さまざまなメディアで人々を魅了する、「ハイキュー!!」の世界観とは

前述のように漫画、アニメ、舞台とさまざまなメディア展開を通じてファンとの接点を深め、多くの人々を魅了している「ハイキュー!!」。そのあらすじ、キャラクター、世界観とは一体どのようなものなのでしょうか?

王道の学園スポーツ漫画だが、決して順風満帆ではない「リアルな青春」

舞台は、架空の高校「烏野高校」。かつてはバレーボールの強豪校でしたが、もはやそれほど華々しい舞台とは言えず、「地に落ちた強豪校」とも囁かれる学校です。

主人公の少年「日向翔陽」はバレーボール選手としては小柄ながらも、天性の運動能力や持ち前の明るさ、ポジティブさでバレーボールの道を志します。中学時代からバレーボールに挑戦したかったものの、そこでは部員が居ないという逆境。やっとの思いで、たった一度きりの公式戦に挑みますが、そこで対戦校の冷徹なエース「影山飛雄」に惨敗してしまいます。

後に日向は、「烏野高校」入学とともに改めて熱い想いを抱いてバレーボール部に入部します。ところが、そこで驚くべきことにあの憎きライバル「影山飛雄」と偶然にもチームメイトとして一緒に活動していくことに。

太陽のように明るく情熱的でポジティブな「日向」と、冷徹なエースだがどこか孤独感や不器用さが滲み出る「影山」。二人はまさに「影」と「日向」、「陰」と「陽」のようなコントラストで描かれ、いつも練習中に衝突したり、いがみ合いが絶えません。

そんなライバル関係を続けながら、物語の進行と共に、互いに人として成長していき、やがてはバレーボールプレイヤーとして「黄金コンビ」へと進化を遂げていく様子が綴られます。

二人をめぐるチームメイト、先輩、マネージャー、コーチ、さらには対戦相手となる他校のバレーボール部員たちも、それぞれに個性豊かな面々ばかり。

チームで春高バレーを目指すものの、なかなか優勝を果たせなかったり、メンバー内で衝突したり、いがみ合ったり、モヤモヤ、イライラしたり。王道の学園スポーツ漫画ではあるものの、そこには決して順風満帆ではない、リアルな青春の姿が描き出されています。

漫画やアニメ、ミュージカルといった架空の物語に対して読者や視聴者は「痛快さ」や「勧善懲悪」を求める部分もありますが、「決して順風満帆ではないストーリー」にどこか自分自身とも重なるリアルさを感じて、思わず深く感情移入してしまう側面もあるのではないでしょうか。

そのようなストーリーやキャラクターに、多くのファンを引きつけている理由があると考えられます。

参考:ストーリー紹介|ハイキュー!!.com

読者が主人公たちの成長を見守る感覚

先述したように「ハイキュー!!」の世界観とは、決して「順風満帆」「痛快そのもの」ではなかったり、キャラクターたちもどこか影を抱えていたり、舞台となる高校も、かつて強豪校だった栄光をどうにかして取り戻そう、といった再奮起からのスタートです。

そこで読者視点、ファン視点として仮説を立てられるのが「共に成長を見守る」「『推し』を育てる」といった心理です。

ランキングサイト「みんなのランキング」で「ハイキュー!!人気キャラクターランキング!最も愛された登場人物は?」という一般ユーザーからの投票結果を見ると、1位を獲得したのは決して主人公の「日向翔陽」ではありません。まるでアイドルグループの総選挙さながらに、じつにさまざまな理由で脇役キャラクターたちもファンからの愛着を得ているのです。

例えば、1位を獲得した「影山飛雄」に寄せられたユーザーコメントを見てみましょう。

イケメンで高身長でスポーツできて完璧かと思えば、バレーの頭はいいのに勉強はだめ…とかもう可愛すぎるw
中学の時色々あったけど、今はもう孤独王様じゃなくなってチームに溶け込めてるから…もう嬉しいです泣((母性が

影山飛雄は不器用な男の子だなあと思います。
日向との速攻コンビは本当に凄いし、本当にこんな選手がいたら皆が欲しがるような子だなと思いました。
でも人との関わりが苦手に感じます。
それを日向が打ち消すようにわいわいしてる2人があたしは好きです。

引用:ハイキュー!!人気キャラクターランキング!最も愛された登場人物は?|みんなのランキング

こういった一般ユーザーのコメントを見ると「ちょっと不器用なところが好き」「どこか影のあるところに惹かれる」「それを応援したい」「共に見守っていきたい」といった視点で登場人物を見ている様子が伺えます。