「突如として現れた、音・ビジュアル共に圧倒的オリジナルセンスと完成度を誇るトーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイルバンド」と呼ばれるKing Gnu(キングヌー)。2019年のブレイクは凄まじく、YouTubeの楽曲は1億再生を突破し、紅白初出場も果たしました。2017年4月にバンド名をKing Gnuに改名後、わずか2年ほどで日本のトップバンドへと上り詰めた要因は何でしょうか?今回は「King Gnuブーム」の裏側にある巧みなマーケティング戦略を分析します。

楽曲・メンバーの独自性が強い

King Gnuは、JPOPとブラックミュージックをかけ合わせた独自の世界観と楽曲の複雑性が魅力です。これはメンバーの高い音楽的素養によって生まれた強み。ギターの常田さんとボーカルの井口さんは東京藝術大学出身と、バンドマンとしては異色の学歴を持っていることでも知られています。

圧倒的技術を誇る多彩なメンバー

King Gnuの生みの親である常田さんは、元々「Srv.Vinci(サーバ・ヴィンチ)」という名前で活動し、当初は売れ線とは完全に真逆の玄人向けな音楽をしていました。音楽理論や楽器の特性・音色、海外のトレンドを網羅したハイレベルな音楽であり、その技巧性に魅了されたメンバーが徐々に集まってきて、現メンバーである常田大希さん、勢喜遊さん、新井和輝さん、井口理さんの4名が揃いました。メンバーたちの技術と知識を総動員して「JPOPで売れる」方向へ舵を切り、King Gnuに改名。つまり、King Gnuは「突如として売れたロックバンド」ではなく*「戦略的に売れたエリートバンド」*なのです。

声楽科出身のボーカル・井口さんはロックではなくクラシックやオペラのような発声で抜群の歌唱力を誇り、最大のヒット曲「白日」では出だしの高音で聞き手を瞬時に惹きつけます。地声と裏声の行き来が彼の特徴で、一般的なロックやポップスだと高い声を出すためだけのミックスボイスになりがちなところを、土台となる裏声に地声を混ぜる歌い方により、聴き手をハッとさせる美しい歌声に。一般的な日本のロックとは違う歌い方で新鮮なインパクトがあり、耳に残ります。

邦ロックの常識を覆した革新的音楽

King Gnuの音楽は一般的な日本のロックと一線を画します。まず、リズム。邦ロックは基本的に8ビートですが、King Gnuはほぼ16ビート。しかもバウンスしたりシャッフルしたりと細かく跳ねたリズムが多く、日本人の耳には「洋楽っぽいオシャレな音楽」に聴こえます。日本のバンドで16ビートの楽曲を中心に出して売れたケースはほとんどありません。

音色も特徴的で、ボーカルの加工、低域を強調したドラムとベースなど、バンドのサウンドメイキングではなくR&Bやヒップホップに近いサウンドメイキングを施しています。音の幅は高域・中域・低域の3つに分けられ、バンド音楽は基本的に中域メインにサウンドを作りますが、今世界的に流行っているのはR&Bやヒップホップに代表される低域重視のサウンド。

King Gnuも世界的なトレンドに合わせ、低域が目立つサウンドメイクしているため、日本のバンドとは違ったかっこよさを感じるのです。ちなみに、米津玄師やOfficial髭男dismも低域重視のサウンドを意識しています。

メロディーもロックとは一味違っていて、井口さんの高い歌唱力によって成せるメロディーラインが目新しく感じさせます。また、ツインボーカルであることも独自性を高めている要因の一つ。それぞれが違った良さを持つ歌声を発しています。

最後に構成です。King Gnuは新鮮な目新しさと大衆受けのバランスが絶妙。すべてが新しいと受け入れられにくくヒットしませんから、構成で日本人にとってなじみのあるJPOPらしさを出しています。ポイントは主に以下の3つ。

・イントロが短い
・どこがサビかわかりやすい
・サビ以外のメロディーも動きを多くしてドラマティックにする

ほとんどの楽曲でこの3つのポイントを押さえ、代表曲である「白日」もイントロがなく、全部がサビのような動きのあるメロディーです。さらに実際のサビ部分では一気に盛り上がり、だれもがサビだと認識できます。

リズム・音色・メロディーで新しさ・おしゃれさ・かっこよさを出し、構成でJPOPぽさを出した結果、洋楽的な雰囲気と日本人好みの歌謡性を両立させているのが、King Gnuの独自の魅力だと言えるでしょう。

ちなみに、実はKing Gnuより先に米津玄師がこのやり方を確立していました。米津玄師のアルバム曲に、ブレイク前の常田さんが一曲アレンジャーとして参加しています。おそらく、その時に常田さんはこうしたやり方を学んだのではないでしょうか。

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