ferret編集部:2015年8月18日に公開された記事を再編集しています。

Webサービスを運営していると、必ずぶつかるのが著作権の問題です。
著作権の侵害を侵していないのか、また自サイトの著作権を侵されていないのか、なかなか取っ付きづらいイメージを持っているのではないでしょうか。

しかし、基本的なことをしっかりと理解すれば、意外ととっつきやすいものでもあります。

今回は、著作権の基礎をご紹介します。

目次

  1. 著作権とは
    1. 著作人格権
    2. 財産的な権利である著作権
  2. Webサイトデザインに関する著作権事例
    1. 制作会社に依頼して作ったWebサイトの著作権は?
    2. 他社サイトの画面キャプチャの著作権は?
    3. Webサイトデザインをコピーされた場合は?
    4. copyrightの文言は付けるべき?
  3. 写真素材・イラスト素材に関する著作権事例
    1. 外部カメラマンに撮影してもらった写真素材
    2. 著作権フリーのイラスト素材
    3. 建物が写った写真素材、建物をトレースしたイラスト素材
    4. Web上で公開されている写真やイラスト
  4. 音楽に関する著作権事例
  5. 他者の著作物を著作者に許可取らずに使う方法
    1. 引用する他人の著作物はすでに公表されていること
    2. 引用する必然性があること
    3. 自分の著作物と引用部分が区別ができていること
    4. 主従関係が明確になっていること
    5. 出所の明示をしていること
    6. 原型を保持していること
  6. コンテンツをコピーされたときの対策方法
    1. Webサイトのコンテンツをコピーされた場合の対応方法
    2. 作成した動画がコピーされてYoutubeにアップされていた場合
    3. 自分のコンテンツが著作権侵害でDMCA削除されそうになった場合
  7. 著作権関連の実際の問題・判決
  8. TPPによって変わる著作権とは

1. 著作権とは

著作権とは、著作者の保持する権利の一つで、著作者の保持する権利には「財産的な権利である著作権」と「人格的な権利である著作者人格権」があります。
Web担当者やWebデザイナーが気にすべき著作権は、「財産的な権利である著作権」を指しています。

1-1.著作者人格権

著作者人格権とは、著作物に存在する著作者の人格を保護する権利。簡単に言えば、著作物を公表する際の時期、形式、方法を決定できる権利です。

ちなみに、著作者人格権には以下に分類されます。

著作者人格権の支分権 内容
公表権 未公表の著作物を、いつ・どのような方法で公開するかを決め、公開できる権利のこと。
氏名表示権 著作物を公開する際、著作者名の表示・非表示を決められる権利のこと。表示する場合は実名か変名かを決めることができる。
同一性保持権 著作者の意に反して、著作物の変更、改変を禁止する権利のこと。

1-2.財産的な権利である著作権

財産的な権利である著作権とは、著作物の利用形態により、支分権の内容が決められています。こちらは他人に譲渡したり、相続することが可能です。

財産的な権利である著作権の支分権 内容
複製権 著作物を複製する権利。
上演権及び演奏権 著作物を公に見せる、聞かせるなどを目的に上映、演奏する権利。
上映権 著作物を公に上映する権利。
公衆送信権等 その著作物を公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利。公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利。
口述権 言語の著作物を公に口述する権利。
展示権 美術の著作物又はまだ発行されていない写真の著作物をこれらの原作品により公に展示する権利
頒布権 映画の著作物をその複製物により頒布する権利。
譲渡権 著作物を原作品か複製物の譲渡により、公衆に伝達する権利(ただし、映画の著作物は除く)。
貸与権 著作物をその複製物の貸与により公衆に提供する権利。
翻訳権等 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利。

2.Webサイトデザインに関する著作権事例

2-1.制作会社に依頼して作ったWebサイトの著作権は?

費用を払い依頼して作ったWebサイトでも、基本的に著作権および著作者人格権は制作側(制作会社)に帰属します。よって、発注の際に著作権の譲渡や利用許諾を取る、著作者人格権の不行使などを取り決める必要があります。

2-2.他社サイトの画面キャプチャの著作権は?

他社サイトの画面キャプチャであっても、制作者側に著作権が存在します。
その画面キャプチャを無断で公開した場合は「複製権」「公衆送信権」「翻案権」の侵害となり得ます。

2-3.Webサイトデザインをコピーされた場合は?

Webサイトには前述した通り、制作者に著作権が存在します
よって、コピーすれば著作権を侵害しています。

しかし、丸々コピーしていれば著作権侵害と分かりやすいものの、レイアウトレベルのコピーであれば著作権の侵害とはなかなか認められないようです。独創的なレイアウトならば、もしかすると認めてもらえるかもしれないです。

2-4.copyrightの文言は付けるべき?

©マークやcopyrightの文言は著作権保護の観点だけをいえば、付ける必要はないです。
日本は「無方式主義」を選択しており、著作物を著作もしくは発表した時点で自動的に著作権が発生しているからです。

では、なぜcopyrightマークや©マークが付いているサイトがあるのでしょうか。

これは、無方式主義の国の著作物であっても、©マークと著作権者の氏名と最初に著作権が発行された年の3要素を表示することで、方式主義の国(特に、かつてのアメリカ)においても著作物として保護され、表示する意味・必要があったためです。

ところが、現在ではアメリカも無方式主義を採用するに至ったため、©マーク等を表示する意味はなくなっています。

ただ、©マークやcopyrightを付けるメリットがあるとしたら、下記2つの理由があるでしょう。

  1. 著作権は特許と違って登録を要しない分、著作権者が誰であるかわかりにくいという問題点があります。©マークやcopyrightを付けることで著作権者が誰であるかを明示できます。これにより、第三者の不正利用を一定程度予防する効果が期待できます。また、著作物を利用したいから著作権者の許諾を得たいという人に向けても連絡先として機能します。
  2. アメリカ著作権法では、著作権を侵害した者がいた場合でも、侵害について故意がないことを立証できれば、著作権者に対する法定損害賠償額が減額される可能性があります。そのため、©マークを付けておくことで、故意に著作権侵害をしたわけではないという言い訳を封じる効果が期待できるようです。

3.写真素材・イラスト素材に関する著作権事例

3-1.外部カメラマンに撮影してもらった写真素材

著作権は基本的に撮影者が保持しています
こちらもWebサイト同様に発注の際に、著作権を譲渡するように取り決めましょう。

3-2.著作権フリーのイラスト素材

イラスト素材にも、その素材制作者が著作権を保持しています。よくあるフリー素材サービスなどでも、サービス側の規約の範囲内でのみ”フリー”という意味なので、必ず利用規約などを確認して使うようにしましょう。

3-3.建物が写った写真素材、建物をトレースしたイラスト素材

屋外に恒常的に設置されているものや建築物の著作物は、一部の例外を除き利用が許可されています。よって、使うことによる著作権法の侵害はありません
アニメなどで実際の建物などが登場するのは、このような理由があるからになります。

しかし、誰かが建物を撮影したり、トレースして作成したイラストなどには、その撮影者・作成者の著作権がありますのでその利用は気をつけなければいけません。

3-4.Web上で公開されている写真やイラスト

Web上で公開されている写真やイラストは、著作権の保護期間を終了したものや、著作物(思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの)でないものを除き全て著作権が存在します

4.音楽に関する著作権事例

例えば、平原綾香さんの「ジュピター」

平原綾香さんのジュピターは原曲が存在していますが、音楽などが保護される著作権期限は創作著者の死後50年であるため、原曲作曲者のホルストが亡くなってから69年経っていたジュピターは著作権違反にはなっていません

しかし、平原綾香さんのジュピターには著作権が存在しています

5.他者の著作物を著作者に許可取らずに使う方法

著作権法では、著作者に許可を取らずに著作物を使う方法があります。しかし、その代わりに厳重なルールを守る必要があります。

他人の著作物を自分の著作物の中に取り込む場合,すなわち引用を行う場合,一般的には,以下の事項に注意しなければなりません。

(1)引用する他人の著作物は、すでに公表されたものであること
(2)他人の著作物を引用する必然性があること。
(3)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが明瞭に区別されていること。
(4)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
(5)出所の明示がなされていること。
引用元:文化庁:著作物が自由に使える場合
(6)原則として改変を加えず、原型を保持して掲載すること。改変する場合はその旨明示し、引用された文章・図表などがそれと判るようにすること。
(7)原著者の名誉を毀損したり、原著作者の意に反した使用法をしないことを満たしているものとする。
引用元:京都府立医科大学雑誌投稿論文における著作権に関する申し合わせ

5-1.引用する他人の著作物はすでに公表されていること

他人の著作物を引用する場合は、すでに公表されたものでなければいけません。

5-2.引用する必然性があること

引用するには目的(必然性)が必要であり、それに必要な量しか引用してはいけません。

5-3.自分の著作物と引用部分が区別ができていること

誰が見ても、引用している部分が明確に分かるようになっていれば問題ありません。

5-4.主従関係が明確になっていること

自分の著作物がそのコンテンツの主(メイン)になっていて、引用部分が従(サブ)になるだけの質と量のバランスがとれていれば問題ありません。

5-5.出所の明示をしていること

引用元の著作物の著作者名と引用元の明示があれば問題ありません。

5-6.原型を保持していること

著作者の意に反して著作物を改編することは、「同一性保持権」を侵害してしまうため、許可のない改変に関しては禁じられています。

6.コンテンツをコピーされたときの対策方法

6-1.Webサイトのコンテンツをコピーされた場合の対応方法

Webサイトコンテンツを無断でコピーされた場合には、権利侵害をGoogleに伝えると、デジタルミレニアム著作権法およびその他の適用される知的財産法に基づく著作権侵害の申し立てに基づいて検索結果から削除してくれます。
参考:著作権侵害の報告: ウェブ検索

申請のやり方を間違えると大変なことになるので、注意が必要です。
[Å]【要注意!!】パクリサイト発見!Googleに削除依頼、依頼ミス、取消し、削除完了に至るまでの苦悩の1週間を晒します | あかめ女子のwebメモ

6-2.作成した動画がコピーされてYoutubeにアップされていた場合

Youtubeにコピーされた動画がアップされていた場合は、Youtubeに権利侵害を報告することで対応してもらうことが可能です。
※参考:YouTube での著作権

6-3. 自分のコンテンツが著作権侵害でDMCA削除されそうになった場合

6-1で説明した「デジタルミレニアム著作権法およびその他の適用される知的財産法に基づく著作権侵害の申し立て」を、コピーサイト側に起こされて自分のコンテンツが削除されるケースもあります。

実際に、そのコンテンツが著作権侵害をしているのかをある程度は調査をしているようですが、本当の著作者のコンテンツが削除されてしまう、誤った判断での削除もありえるのでこれは問題です。

サーチコンソールにサイトを登録しておくと、他者から「デジタルミレニアム著作権法およびその他の適用される知的財産法に基づく著作権侵害の申し立て」が行われた際に、通知が飛んで来るようです。

その通知内容に異議がある場合は、それをGoogleに伝えることが出来るため、より正確に審査が行われる可能性があります。

まずは、Googleサーチコンソールに登録をしておくべきでしょう。

7.著作権関連の実際の問題・判決

有料写真の無断使用、「ほかのサイトから入手したので知らなかった」は通用せず──判決が確定(2015年8月)
JR東新潟支社が謝罪 ネット上の「いなほ」写真を無断使用(2015年1月)

8.TPPによって変わる著作権とは

TPPの合意に伴い、2016年2月24日に文化庁の文化審議会著作権分科会が開催され、著作権制度の見直しが行われることになりました。

主な見直しポイントは以下の3点です。

1. 音楽・書籍の著作権の保護期間を現行の著者の死後50年から70年に延長する
2. 権利侵害があった場合の民事訴訟で損害額の立証ができなくても、最低限の賠償金を請求できる「法定賠償」制度の採用
3. 著作権者の告訴がなくても警察が海賊版を取り締まれる「非親告罪」の導入

参考:
著作権の保護、欧米並みに延長 政府がTPP合意で見直し案:日本経済新聞

音楽・書籍の著作権の保護期間を現行の著者の死後50年から70年に延長

今まで、音楽や書籍の著作権保護期間は日本では50年でした。
前述した通り平原綾香さんのジュピターは、作曲当時、原曲作曲者のホルストが亡くなってから69年経っていたので、問題ありませんでした。しかし、70年に延長されると死後70年未満なのでNGだったということになります。

現在、著作権の保護期間はTPP参加国でも異なっています。日本、カナダ、ニュージーランド、ブルネイ、ベトナム、マレーシアは50年ですが、アメリカ、オーストラリア、シンガポール、チリ、ペルーは70年、メキシコは100年となっており、統一ルールが求められていました。

権利侵害があった場合の民事訴訟で損害額の立証ができなくても、最低限の賠償金を請求できる「法定賠償」制度の採用

今まで、著作権の侵害を確認しても被害額を算定することが難しく権利者が泣き寝入りをするケースが多かったのですが、この「法定賠償」を採用することで損害が認められれば、一定額の賠償金を支払わせることが出来るようになりました。

Webの場合、著作権侵害の意識がないままに、他者の画像などの著作物を利用しているケースが多いです。
今まで、著作者が泣き寝入りしていたために、何も起こらなかった上記のようなケースでも、もしかすると「法定賠償」が利用され、ある日突然損害賠償請求などが届くかもしれません。

著作権者の告訴がなくても警察が海賊版を取り締まれる「非親告罪」の導入

今まで、著作権侵害は親告罪であったため、著作権利者の告訴がなければ取り締まることが出来ませんでした。
しかし、非親告罪が導入されることにより告訴を必要とせず取り締まることが出来るようになります。

まとめ

Webコンテンツは、簡単にコピーできてしまうがゆえに知らぬ間に著作権を侵害していたり、侵害されていたりします。

ちょっとならいいだろう、という考えが後々大きな事態を引き起こすことは珍しくありません。
2015年にはJR東新潟支社がネット上にアップされていた「いなほ」の画像を無断で使い謝罪していました。

参考:
JR東新潟支社が謝罪 ネット上の「いなほ」写真を無断使用

しっかりと、著作権に関するルールを理解した上でWebに関わっていきましょう。