2016年にスタートした電力小売り自由化により、ユーザーは電力会社を自由に選択できるようになりました。多数の電力会社が登場し、各社がユーザー獲得のために低価格化や付随サービスの提供など、さまざまな施策を行っています。

ここでは、国内外の市場分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズが24,696人を対象に調査を実施し、電力会社を切り替えたユーザーや市場の状況を詳細に記した「電力の切り替えに関する状況把握と再エネ系新電力のユーザー獲得のためのヒントを探る」のうち、一部を抜粋して紹介します。

マーケティング活動を行う上で参考にしたい「ユーザー獲得のヒント」を随所で確認できるため、特にサービスの認知・拡大を目指したいマーケターの方はぜひ参考にしてみてください。

電力の切り替えに関する状況把握と再エネ系新電力のユーザー獲得のためのヒントを探る

電力の切り替えに関する状況把握と再エネ系新電力のユーザー獲得のためのヒントを探る

電力の切り替えに関する状況把握と再エネ系新電力のユーザー獲得のためのヒント。

目次

  1. 電力小売り自由化の歴史
  2. 電力切り替えのメリット
  3. 電力切り替えのデメリット
  4. 電力切り替えに関する市場の状況
  5. 電力を切り替えたユーザーの特徴
  6. 電力を切り替えなかったユーザーの特徴
  7. 調査結果をもとにユーザー増加の施策を検討しよう

電力小売り自由化の歴史

従来、家庭や商店は電力会社を自由に選ぶことができませんでした。しかし2016年4月1日以降は、電気小売業への参入が自由に行えるようになり、同時に全ての消費者が電力会社を自由に選べるようになりました。これを「電力小売り自由化」といいます。

最初の電力小売り自由化は2003年3月に開始され、「特別高圧」区分の大規模工場、オフィスビル、デパートなどだけが電力会社を自由に選べるようになりました。その後、2004年4月、2005年4月には段階的に「高圧」区分の中小ビル、中小規模工場なども電力小売り自由化の対象となっています。

そして、2016年4月1日開始の「低圧」区分の家庭や商店などへの対象範囲の拡大をもって、電力小売りが全面的に自由化されました。

電力切り替えのメリット

マーケティング担当者がユーザー行動の理解を深めるために、電力を切り替えるメリットについて把握しておく必要があります。

電力切り替えには手続きが必要なため、メリットが明確でなければ切り替えは行いません。ユーザーがどのような理由で電力切り替えを選ぶのか、詳しく確認していきましょう。

電気料金が安くなる可能性がある

新たに参入した電力会社が顧客を獲得するには、従来の電力会社よりも魅力的でなければなりません。そこで巻き起こったのが価格競争です。

従来よりも低料金で電気を提供することで、ユーザー獲得を狙う電力会社が数多く登場しました。ユーザーは、そのような電力会社に切り替えることで電気代が安くなるメリットを得られます。

マーケティングにおいても、料金に対するアプローチは重要な要素です。受けられるサービスに対して料金が高いか安いかは、ユーザーが必ずチェックするポイントでしょう。

関連サービスをお得に利用できる場合がある

電力会社によっては、関連サービスをお得に利用できる特典を提供しています。ユーザーは、普段から利用しているサービスを踏まえ、総合的に見てお得かどうかという観点から電力会社を選びます。

このように、ターゲットが利用していると想定される関連サービスの特典は、マーケティングにおいてもスタンダードな戦略です。

電力切り替えのデメリット

電力切り替えにはデメリットもあります。デメリットを解消する方法をユーザーに提示し、デメリットを可能な限り抑えることで、多くのユーザーに選んでもらうことができるでしょう。電力切り替えのデメリットは次のとおりです。

解約時に違約金がかかる場合がある

多くの電力会社は契約期間を定めており、契約更新か満了のタイミングで解約しなければ違約金が発生する場合があります。毎月の電気料金が安くなっても、解約時に違約金が発生すると、トータル的に見ると損になるかもしれません。

そのため、解約時の違約金については事前に十分に説明し、適切なタイミングで解約すればマイナスになるようなことはないと理解してもらう必要があります。

倒産や撤退のリスクがある

多数の電力会社が短期間で参入したため、ユーザー獲得競争が激化しています。競争に負けた電力会社は倒産や撤退に追い込まれる可能性も十分あるでしょう。もし、倒産や撤退をすれば、ユーザーは強制解約となり、別の電力会社を探さなければなりません。

この場合、倒産や撤退のリスクがない点に言及し、ユーザーに安心感を与えることが重要なポイントとなります。他業界におけるマーケティングも同様です。

電力切り替えに関する市場の状況

電力切り替えに関する市場の状況をつかむことで、取るべき施策が見えてきます。市場調査の結果は、他業界のマーケティングにおいても、市場の状況を調べる方法や注目すべきポイントを考えるときの参考になるでしょう。

電力切り替えに関する市場の状況について詳しく紹介します。

電力自由化の理解度

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電力自由化に対する理解は十分に進んでいません。株式会社ヴァリューズが行った調査の結果によると「詳しく知っている」と回答したのはわずか6.8%で、「なんとなくしか知らない」が32.8%、「言葉しか知らない」が11.6%となりました。

電力会社の切り替えをしているのは理解度が高いユーザーです。また、現在電力会社の切り替えを検討しているユーザーは、能動的な選定に関与した経験がある・なしに関係なく、わずか20%前後です。

電力会社は、電力小売り自由化についてユーザーに伝えることから始めなければなりません。他業界においても、自社サービス・商品のメリットを伝える前に、前提とした予備知識をユーザーに伝えなければならないケースがあります。

電力会社の認知状況・契約状況

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電力会社には、ガソリン系やガス系、通信系、再エネ系など、さまざまな種類があります。この中でも認知度が比較的高いのは、ガソリン系(56.6%)、ガス系(50.4%)、通信系(50.2%)です。

これらのジャンルは、すでにユーザーの基礎知識が一定数あることが考えられ、DMをはじめとしたマーケティングで認知度を高めやすいと考えられます。

一方、まだあまりユーザーの理解が進んでいないジャンルと想定される再エネ系の認知度は20.9%に留まっています。マーケティングの観点で見ると、まずは認知度拡大のための施策が必要でしょう。

切り替え先の電力会社の種類

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2020年以降、旧電力からガス系、通信系に切り替えた人がそれぞれ約23%となっています。伸び率で見ると、再エネ系が3.8%から9.5%と大幅に増えてはいますが、そもそものユーザー数が少ない結果となりました。

なお、認知から検討、契約のプロセスにおいて、検討から契約への移行時に、他ジャンルの電力会社を選ぶケースは5%以下です。

いったん検討に入ると、同じジャンルの電力会社の中から切り替え先を選ぶユーザーが多い結果となりました。そのため、認知の段階でいかにメリットが大きいかを伝えることが重要です。

他業界の市場においても、他ジャンルの競合他社へ興味が移るケースがどれぐらいあるのかは必ず調査した方がよいでしょう。その結果、注力すべきポイントが見えてくるはずです。

以下の資料では、ユーザーが持つ新電力へのイメージやユーザーがどのくらい比較サイトを活用しているのかなど、さらに詳しい調査結果を確認することができます。無料でダウンロードできるので、ぜひ参考にしてみてください。

ユーザーが持つ新電力へのイメージなど、さらに詳しい調査データはこちら

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電力の切り替えに関する状況把握と再エネ系新電力のユーザー獲得のためのヒント。

電力を切り替えたユーザーの特徴

電力を切り替えたユーザーの特徴からは、マーケティング戦略の立て方が見えてきます。他業界のマーケティング戦略を立てる際も、ターゲットの行動を追う必要があり、ターゲットの行動、趣向などを明確化することで、エンゲージメントを高めるマーケティング戦略が見えてくるでしょう。

それでは、電力会社を切り替えたユーザーの特徴について紹介します。

電力自由化の理解度と切り替え先の電力会社との相関

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最エネ系の電力会社を選んでいるのは、電力自由化に対する理解度が高いユーザーです。電力自由化について「詳しく知っている」と答えたユーザー数が通信系やガス系の約2.4倍と大きな差があります。

なお、他ジャンルのユーザーからの認知度は、通信系やガス系が50%以上である一方で、再エネ系は25~30%前後に留まっています。

電力会社を選ぶ際に重視したポイント

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電力会社を選定する際に重視した一番のポイントは、通信系が「ポイント・マイル等が貯まること(23.3pt)」、ガス系が「電気料金の安さ(15.8pt)」、旧電力が「安定した電力供給(8.7pt)」となりました。

また、最エネ系は「電気料金の安さ(25.7pt)」がトップである一方で、「解約のしやすさ(17.7pt)」のポイントも高い結果となっています。

電力を切り替えなかったユーザーの特徴

電力会社を切り替えなかったユーザーにも注目することで、ユーザーの新規獲得方法のヒントを得られます。電力会社を切り替えなかったユーザーの特徴は次のとおりです。

電力自由化の理解度と契約している電力カテゴリ

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現在、電力の切り替えを検討しているユーザーが21.8%、検討していないユーザーが78.2%と大きな差が生じています。また、能動的な選定経験がなく、切り替えを検討していないユーザーの61.8%が旧電力を利用しています。

さらに、電力自由化について「ある程度知っている」、「詳しく知っている」と回答したのは、合計41.2%と過半数に達していません。

電力会社を選ぶ際に重視するポイントときっかけ

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能動的な選定経験がなく、電力切り替えを検討しているユーザーは、電力会社を選定する際に、「安定した電力供給」や「プランのわかりやすさ」、「契約手続きのわかりやすさ」を重視しています。

付帯サービスに対する意見

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付帯サービスについては、基本料金が無料であることを重視する人が50%近く存在します。付帯サービスに対して、次のような要望を掲げています。

  • 契約年数に応じて割引率やポイント還元率が上がる
  • 格安スマホのように毎月の電力使用量に応じて基本料が決まる
  • オール電化、夜間電力の契約者もお得になるプラン
  • 応援したい個人や企業に電気代の一部を寄付することで返礼品を受け取れる
  • 太陽光発電とのセットプランや家庭用蓄電池のサブスクを利用できるプラン

一方、付帯サービスについて、次のようなマイナスな意見も見られました。

  • 検討から契約まで対面でやり取りしたい
  • 契約期間の縛りが多い
  • 付帯サービスが多いと契約が複雑化して色々と面倒

調査結果をもとにユーザー増加の施策を検討しよう

激戦の電力販売業界では、競合にはない魅力的な付帯サービスの提供や料金を抑えるなど、ユーザーの興味をひく施策が求められています。

電力切り替えの意欲を高める方法、切り替えた人の特徴などを把握することは、ターゲットにとって魅力的なサービスを作る際のヒントになるでしょう。

今回、紹介した電力会社を切り替えた人や切り替えなかった人の特徴だけではなく、エリア別の切り替え検討状況やカテゴリ別電力契約状況、比較サイトの利用状況までチェックし、自社サービスの開発や改良に役立てたい方は、ぜひ以下のPDF資料をダウンロードしてみてください。

【無料配布中】マーケティングに役立つ調査データを全て確認する

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電力の切り替えに関する状況把握と再エネ系新電力のユーザー獲得のためのヒント。