏:
社内の情報管理は従来、紙で印刷したものやWordやExcelのようなドキュメント作成ツールで生成したファイルによる管理が中心であったため、作成者と管理者が異なっていたり、ファイル管理ツールを利用してそれらのファイルをきちんとフォルダ管理しなければならないといった煩雑さが生まれ、社内の情報を効率的に共有や検索、活用することが難しくなっていたため、これらの課題をワンストップで解決できるツールを開発しました。

ferret:
具体的にはどのような機能があるのですか?

堀辺氏:
toasterでは、業務プロセスをステップ毎に書き出すだけで、業務プロセスが統一化されたマニュアルや手順書などのナレッジがかんたんに作成できます。

レシピ編集画面(ステップ).png

またアップロードした画像内に矢印やテキストを直接追加できる「イメージエディタ機能」など、特別な画像編集サービスを使わなくてもスムーズかつ簡単に社内のナレッジをビジュアルで説明できる機能を備えています。

イメージエディタ機能.png

原体験が基になったサービス

ferret:
堀辺さんは2017年にnoco株式会社を設立されて、このtoasterを開発されていますが、起業のきっかけはなんだったのでしょう?

堀辺氏:
2016年に知人と3人で「formrun」というフォーム作成ツールを開発したのが最初の起業ですが、formrunを事業売却することが決まったタイミングで、まだまだ自分で新しいプロダクトをつくりたい、と言う想いがあり、法人登記したのがnoco株式会社ですね。

画像.jpeg

ferret:
このtoasterはどういった経緯で開発しようと決められたのですか?

堀辺氏:
ちょっと変わった趣味というか習慣がありまして、つくりたいプロダクトのアイデアを暇さえあれば考えたりメモしてるんですが、それが常時20個程度、ラフなもの含めると企画書にしてるんですよね。

アイディアのなかで、特に強く興味関心が高かったのが、チームや組織が直面する「人」「物」「お金」「情報」に関する課題でした。そのなかで社内のナレッジシェアだったんです。

ferret:
なぜ社内のナレッジシェアが課題だと感じていたのですか?

堀辺氏:
私は新卒で大手製造業に入社し、その後外資やスタートアップなどを経験させて頂いたんですが、チームの規模かかわらず、社内のナレッジシェアには機会の均等性がないと感じていました。

研修制度などが整った企業もありますが、そうした企業であっても、実務の大部分は「背中を見て覚えろ」「仕事は盗め」といった状況やコンテクストで業務を学び、理解するケースが多くあります。それが結果として属人化を生み出してしまう。

また、こうした社内のさまざまな業務の知識や経験といったナレッジは、知っているか知らないかの違いが、その後の個々人のパフォーマンスに大きく影響し、最終的には組織全体のパフォーマンス・業績の変動要因につながると感じているんです。

特に私の若い頃と違って、今は「異なる職場・異なる言語・異なる仕事・異なる役割」という環境下のもと、マルチタスクに業務をこなさなければなりません。生産性の効率には、個々の知識や経験を自分だけで抱えてしまうのではなく、チームに可視化し、誰でもできる化、つまり再現性を実現しなければなりません。そのためにはひとりひとりの業務プロセスをコンテンツ化することが重要だと考えます。

ferret:
そうした実体験がサービスにつながっているんですね。

堀辺氏:
そうですね。自分の原体験に無いプロダクトは想いがこめられないのでどうしもてディテールが甘くなりますし、答えを他者に求めたり委ねてしまいます。それならば、自分以外の原体験を持っていて熱量がある人が開発した方が良いものができると思っているので。

機能の選定基準は「自分がワクワクするか」

ferret:
社内情報の共有ツールを開発する、と決めた後はどのようなことから取り組まれるのでしょう?

堀辺氏:
プロダクトのアイデアを考える時に、実はそのプロダクトのUIまで思い浮かべているんですよね。

ferret:
それはもう機能なども決まっている、ということですか?

堀辺氏:
そうですね機能をあまねく想起して、ざっくりUIを考えちゃう。絵にして考えたほうが機能がどう働き、利用するユーザーさんが利用して楽しいのか楽しくないのか、何が得られるのかなどわかりやすいんですよね。

たとえば、足が遅い人を速くするために必要なプロセスにどんなことがあるのかなと考えると、トレーニング法やフォーム、適切な食事などが思いつくのと同じように、今の課題を解決するのに必要なプロダクトはどのようなものか、どのような機能でどのようなデザイン、インターフェースがあるべきかを思い浮かべて絵にしているんです。

その後はそのUIや機能を実現するために必要なインフラや技術、ざっくり開発工数などを考えながらプロトタイプのようなものをつくっていますね。

辞書機能2.png

専門用語や社内用語を登録すると表示される辞書機能も過去の原体験から生まれた機能

ferret:
そのUIや機能を考える時にはどのような視点で考えているのですか?

堀辺氏:
もっとも優先しているのは「自分がワクワクするか」ですね。言い換えれば「自分が使いたいと思うか」です。先ほども申し上げたように、私自身は原体験主義なんで、自分で熱量や思い入れが持てるものでないと、自分が開発する意味はない、と思ってしまうので、ここが重要ですね。楽しくないと続かないですし、この機能欲しいと心から思えるから作れるわけです。

ferret:
先ほど説明いただいた「イメージエディタ機能」のような細やかな機能もそういった考え方で決めているのですか?

堀辺氏:
そうですね。マニュアルや手順書を作成する時、いつもSkitchやAdobeの描写ソフトを使って画像編集して、それをファイル保存して、またそれを別のサービスでアップロードするということが経験にありまして、これは果てしなく面倒くさいなと(笑)。画像をアップロードして、そのまま編集ボタンをポチッと押すと編集できると楽なわけです。しかも再編集できるとさらに嬉しいわけで。自分の「面倒くさい」「手間」ってだいたい多くの人の「面倒くさい」「手間」に共通するんですよね。自分の原体験といっても、その手間暇をペインとして捉えて、そのペインがどれだけの人たちに共通したものなのかは考えるようにしています。

また、機能のプライオリティや取捨選択を迫られることもあるので、その際には「どの機能を付けることが、ご利用されるユーザーさんにとって快適且つプロダクト全体としてユニークでオンリーな存在になるか」を考えるようにしています。

その際にも、基本的には自分たちがどれだけワクワクするか、が1つの判断基準ですね。というのも、こうしたある種の「ワガママ」がプロダクトのユニークさやアイデンティティにも繋がっていくのではと考えるからです。

ferret:
基本的には自分の原体験が中心なんですね。

堀辺氏:
もちろんお客様の声には傾聴し、プライオリティを検討することはありますが、食堂のようにお客さまからご注文を頂いて作るわけではなく、僕の開発スタンス的には、こういうものを調理してみたんですが、おひとくちいかがでしょうか?とお客さまにお料理を提案してみたいんですよね。そしてご提供したお料理を食べてるお客さまの反応見て喜んだり、あー違うかーと思ったり、ここが事業を作る面白さと難しさ、そしてプロジェクトに関わっている醍醐味だと思うんですよね。

ベータ版で自分たちの常識を覆す

画像3.jpeg
ferret:
toasterは先日ベータ版を提供開始されましたが、その後の反響はいかがですか?

堀辺氏:
ありがたいことに、提供開始から1週間で東証一部上場企業さんからスタートアップ、士業の皆様はじめ350社以上の企業さんに導入していただいており、想像以上の反響です。

ferret:
このベータ版はどういった目的があって提供を開始されたのでしょう?

堀辺氏:
1つは純粋にこのプロダクトがどう評価されるのかお客さまの反応を見てみたかったんです。

リリース前に100社ほどサービスの事前ヒアリングを行ないましたが、知人つながりなのでどうしても一定のバイアスがかかってしまう。正しい評価もあれば優しい評価もかなりあったんじゃないかと。そのため一度、世の中に出してみて、このサービスが実際どのように映るのか評価をあおぎました。

もう1つはUIと操作性の検証です。

開発をしているとある種の罠に陥りがちで、自分たちは当たり前のようにサービスに慣れ親しんでしまう。しかし、初見のユーザーさんからすると「このボタンを押すとどうなるかが分からない」といったことがよく起こるんです。こうした自分たちの慣れや常識としていた感性をリセットし、正しいユーザーさんの反応を理解するためにベータ版を提供し、使用感の向上やUIの改善に活かしています。

顧客の声は聞き続けることが重要

ferret:
先ほど100社程度にヒアリングを行なった、と仰りましたが、具体的にはどのようなヒアリングをされているのですか?

堀辺氏:
まず、プロダクトのコンセプトが決まった段階で構想を伝えてみるんです。ただプロダクトがない状態だと、大抵「いいよね」というリアクションで終わってしまうので、次はアルファ版ができた段階、つまり何となく画面がある状態でヒアリングをすると、プロダクトの解像度が高まっているので、フィードバックがより濃くなっていくんです。

ただ、ヒアリングの件数の多さではなく、大切なのはお客さまの声に傾聴し続けることと、一件一件お聞きしたお客さまの声の意図を読むことが大切だと思っています。何故その反応だったのか、何故その声が挙がったのか。実は違うことを求めていたり、他のことを期待されていることがあるので、背景と理由をつぶさに考えるようにしています。

ferret:
それは堀辺さんご自身の経験から、そう考えられているのですか?

堀辺氏:
私のキャリアは営業マンからスタートしたのですが、その時からお客さんの反応や声を聞くことが好きだったんです。それこそ先輩や同僚と飲みに行くくらいなら、お客さんと飲みに行くほうが良いくらいに考えていたので、社内飲みには殆ど行かず、ひたすらお客さんと飲んでいた時期がありました(笑)

発注してくれるお客さんがいらっしゃる一方で、失注したお客さんに理由を訪ねてみたところ「失注の理由は時期が悪かった。タイミングだけだった」と言われたことがあったんですね。その時に「すべての答えをお客さまが持っているわけではない。しかし、あらゆるニーズはお客さんが持っている」と気づいたんですね。

営業時代にお客様が欲している事象を一時的なウォントなのか相対的に潜んでいるニーズなのか察知し、提案を続けた経験やキャリアを経たからこそ、開発するプロダクトを通じて、お客さんの反応をつぶさに見たい、感じたいと思いますし、ニーズや期待を上回るものを作れた時の喜びを感じていたいと思っています。アプローチは、営業時代と何も変わっていないですね(笑)

フリーミアムモデルで距離感を縮める

画像2.jpeg

ferret:
toasterはフリーミアムモデルで提供されていますが、なぜこの料金体系にされたのですか?

堀辺氏:
toasterのターゲットである紙やファイルでナレッジシェアしている企業さんには期間の制限なく無料で利用できるサービスの方がお試しいただきやすいと考えました。有料プランをわざわざお問い合わせをして、資料請求をして、セールスとお話してから導入って面倒だなぁと。

ferret:
そこでトライアルなどにはしなかったのですね。

堀辺氏
ご利用いただくユーザーさんの「とりあえず」や「試しに」使ってみるという心的ハードルを下げてあげたかったんですよね。「toaster」というサービスとの距離感をぐっと身近なものにしてあげたかった。とにかく「toaster」が気になるなぁというお客さまには気軽に使っていただいて、お客さんの声や反応、使い方を目の当たりにしたいなと。

先にも述べましたが、自分たちの想いや考えに基づいて開発していくプロアクティブさとお客さまの声や反応を見て改善しつづけるリアクティブの両面のバランスが必要かなと思います。そして何よりもお客様の声や反応がプロダクトを育てる源泉になりますし、僕らのものづくりへの熱量そのものになるんです。

ferret:
ご自身の熱量とユーザーの声がプロダクトをつくっている、ということですね。

本日はありがとうございました!

プロフィール

堀辺 憲氏
1996年、株式会社クボタに入社。住宅機材事業本部のセールスに従事し、社長賞を獲得。2004年、住友スリーエム株式会社(現 3M Japan)に入社、Construction Market Divisionにて2年連続優秀販売員賞を受賞。2012年、株式会社ディー・エヌ・エーに入社、経営企画本部広報部にてコーポレートコミュニケーションを担当。その後、複数社のスタートアップで広報部門の立ち上げを担う。2016年1月にmixtape合同会社を創業。フォーム作成管理ツール「formrun(フォームラン)」を開発し、のちに事業売却。2017年5月、noco株式会社を設立。代表取締役社長に就任。ナレッジシェア&ワークフロー管理ツール「toaster」(https://toaster.how/)を開発。株式会社PRTIMESの社外アドバイザーや株式会社DROBEのPR顧問も務める。